イセリアで起こったことを、私たちは知らない。ただ、牧場にいたマーブルさんという人とロイドやジーニアスが知り合いで、それがバレてしまったせいで、クララさんみたくされ、倒さざるをえなくなってしまった、というのは分かった。それを聞いたショコラは、シエルを突き飛ばした。その反動でショコラはディザイアンに捕まってしまった。
「くそっ…!ショコラを放せ!!」 「放っておいて!おばあちゃんの仇になんて頼らない!!ドア様が助けてくれるわ!」
ヒステリックになりながらショコラが叫ぶ。シエルが私を見たが、今、譜歌を使えばショコラまで眠りに落ちてしまう。静かに首を振れば、強く拳を握りながら、ローレライの剣を抜いていた。ショコラが扉の向こうに消えるのを見計らってから、私は音叉を片手に取り出した。ディザイアン…まぁ下っぱだろうが、そいつらにまた囲まれたところで。
「深淵へと誘う旋律、トゥエ レェ ツェ クロア リョ トゥエ ツェ…」 「唄?」 「待って!これは…」
しいなが首を傾げたのを、リフィルが制した。ただ、それが少し遺跡モードにも似ていたが。前にリフィルの前でも使った気がしなくは、ない。ディザイアンは譜歌によって眠りに入った。ただ、このまま放置しておくわけにもいかないんだけれど、ね。
「エクスプロード」 「……シエルまで、詠唱はどこに…」 「手段は選んじゃいられないんだぞ?」
ユリアに習ったという譜術に、ジーニアスががくりと肩を落としていた。手段云々じゃない。詠唱はどこにいったのか、と聞いているのにその切り返し。しかし、その台詞、その笑顔で言うような言葉じゃないような気が…。間違ってはいない。それは分かる。誰にだって、守りたいものはあるのだから。戦いたくなかったとしても、戦うしかない
「…貴様らまさか…!聖なる焔と再来か?!」 「あ、やべ」 「そうか、ならば好都合だ!このマグニス様が直々に相手してやる!!」 「…なんで知ってんだろうな」 「なんで知ってるんでしょうね」
この世界で知らないはずのその呼び名に、シエルと一緒になり顔を顰めた。以前聞いた[音素]の単語やら色々と、このディザイアン連中に聞きたいことは沢山ある。その矛先はユアンたち、レネゲードにも向かうことになるのだけれど。一番まず聞きたいのは、どうしてこの世界に存在しないはずの単語が存在するのか。
すなわち、[音素]しかり、[預言]しかり、と言ったところ。
「…考えて、いる場合じゃないわね」
目の前でクラトスやシエル、それに一拍遅れてロイドが向かっていった。それを見ながら、こちらが先だと意識を集中させる。
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