「おー、此処が管理室か」
歓声?を上げながら、ロイドは何の警戒心もなしに管理室へ飛込んだ。途中で助けたショコラも共に、だ。その様子に呆れながら私も続く(最もロイドは言っても聞かないが)
「ようやく到着か。天から見放された神子と豚どもが」 「…天から、見放されただと?」
クラトスの声が少し低くなった気がした。ただ小さな声だったから、誰にも聞こえてはいなかっただろう。その言葉の意味は分からなかったが、何かが引っかかった気がした。
「……ディストみてぇ」 「いやねシエル。アレはもっとマシよ」
シエルが言っているのは、宙に浮くイスに座っていることを指しているのだろうけれど。豚ども云々って、ディストの方がもう少しまともな喋り方をするわよ、なんて言えば、あぁそれもそうだな、なんて納得していた。それでいいのかしら…。
「天から見放されたのはお前だ、マグニス!此処で叩き潰してやる!!」
ロイドが威勢よくそう言ったものの、やはりモニターで私たちの姿を確認していたらしい。私たちはあっという間にディザイアンに囲まれてしまった。背中でショコラをかばうように、ロイドはディザイアンを睨み付けていた。
「囲まれてしまいました〜」 「あんた、相変わらず呑気だねぇ」 「そんなことを言っている場合かしら?」
女性陣は随分と楽観しているらしい。会話が聞こえてきて、思わずため息を付いてしまった。彼らの楽観視もいい加減にしてほしいところだけれど、囲まれるという状況に関しては慣れっこな私。…なんだかんだでシエルもかもしれないけれど。
「なぁセレネ。なんか、いっつも誰かに囲まれてるな」 「神託の盾、マルクト、キムラスカ」 「「……はぁ、」」
二人でため息をついた。囲まれるのには慣れている。それはもう、私はダアトにいた頃から。それ以降、旅をするようになってもキムラスカに行っては囲まれ、ダアトに行けば神託の盾に捕まり、四方八方で捕まることが日常のようになっていた。…ような気がする。
「がははは!!所詮は豚の浅知恵よ!お前らの行動は筒抜けだ。劣悪種が逃げ出そうとしているのもな」
劣悪種、なんてあまり気分の良くない言葉を聞かされて、いつの間にか眉間に皺が寄っていたらしい。それに気付くと、それすらも嫌悪を感じて。ふと、宙に浮くマグニスの後ろに投影機が写された。それにはニールさんと、牧場に捕まっていた人たちが映されていた。
「なんでニールさんがあそこに入ってるの?」 「入っ……コレット、お前なぁ」 「あれは投影機よ。遠くのものを映し出すものなの。だから入っているわけじゃないわ」 「セレネもシエルも詳しいね」
何故かジーニアスに褒められた。それでもやはり、二千年間、科学に力を入れていたオールドラントの方が確実に技術は上だ。
「無駄無駄無駄!!お前らの行動は何もかも無意味なんだよ!」「無意味なんかじゃない!お前を倒せば、みんなを助けられるじゃないか!」
さて、譜歌を使うにしてもぶっちゃけ味方識別(マーキング)が終わってない。恐らく今使えばショコラまで被害を受ける可能性もあるわけで、会話を無視で味方識別中よ、私は。
「よくそんなことが言えるなぁ?イセリアの厄災はお前の行動のせいだろうが」 「…、それは…」 「そうだ、投影機に映ってる連中であのことを再現してやろうか?」 「やめろ!!」 「あぁ、さすがにセレネでもあの人数にレイズデッドじゃきついな」 「シエル?!そういう問題!?」
一気に場が緩んだ気がした。確かに、いくら私でもあの人数をするには疲れる。せめて、リフィルが使えれば話は別なんだけれど…。
「遠慮するなよ。お前が殺したあのババァ…マーブルみたいにしてやるよ!」 「マーブル…?マーブルってまさか…」 「いやそこは遠慮するだろ」 「シエル、少し黙っていろ」 「……はい」
珍しくシエルが怒られていた。空気を悪くしているわけではないけれど。マグニスの言葉で、ショコラは顔色を悪くした。崩れ落ちそうなショコラを、怒られながらもシエルが支えていた。
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