それから、ニールは昔はドアもこんなことはしなかったのだ、と話した。彼が気付いたのは、ドアの奥方が亡くなられてから、変わったのだと。今はそんなことを話している場合ではない。するべきことは、私たちのこれからの身の振り方。どうするか、を決めなくてはいけない。
「でも、このまま見逃すなんて出来ないよ!」

コレットの強い声が響いた。ただそれとは対照的に普段からは、容易に取れないくらいの冷たいような声が響く。私は、この声は知っている(彼は怒っているのだろう)


「俺は反対だ。このまま牧場に入ってどうする?ディザイアンに囲まれて終わりだ。いずれにしよ、世界は再生されるんだろ?なら此処で危険を侵すよりも、よっぽどマシな選択だ」

シエルはただたんにロイドたちを危険な目に合わせたくないだけなのだろう。それが、少しキツイ言い方になるだけで。それが、段々とあの眼鏡に似てきたのは本人も気付いているのだろうか。

「そんなことしたら、パルマコスタだってイセリアみたいに滅ぼされちゃうかもしれないんだよ?!」


ジーニアスの言葉にシエルは顔をしかめた。イセリアがどうなったのか、彼は知らないわけだから。その話を出されたところで、変わらない。

「ならどうする?不用意に関わったところで、パルマコスタが危険に晒される可能性だってある。
イセリアってとこがどうなったのか俺は知らない。けど、町が危険に晒される、お前らも危険に晒される。だったら関わらない方がいい」
「…私もシエルに賛成ね。放っておいたところで、パルマコスタ軍はどちらにせよ来ないのだから。関わらない限り、何かが危険に晒されることはないわ」


ロイドたちを心配しての言葉、だと本人たちだけが気付かない。しいなでさえ気付いているのにね。それでも、とコレットは強く言った。その目は強く光を帯ていて、真っ直ぐに言葉を受け止めて、その上で反論をしてきた。

「セレネまでそんなこと言わないで!そんなの駄目だよ!目の前にいる困ってる人を助けることと、世界を再生することは、そんなに相反するものなの?私はそうは思わない!」
「コレット、そうはいうけど、それは間違ってない。ただ、実際の世界はもっと複雑なんだよ」


シエルの呟きは聞こえたのか、分からない。ただ、不思議そうな顔をしていた。私としては、ロイドに言って欲しい言葉では、ある。コレットの言葉を聞いたリフィルは、疲れたようにため息をついていた。それを見たしいなは、にやにやしながらリフィルを見て、はっきりと言った。


「ここまで言われて、反対するのか?あんたたちはさ!」

分かっているような口ぶりだった。この旅の決定権は神子であるコレットにある。だから、私たちがどうこう言えたものではない、から。

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