ディザイアンが退却したあと。感極まった街の人たちに囲まれているコレットたちの姿を、少し遠くから見ていた。もみくちゃにされているが、どこか嬉しそうに見える。

「ちょ、なんであたしまで!!」
「しいなだって助けてたでしょ〜」
「あ、あれは…っ勝手に身体が動いたっていうか…」

しいなが助けたのは、雑貨屋の人らしい。埋もれていた人の間から、その人と女の子がしいなの前に現れて、満面の笑みで女の子に「ありがとう!」と言われている。そんなしいなの表情が見えて。お礼を貰ったしいなはと言えば、慣れていないのか狼狽えている。

「え、あ、…」
「お母さん、大切にしてあげてね!」
「うん。神子様もありがとう」


狼狽えるしいなの代わりに笑みを浮かべるコレット。そんな態度のしいなはロイドやジーニアスにまでからかわれていた。町の人たちが嬉しそうな顔をしている、それはそれでいいと思っている。助かった人がいるのも事実なのだから。


けれどその影で。もう動くことはないディザイアンたちが足蹴りされたり棒で殴られている姿がそこにあった。その姿がどうにも悲しくて、やり切れない気持ちになる。確かに、彼らがしたのはいけないことかもしれない。だからといって、そこにあった命を踏みにじっていいのだろうか。


「…なんかさ、」
「ん?」

同じものを見ていたのか、今はもうどこを見ているのか分からないシエルを見た。少しだけ、前よりも伸びた身長が少しだけ寂しくなって。分かったのは、視線の先にロイドたちがいないということだけ。


「悲しいな」

その意味が何となく分かって、何も言わずに、ただ頷いた。その意味をどれだけの人が理解出来るかわからない。当事者ではないから、なのかもしれないけれど。

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