街は騒然としていた。急にディザイアンたちが押し掛けてきたことも理由だろうな、と思いながら。既に街へと飛び込んだロイドの姿を探す。
「この街の兵士たちはどうしたんだ!?」
パルマコスタに到着するなり、町の人間にくってかかるロイド。ひとまず騒ぎの酷いところへ向かうのが先なのに、町の入り口で立ち往生している場合ではない。ロイドの第一声を聞いた町の人間が、兵はみんな演習で出払っていることを告げた。その言葉に少し違和感を抱きながら、立ち止まる。そんなことを全く気にしていないのか、ロイドが強く拳を握っているのが分かる(だから冷静さに欠けると言っているのに…)(最もそれをロイドに求めるのが酷か)
「隙を狙ったんだ…酷いよ!!」 「早く広場に行ってみよう!」
同じく立ち止まっていたジーニアスを追い越して、コレットが真っ先に広場に向かって走り出す。それを慌てたようにロイドが追い、よほど心配だったのかクラトス、ジーニアスに続いてリフィルも走って追いかけた。あの様子じゃ何をしでかすかも分からない。下手に人間牧場にまた手を出して、世界再生の旅がしづらくなるのも、困るところで。
しかし、と思いながら街を見渡した。別に変なところがあるわけではない、けれど。何かが引っかかるのも事実で。それをいつの間にか声に出して呟いていた。
「…演習中に、ね」 「わざとしか思えないよな」
思わず呟いた言葉を聞いていたらしいシエルが横から顔を覗いてきた。いたの、なんて笑えば、何故か少しだけ困ったような苦笑い。(彼をこんな風にしたのは、私なんだろうけれど)ぽんっと私の肩を叩いて、いつでも剣が抜けるような体勢になってから歩き出したシエルに首を傾げる。立ち止まり、振り返ったシエルが
「セレネ、考えても始まらない、だろ?とりあえず心配だから追いかけよーぜ」
にやっと笑ったその表情はなんだか懐かしい気がして、小さく聞かれないように溜息をつきながら、背中を叩いて追い越した。意表を突かれたのか、しばらくぽかんとしていたシエルも、小さく頬を掻いて、再び走り出した。
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