こつん、と足に何かが当たる音がした。それに目を向けると、ただの石だったことが分かる。それにため息をついて、そこにあったはずの屋根を見上げた。跡形もなく崩れている宿屋を見て、呆れるようにして、ため息をまた一つついた。
「…人間牧場から逃げてきた人たちを匿った報復、ってことか」
ま、そうなるんじゃないかとは思ってたんだけど。そうならなきゃいいなって思ってたりもしたけど。本当にこうなるとは思わなかった。セレネたちと合流するまでお世話になった。憤りっつーの?まぁそういうのは感じるけど。
これだけ街中を見て回っても、死体らしきものが見当たらない。っていうことは、恐らく人間牧場に連れて行かれたんだろう。あいつらのことだから、助けに行こうっていうかもしれない。まぁそうじゃなくても助けに行きたいんだけど。
「シエルー!」
声が聞えて、それに振り返る。何かあったのか、俺を見つけて即効駆け寄ってきたロイドに首を傾げる。そういえば、ロイドってセレネと一緒に辺りを調べてるんじゃなかったか?なんで1人なんだ、こいつ。
「どうした、ロイド」 「姉さんが、シエル探してこいって。みんな噴水広場にいるぜ」
セレネが寄越したのか、と少し納得した。分かった、行こうと頷いて、噴水広場に向かって歩き出す、その前に、一度だけそこにあった宿屋を見て、それから歩き出した。そんな俺を不思議そうにロイドが見てたんだけど。
「あのさ、シエルって此処でお世話になってたんだろ?」 「ん?あー、まぁ、ちょっとだけ」 「…なんか、すげー冷静だな」 「冷静っていうか…」
なんとなく、大丈夫って気がしてるだけなんだけどな。なんて俺が呟けば、よくわかってないのかロイドが首を傾げていた。この調子だと、冷静になれって怒られたか?わかんなくていいんだよ、と小さく呟いておいた。大丈夫っていうのは、あいつらのことじゃなくて。ロイドたちが助けに行こう、というような気がしてるっていう意味だったから。
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「…というわけらしいのよ」
いつの間にやら、みんなが噴水前に集まっていて。そんな中、疑わしいような目で見てきたのはリフィルだけだった。ちなみにクラトスはロイドは止められないと悟ったらしい。この町、ルインは人間牧場から逃げ出した人たちを匿っていたのがバレたため、ディザイアンたちから報復を受けたらしい。そして、私たちはルインの人々を救出するために、アスカード人間牧場へ向かうことになった。
「…彼女も、一緒に行くつもりなのかしら」 「別にあんたたちが嫌ならあたしは一人で」 「一緒に行くって」 「ロイド、まだしいなが喋ってるわよ」 「一緒に行く」 「…………決定事項らしいけど、」
有無を言わさないようなロイドの笑顔に、シエルが苦笑いしながらリフィルを見た。いつからこんなに黒くなったのかしら、ロイドってば…。しいなはロイドの態度に唖然としているのが見て分かった。そんなロイドの態度にリフィルは深くため息をついていた。
「諦めるしかなさそうだな」 「あぁなったら止まらなそーだしな…」
クラトスとシエルの呟きが決め手となり、しいなの意思は完全無視の方向でしいなも一緒に人間牧場へ向かうことが決まった。ちなみに本人しいなはなんとも言えない表情をしていたのが分かった。
…私には自分たちを今まで散々狙ってきた奴と行動する、なんて考えられないんだけれど。私じゃなくて、常識的に言って。
「……ロイドたちだから出来ることだな、」 「私たちだったら殺されてるわよ」
誰に、とは言わなかったけれど
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