「お帰り」
「…セレネ、随分と読みふけってたね」

セレネの周りに積まれた本の数々を見て、ジーニアスが呟いた。ぱたん、とその声に見ていた本を閉じたセレネはにっこりと笑った。

「面白かった」

こっちは大変だったのに、なんてジーニアスの呟きは聞えてないだろう。なんとなく、何があったのかは察していても。あぁそうだ、なんてセレネが積まれている本を漁り始めた。その中から、一冊の本を見つけて手に取る。


「リフィル、ポルトマン術書あったわよ」
「何!?どれだ!!」

駆け寄ってくる前に、その本をリフィルの方へと投げたセレネ。見事キャッチしたリフィルは、それを抱えて少し離れたところで本を開いて読み始めていた。ていうか、本、投げるなよ。そう思ったのは俺だけじゃないと思う。

「…で、どんな術だったんだ?」
「レイズデット」

あっけらかんと言い放ったセレネに、少し間を置いて。

「え、お前使えるじゃん」

少し驚きながら、そう言った。そういえばさっき、ジーニアスが使っていた術にも覚えがある。ってことは、術形態はそれほど差異はないってことなんだろうか、と考え始めた俺に、そうかもねーなんて呑気な声が返ってきた。

「え、セレネ、使える、の?」
「うん。あいつ、結構なんでも使えるぞ……って、どうした、ジーニアス」
「なんでもない…」


がくり、と項垂れたジーニアスが、「レイズデットってかなり上級の術なんだけど、何あの二人」なんて呟いていたことには全く気付かなかった。


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