悪いが、事情を知らないクラトスには早々に退場してもらった。勿論、ロイドが剣術の指南をしてもらうという意味で外に行ったのだけれど。正直言ったら追い出した、の表現が正しい。
「…事情は分かりました」
リフィルが呆れたようなため息をついた。この人が保護者か、と一目見て分かったらしいシエルも苦笑いをしていた。それもそうだろうな、と小さく笑う。まるで他人事、とロイドに言われたけれど、正直他人事だから。
曖昧なシエルの説明にも、本当に私と知り合いだということが確認を取れただけで構わないらしい。そもそも、私も此処に来た経緯はあまりに曖昧だったせいもあるのかもしれないけれど。
「あ、シエルさんも一緒に来ますか?」 「…いいのか?そんな簡単に…」 「はい!全然構わないです。それに、みんなで旅した方が楽しいですし」
にっこりと笑ったコレットに、そういうことじゃないんだけど、と呟いたシエル。コレットに何を言っても無駄だとは思っていたけれど。肩を落としたシエルが諦めたように、せめて敬語はやめてくれ、と呟いていた。どうにもその敬語に慣れないらしいんだけれど、はっきり言って上流階級の貴族にとっては致命的だと思う。
「まぁ、いきなり知らない世界じゃ不便だろうしね。それにセレネと一緒の方が帰る時に楽じゃない?」 「そう、なんだけど…。すぐにバイオレンスに走るし…ごめんなさいなんでもないです」
笑顔のままシエルを見ていたら、即効で謝られた。驚いているリフィルとは反対に、最早ジーニアスは慣れたらしい。嫌ね、誰がすぐにバイオレンスに走るのよ。これは被験者イオンの影響だと思いたいっていうか絶対にそうだと自分でも思ってる。
「じゃあ、一緒に行ってもいいかな?」 「全然僕らはいいよ!ね、コレット」 「うん!」 「あ、…そう、か」
ごめん、俺はリフィルに聞いたんだけど…。なんて呟きが聞えたような気がした。そのシエルがリフィルに視線を移せば、諦めたようにため息をついていた。それを見て、承諾と取ったのかシエルがほっとしているのが視界に映る。
「…そう簡単に世界って越えられるものなのかしら…」 「ローレライだから成せる技というか、さすが超振動、というか…。まぁ、多分、私とあいつくらいにしか、出来ないと思う…けれど、どうなのかしら」
リフィルの呟きに、何となくそう返した。さすが超振動、だけで終わらせていいのかどうか、それは分からないけれど、それ以外の表現がただ、見つからなかっただけだったりする。
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