「久しぶりね」
「なっ…!?」

笑顔で蹴り飛ばされる前に僅かに軌跡をずらして、剣を振り下ろした。地面をえぐった剣先に彼女は首を傾げていたけれど。斬るつもりがないことに、気付かなかったらしい。驚いた表情をしていたが、すぐにそれは消えて彼女が舌打ちをし、横に飛び退ける。背後にいたロイドの振りあげた剣を避けるように飛んでいた。ようやく復活したらしいロイドに向かってため息をついた。その頃には剣は既に納めていたけれど…。もちろん、ジーニアスの魔術で式神が消えたのを見てから。


「くっ……」

目が合った。何かを彼女が呟いていたような気がしてならなかったけれど、何を言っていたのかはわからなかった。最も彼女が言いたいことは分かるけれど。笑って誤魔化すだけなのは、ずるいのかしら。


「覚えていろ!次は必ずお前たちを殺す!!」

式神が倒されたのを見て、か私を見て、か。分からないが、彼女はその場からあっという間に姿を消してしまった。留める声にも耳を傾けずに。いなくなった彼女を何人かが呆然と見つめていた。日が暮れる。道が赤く見える山道を見上げてため息。

「どーして俺たちが狙われるんだよ」
「いつの世にも、救いを拒否する者がいる」


ディザイアンなのかもしれない、なんてコレットと話出してしまったジーニアス。ロイドはクラトスの言わんとせんことが全く理解出来ていないらしい。なんと釣り合いが悪いパーティなのかしら。



「とにかく!船出してくれるとこ、探そうぜ!!」
「残念ねロイド。意見の不一致で内陸に沿ってハイマまで歩くわよ」

船に乗れるとはしゃぐロイドが、一気に冷めたような視線で見つめてきた。ジーニアスはまた歩くのかとうんざりみたいだけれど。あまりのリフィルの勢いに押されただけで。山道を再び歩きながら話を続ける。やはり、船に乗りたかったのか、いくらかロイドの機嫌が悪い。

歩き始めた足を止めて、振り返る。そこには立ち止まって、何かを考えるような仕草をしていたリフィルが目に入った。私の横をジーニアスが駆けてゆく。それを視線で追ったあと、再びリフィルを見た。

「……あの服…」
「リフィル?」

呟きははっきりとは聞き取ることは出来なかった。ただ、彼女に関係あることなのだろうと漠然と考えていた。私の声に驚いたように顔をあげたリフィル。慌てていたようにも、見える気がして。思考を遮ったという自覚はある。悪いことしたかしら、なんて首を傾げれば。

「え、えぇ。今行くわ」

煮えきらないようなリフィルの返答を不可解に思いながら、何も聞かずにいた。少し遠くから、ロイドとジーニアスの呼ぶ声が聞こえる。それに続いて、リフィルと共に足を動かして、長かった山道を終える。

空を見上げた。もう既に夕闇に包まれ始めている空の色を見ながら、軽くため息をついた。どうやら、今日も野営らしい。こんな旅をしているから、そんなこと、珍しくはないけれど。


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