意気揚々で登り出したロイドとジーニアスだったが、山頂に着いた頃にはまだ元気もよかった。そこで一時休憩として昼食を取って、再び山道を降りはじめる。やがて下につく頃には疲れたみたいで。確かに山道が長かったのもあるけれど。そして、もう少しで山を降り切るといったところだった。


「ま、待て!!」

声が聞こえた。先程の彼女の声が。ただ姿は見えない。ふと、山道の途中に板が張られた道が見えた。そこは今は使われていないように見えた。その板が唐突に吹き飛ばされたのが見える。その先に彼女は、先程に見たよりも少しボロボロになって立っていた。

「すげー…追い付いてきた…」
「ロイド、感嘆している場合じゃないわよ?」

呆れたようにコレットの隣に立ちながら前方にみたロイドを見た。確かに凄い精神力だ、とは思っていたけれど。まさかまた正面からかかってくるとは思わなかった。暗殺者にしても、他にもっといただろうと思ってしまうのは…どうなんだろうか。彼女には向かないと思うのだけれど。


「あぁよかった!」
「動くな!」

コレットが心配そうに彼女へ近付いた。ただそれを遮るように、彼女は紙を構えてコレットに強く叫んだ。それに驚いてコレットも立ち止まる。はは、と乾いたように笑った私を見たリフィルがぽつりとため息交じりに呟いていた。

「…………賢明な判断ね」
「まぁ此処には何も跌づくものはないけれど」

先程の場所とは違って、平地になっている。さすがに此処にはレバーなどはないだろう。ただコレットは何もなくても転ぶから何とも言えないが

「コレットは何もなくても転ぶんだよ…」

呆れたようなジーニアスの声に隣を見る。どこか遠い目をしていたのに、思わず引きつった笑顔になってしまって。そんな会話は聞いていないのか、聞かないことにしているのか。彼女は相変わらず私には顔を向けずに、コレットを見据えていた。


「さっきは油断したが今度はそうはいかない。覚悟!!」

声が聞こえた。ハッとなって顔を上げたら、彼女がロイドの方に向かって走っていた。手を出すまでもないだろう、多勢に無勢だ、と思いながらコレットの傍に立って観戦することに決めた。走っていったロイドに一抹の不安を覚えながら、だったけれど。


「早…っ!!」

あぁ、やっぱり、と思った時には、ロイドは慌てたように剣を手に防御態勢を取った。元々二刀流のロイドは完全に攻撃型だ。けれど、彼女のスピードはかなり早い。一瞬の隙を見てか、ロイドの懐に入り込んだ。手に持っている札を掲げながら。

「炸力符!」

懐から紙を取り出した彼女を見て、いや、見たのはその紙の方だろう。不思議そうな表情を浮かべているロイドに対して少し呆れた。警戒心というものが足りないみたい。声と共に、ロイドの身体が後ろに吹き飛んだ。受け身を取れなかったのか、そのまま地面に叩き付けられていて。リフィルの回復術がおりた。入れ替わるようにクラトスが前に出た、瞬間に彼女はまた違う紙はまた懐から取り出して指を組む。

「式神降臨!!」

彼女の声と共に現れたのは、輪を背負った魔物みたいなもの。彼女に攻撃を始めようとしたクラトスは、目の前にいきなり現れた魔物に鋭い爪を振り下ろされ、避ける為には退がるしかなく。クラトスが彼女の式神を相手にしているのを見て、か。彼女は真っ直ぐにコレットの方に走って来た。ロイドは、間に合わない。全く、何をやっているのかしらロイドは。仕方ない、と。コレットを後ろに剣を抜いた。彼女が放った札を斬り捨て、地面に落ちる。


「…くっ!」

だが彼女はそのまま走る速度を落とさずに、私に向かって駆けて来た。蹴り飛ばすつもりなのかしら。相変わらず足癖というか、色々と問題があるなぁ、と人知れず呟いた私をコレットが見ていた。やる気なさげに、近付いてきた彼女ににやりと笑って、コレットの少し前に立つ。


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