「あぁ〜!ど、どうしようっやっちゃった…」
困ったようにその穴を見つめるコレット。慌てているコレットにため息を付きながらリフィルが近付いていた。こっちもだったね、と思いながらコレットに視線を向ける。…大丈夫かしらね、彼女。最も打たれ強いから大丈夫だとは思うけれど(意味が違う)
「気にすることはないわ。ここで相手が落ちなければ、貴方が殺されていたのかもしれないのだから」 「ほっとけよ、あいつ敵みたいだし」
ロイドの言葉に心配そうに落ちて行った場所を見つめているコレット。その少し後ろにいるロイドの頭を軽く叩いた。軽く悲鳴を上げたロイドが私の方へ驚いたように振り返った。
「そう思っているのば、もう少し反応を早めた方がいいわね。ロイド」 「ゔ……」 「鍛練が必要だな」 「クラトスまで!!」
2人で畳み掛ける必要はなかったかもしれないけれど。ロイドに足りないものは経験だから。…最も、私が稽古をつけるのは無理だとは思う。色々な流派が混ざっているから…。まぁ、イセリアにいた僅かな時間には稽古を付けたことはあるけれど、今はクラトスに稽古を付けてもらっているらしい。
「死んじゃったりしてないかな?」
ふと、まだ心配するようなコレットの声に苦笑いしながら振り返る。落ちて行った場所を覗き込んでいたコレット。ただ見えるのはは暗闇で、いくらか声が反響しているみたいで。
「仮にあの人の体重が45sだとして、この穴が10mだとすると、重力加速度を9、8として計算しても死ぬような衝撃じゃないよ」 「………よくわかんねぇけど、生きてるんだな」
少し間があったのは、ロイドがジーニアスの言ったことを理解出来なかっただけみたいだけれど。多分、と答えたジーニアスにコレットもようやく安心したのか、立ち上がった。その視線の先にいたロイドが、穴を見ながら呟いていた。
「しっかしまぁ、運の悪いやつだなー。落とし穴の真上にいたなんてさ」
コレットを敵に回したことも間違いだとは思うけれど。立ち上がったコレットは苦笑いしながら裾を払っていた。その作業用通路だと思われる穴を見つめていたリフィル。落とし穴という表現もあながち間違いではないけれど。
「落とし穴ではなくてよ。山道管理用の隠し通路ね」 「………となると…」
山道を降りればまた来るかもしれない、と。クラトスの方を見れば同じことを考えていたみたいで視線が交わった。先を急ごうと言ったクラトスの言葉にロイドが振り返った。下に落ちたならば、道を下れば下にいるかもしれない。だったらこの場にいるよりにもさっさと下った方がいい。
「おい、あの女の正体を突き止めなくていいのかよ」
何かとクラトスに突っかかるなぁ、なんて思いながらロイドを見た。どこか不機嫌そうにしていたロイドにクラトスは振り返ることなく答えている。
「どうせまた向こうから来るだろう。ここは狭いし、足場もよくない。場所を移した方が賢明だ」 「一度上まで行きましょう。お昼までに登れればいいけれどね」
私がそう言えば、納得したのかそうでないかは分からなかったが、ロイドも一つ頷いた。既に空にある高い太陽を眺めながら、お昼までには無理かなぁ、と小さく呟いた言葉は、恐らく近くにいたクラトスにしか聞こえなかっただろう。
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