それからは比較的楽に進めた。意気揚々としたロイドと探求心の塊と化したリフィルが、私たちが手を出す前に全ての仕掛けを解いてくれたわけで。

「此処も魔科学で作られているな!!」

相変わらず目が輝いているリフィルは、祭壇に辿り着いても全く様子が変わっていない。ジーニアスが呆れたように自分の姉を見ていたけれど、さすがの私も最早疲れた。…というよりも、

「…どうしてこうも暑いのよ…」

暑いのは、苦手。かつて昼頃砂漠を横断するという暴挙に出た我が侭坊ちゃんに付き合わされ砂漠を横断したところ、見事倒れた記憶があるわけで。それ以来砂漠は避けて生きてきたの。この間捕まったけれど。祭壇を目の前にして、疲れたように肩を落とせば、隣にいたクラトスに見られていたらしい。

「暑さに弱いのか?」
「えぇ…。苦手」

僅かにまた肩を落としながら、心底嫌そうに眉を顰めた。何を面白いものを見たのか、ふっと笑ったクラトスが私の方を向いた。

「無理はするな」

軽く頭に手を乗せられ、それに驚いて隣を見上げた。微かに笑みを浮かべるクラトスに、思わず苦笑いを返した。そんなことをするようには見えなかったんだけれど、と小さく思いながら。


そんなことに気を取られている中、ふっと音素(あれ?マナだったかしら。どっちでもいいけど)が揺れたように感じた。それにつられて顔を上げると、同時にジーニアスの驚いたような声も耳に入ってきた。先程の感覚は間違いではなかったということだろう。

「な、なにあれ!!」

マナが急速に集まっていくような感覚がした。それは、紛れもなく第五音素と似たような性質を持っているものだろう。ジーニアスが指を差した方向には、炎を纏ったような魔物。背中に生えている針が僅かに伸びたのが見えた。恐らく封印の守護をしていたのだろうけれど。それなりに大きな体。長い尾を地面に叩き付けて、現れた。背中に見えるのは無数の針らしきもの。口から僅かに火を吹いて、


「魔物?!」
「恐らく封印を守護していたのだろう」

ロイドの驚いた声にこたえながら、前に出たクラトスが剣を抜いた。それを見たロイドが慌てて剣を引き抜く。
コレットはリフィルに下がれと言われていたけれど、戦うつもりはあるらしくチャクラムを握っていた。その姿に、思い出すものがあり小さく笑った。


「よっしゃ!!先手必勝!」
「待てロイド。あれに串刺しにされたいのか」

さっさと前に出ようとしたロイドは、クラトスに止められた。けど、と声にしようとして魔物を見た。鋭い針にうっと声を飲んだ姿が見えた。同時に、ジーニアスが詠唱している姿も視界で捕えていた。


「アクアエッジ!!」

詠唱が完成し、ジーニアスの水属性の魔術が直撃した。それを言い争っていたクラトスとロイドが前方を見た。だが熱気が強いせいか、それとも火を吹いたせいか。水蒸気となり、ジーニアスの魔術はかき消されてしまっていた。あれよりも威力の高い魔術でなければ、また消されてしまう可能性が高い。

「さて、どうしましょうか…」

リフィルが悩ましげな感じで言葉を発した。クラトスやロイドも攻撃出来ずにいた。


|
[戻る]