「ま、コレットは完全天使と化しちまったから、防衛反応で、敵を殺戮する兵器のようなものだよ。下手に手出ししたらこっちが危ない」

シエルの説明にロイドはコレットを見た。確かに、そこにいるだけで何も聞こえてはいないのだろう。生まれたての、レプリカみたいだ。そう思っただけで、何も言わずにその様子を見ていた。その頃、だ。扉の向こうからレネゲードの兵が集まっているのを感じた。ユアンが何を考えているのかは分からないが、私たちにとってはよくないことだろう、な。


「…しかし、マーテル復活の阻止という我々の目的を果たす為に最も重要なものは、既に我らの手中にある。もう神子など、必要ない!」

言い切ったユアンに対して睨んだ。これほどまでにあいつを恨むことはない。何が手を出さない、だ馬鹿。
音叉を握ると同時に扉からレネゲードが流れ込んで来た。ハメられた、と気付くのにそう時間はかからなかったわけで。


「我々に必要なのは貴様だ!ロイド・アーヴィング!」
「ユアン、お前それヤバい発言だぜー」
「は?何がだよシエル」
「貴様は黙れ!ロイドを捕らえろ!」

黙れって、なんて苦笑いしているシエルとは対照的に、向かって来ようとするレネゲードに対して、慌てたように武器を握るロイドたち。ちなみにコレットは既にレネゲードを一人張り倒していた←

「深淵へと誘う旋律」

第七音素、まだ少し怖いが気にしている場合ではない。ユアンの前で譜歌を使いたくない、のも正直な気持ちだったけれど。音叉を持ち、口にしたところで足元に譜陣が広がり、淡い光を放つ。

「トゥエ レィ ツェ クロア リョ トゥエ ツェ…」

光が一瞬強くなった瞬間に、レネゲードは次々に倒れた。いや寝ているだけだけれど。完全に術をかけようと思ったわけではなく、ただ逃げたいだけ。


「くっ…ユリアの、譜歌…!」
「はいクリーンヒット」
「ぐふっ!!」

何かを呟いたユアンに向かって、鞘に入ってままの剣(ローレライの剣ではないもの)を振り下ろしていたシエル。そのままパタリ、と床に寝たユアンにロイドたちは顔を引きつらせていた。容赦ない、と聞こえた気がして。


「さぁ行くわよ」
「セレネ、どこに行くつもりかまず説明なさい」
「コレットを助けに、だろ?ロイド」
「シエル…。あぁ!もちろんっ!」


嬉しそうな声を上げたロイドに、ジーニアスが「どうやって…?」なんて考えなしに呆れていた。もちろんその言葉で、ロイドも表情が暗くなったのだけれど。それに構わず、とりあえず走り出す。あいつらがいつ起きてしまうか、なんて分からないから。


「あ、あんたたち!最初からこのつもりだっただろ!!」
「さぁ?どうかなしいな」

行く先が分かったのか、頭を抱えながらのしいなの問いかけにシエルは笑った。最初から、というのには語弊がある。思い立った、のほうが多分的確だと思う。

「向かう先はテセアラ。確か、サイバックの王立研究所で神子の輝石の研究が進められていたはずよ」
「テセアラか………ん?姉さん、テセアラ知ってんのか?」
「行けば分かるさロイド…。あたしは見たくないけどね、」

国王と教皇が可哀想だよ、と嫌いでも同情しているらしい。無理言ってでも、テセアラ圏内の行動を許可してもらうつもりだから。それしか方法はない。ロイドならもう決めただろうから、確認はしない。今から向かうは格納庫。向かう先はテセアラ。

|→
[戻る]