「ようやく目覚めたか」
「…ちょっと待って、何してんのさセレネ」


ディザイアンとレネゲード。それからクルシス。あらかた(シエルが)説明したところで、ユアンと私がいるはずの部屋に(ロイドたちが)着いた。扉の向こうには、毅然とした様子のユアンとその後ろ。優雅にティータイムな私。自覚あるわ、かなりアンバランス。

「お茶」
「分かったわ。貴方は無視して話します」

呆れたようなリフィルの笑みにようやく私は立ち上がる。苦笑いされたのは仕方がない。私がコレットに剣を向けたのはすっかり忘れているのか、そこのところは全くスルーだった。


「お前らが、レネゲードなのか?」
「そう。我々はディザイアン、…いや、クルシスに対抗するための地下組織だ」

急にシリアスに入っちゃったわ。面倒なことにならなければいいけれど、と小さく呟いていたら隣にいたジーニアスが首を傾げていた。レネゲードは天使化しているコレットには手が出せないらしい。防衛本能のみが働く。ちなみに倒せないらしい。そう聞いたから、コレットが目的ではないのだろう。


「じゃあ、クルシスとディザイアンは……本当に同じ組織なのか!」「そうよ。クルシスは表でマーテル教を操り、裏ではディザイアンを統べている」
「セレネはレネゲードに聞いたんだよね?」
「そういうこと、」

この世界の人ではないことは、ロイドたちも知っていた。一般市民が知らない事実を知っているならば、レネゲードしかない。と思ったのだろう。最も、此処で私がお茶を飲んでいたりしたから、なのだろう。

「ディザイアンはクルシスの下位組織だ」
「………かい組織…?」
「クルシスの下っ端」
「なるほど」

ボータの言葉が理解出来なかったらしいロイドは、その場にいた皆に呆れられていた。
このままじゃ話が進まない。最も、ユアンが何を考えているのか、どうなのかそれは分からない。真意を試すことは出来ないだろうし。


「マーテル教はクルシスが世界を支配するために生み出した方便にすぎない。天使と名乗っているが、奴らはクルシスの輝石という特殊なエクスフィアを用いて進化したハーフエルフなのだ」
「それに当然、神なんかじゃない。それはマーテル教会も神子も知らない…んだろうな」

神なんかじゃない。それを言ったシエルとユアンは似たように、顔を歪めていた。それに少し呆れて、

「あいつらもハーフエルフなのかい?!」
「あぁ、ディザイアンの一部もクルシスも、そして我々もハーフエルフだ」
「……ハーフエルフ、ね」


くだらない、と呟いた言葉は誰かに聞こえたのだろうか。どうして人は誰かよりも優越したいのだろう。そういうのが、また悲劇の歴史を創るのかもしれない。誰だって、自分とは違うものを忌み嫌う。それだって、個性なのに。

「クルシスは何が目的なんだ?世界を支配するためだけに、こんなことをしてんのか?」
「少しは自分で考えたらどうなの、ロイド」
「う…だってよー」

口を尖らせたような表情で振り返るロイドに苦笑い。難しい話が苦手なのは知っているけれど、自ら思考しなければいけないことだってあるのに。頭を抱えたそうな表情をしてるリフィルが口を開く。

「女神マーテルの復活かしら?マナの血族に神託を下し、婚姻を管理して器となる神子を作り上げている。かなりまだるっこしいやり方なのが気になるけれど」
「そんなもんかな」


全てを理解しきっていないのは、私たちもそう。だから曖昧に笑う。全てを理解しようとしても、出来ないということは分かっているから。


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