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「…は、はぁぁあぁ!?ちょっと、聞いてないんだけど!?」 「最近、そればっかりですねシンク」 「うるさいよ!」
イオンの提案に、困ったように(というよりも反対の)声を上げるシンクに苦笑いをした。…そういえば、あの話をするの忘れてたな、と思いながら。なんだか申し訳なくなってきた。
朝早くに、アニスをダアトへの連絡を頼む、と言って追い出してすぐに抜け出してきたリンとイオン。渋々ながらもシンクはちゃんと迎えに行って、今はバチカルの裏手に止めてあるタルタロスへと向かっている。当然、街中を通るわけじゃなくて、外から回ってるわけなんだけど。
「なんで僕がリンの恰好しなきゃいけないわけ?」 「シンクしかいないからじゃないですか。それともなんですか。苦手なのにダアト式封呪解いてくれるんですか、シンクが。預言もきちんと詠めないあのシンクが!」 「嫌味?!ねぇ、イオンそれって嫌味だよね!少なくともダアト式譜術はあんたよりも得意だから!譜術も使えるし」 「知ってますか?レプリカって譜術使うと乖離が速まるらしいですよ」 「それは出まかせってディストが言ってたから大丈夫」 「そのディストが出まかせかもしれませんよ」 「あんたはどれだけ人の上げ足取れば気が済むわけ!?」
先頭を歩いている俺とリンの後ろから聞える、そんな兄弟げんかにくすくすと笑いながら、足を動かす。仲良いよね、とリンの声が聞えて、苦笑いしながらそれに頷いた。[前]だったら、あんな風に仲良くなることは出来なかっただろうし。…それも、[戻って]きたから出来ることなのかもしれないけど。
「代わるのは分かったけど、それってザオ遺跡の時は既に代わるってことでしょ?僕の役はどうすんのさ」 「僕!僕やりたいです!」 「却下」
シンクの役に意気揚々と立候補してきたイオンに、ため息をつきながら、振り返ってその行為を止める。何のためにリンとイオンが入れ替わるのか分からなくなってるし既に。ていうかイオンがシンクの役をやるとか、結構無茶がある。…ちょっと前まで乱発してたけど、入れ替わり。
早々に却下と言った俺に不満なのか、フローリアンがいつもやるみたいに頬を膨らませて俺のことを睨んできたイオンを見て、軽くため息をついた。
「あのなぁ、何のために入れ替わるんだよ!イオンはしばらく待機。もしくはダアト送還!」 「送還!?それはないですよフレイ!」
書類が増えているであろうことを思い出してか、イオンははっとしたように声を上げた。…書類が溜まってるのは俺も同じなんだろうけど。誰か片付けてくんねぇかなぁ…。無理だろうな。しばらくはダアトに缶詰になりそうだ…。
「いいんじゃない?入れ替わりくらい許してやれば」 「そうは言ってもなぁ…。体術だぞ?これが体術だぞ?」
リンがイオンの肩を持ち出したことから、イオンの目に輝きが戻ってきた。…何をどうしてシンクになりたいのかはさっぱりだけど。いや、さすがに俺はリンに勝てる気はしない、ぞ?一歩進んだところで、リンが立ち止る。それにつられて、同じように。
あれ?そういえばこのメンツって緑っ子に囲まれてんじゃん俺。しかも4人中3人レプリカだって。世も末だよな(何処がって感じだけど)
「ならいっそフローリアンになるとか」 「馬鹿言え!アクゼリュスだろうが、フローリアン、は…」
あぁそうか、と変な納得をした。フローリアンはアクゼリュスだけど、フローリアンの恰好をする分には連中も特に何も思わないだろう。ま、問題は“此処にいるはずのシンク”が何処に行ったのか、と思うかもしれないってことだけど…。同じ緑っ子で勘弁してくんねーかな。
どうせアクゼリュスにいるフローリアンは、住民の避難が終了し次第、アスランと一緒に退避してそのままダアトに戻ってくることになっている。だとすれば、ルークたちと会うこともないだろうし、もし言われても自分の代わりに誰かがやっていた、とすぐ分かるだろうし。
「…そうだな。無理しないって条件でフローリアンならいいぞ。体術より短剣術の方が戦いやすいだろ、イオンも」 「まじですか」 「何処で覚えたその言葉」
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