一体何がどうなっているのか分からない。そもそも、どうして王城へ向かったはずのルークたちを通り過ぎて、さっさとファブレ邸に到着してるのかも分からないし、どうして俺がこんなところに呼ばれたのか全く理解できない。いや、正確には理解したくない、だけど。


そしてなんでか応接の間で待たされている間に、ちょっとしたというかかなりの不信感を抱いていた。当然、此処に来る前にロビーですれ違ったラムダスや、出迎えのメイド、そして警備の騎士、どれをとっても、俺を見て一瞬目は見開くものの、それ以上に驚いたりしないからだ。いやもう嫌な予感しかしないんだけど返っていいですかセシル将軍。

頼むからシンクと合流させて。


「ルークぅぅぅ!!」
「は?な、ぐへっ!!」

広間に待たされていたら、なんか知らないが母上に泣きながら飛び付かれた。…あれ?なんか母上元気じゃね?いや、つか今ばっちり俺のことルークっつった?なに、母上も[戻って]きてるわけ?ちょ、ローレライこれなに基準なわけ。

「母は、お前が戻ってきてくれると思いました!ああ、7年前に貴方が戻ってこなかったので捜索を始めたのですが…。まさかダアトにいるなど思いもしなかったわ。あの髭に何かされませんでしたか?」
「いや、なにも7年間も探さなくても……じゃねぇよ!母上、俺は今はルークではなくフレイです!ついでに髭なんか知りません」
「フレイ…良い名ですね。あぁあんなに小さかったお前がこんなに成長して…」
「すみません、そろそろいい加減離れてもらえますか」


実は、今だに腰に抱き着かれたままである。ていうかいつからいるのか、ラムダスがめちゃくちゃ泣いてるんだけど。あれ?なんで父上までいるんだ。おーいそろそろ説明してくれローレライ。ようやっと離れた母上に、思わずため息をつきそうになった。早いところ戻らなければ、ルークたちに追い付かれてしまう。

「ルーク」
「フレイだっつってんだろ」

お前らまじでいい加減にしろよ。てか何父上までルークがいるくせにルークって呼ぶんだよ。つーかさっさと王城に行けよそんで髭捕まえてこいよ父上。とちょっと思いながら、此処に父上が来ること自体が疑問だった。


「帰ってくるつもりは…」
「ありません。失礼しま」
「ルーク!」
「ぎゃあぁぁ!やっぱ変!変だって!」

父上にまで泣き付かれてんだけど!何だこの状況、俺の方が泣きたいわコンチクショォォ!母上と父上が二人とも纏わり付いている。今までなら考えられない状況だ。ていうか今も考えたくない状況なんだけど。何がどうなってこうなってるんだか…。


「分かりました!ただしルークと呼ばない、ルークやナタリアには私のことは絶対に言わない!たまに帰ってくるでどうですか?!」
「お前には私とこの邸を守っ…」
「いい年して我が儘言わないでください父上!私にだって神託の盾の仕事があるんですから!まじいい加減にしねーと帰ってこねぇぞ!」

ぴたっと止まった。そ、そんなに帰ってきてほしいのか。よくわかんねーや。つーかかなり疲れた。離れた母上と父上に、また頭を抱えたくなった。……やべぇ、ほんとに疲れた。嬉々とした表情の母上は、確かこの時は寝込んでいたんじゃ、とは思ったが。いや…そもそも見舞いのナタリアはどこに行ったんだ。まだ着てないのか?
数年ぶりに訪れたはずのファブレ邸。懐かしい、と込み上げた感情はどこへ消えたのやら。

「と、いうわけでルー」
「フレイです」

仕切直し出来てないですよ、父上。睨むように口を挟めば、一度咳込んだ。

「私と一度城へ」
「却下です」
「………登城を」
「無理です」

登城ってルークたちと出くわすだろ。無理だから。絶対無理。なんか全体的におかしいぞキムラスカ。どうなってるんだよこれ、俺の計画まじで意味なしてなくね?…それにいつになったらシンクと合流出来るんだ!


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