少し前な六神将


フローリアンは異常に苛々していた。タルタロス内でむっつりとした顔を浮かべながら、艦橋に向かって歩くフローリアンを咎める神託の盾兵はいない。カツカツと音が、不意にぴたっと止まる。機械音と同時に、艦橋の扉が開いた。


「もー!なんでフレイがあいつらと一緒にいるの?!」

艦橋に入るなり、フローリアンがそう口にした。打ち合わせをしていたリグレットとラルゴが振り返る。ぐるり、と見回してシンクとアリエッタの姿も確認出来た。


「お前たちがコーラル城に向かったからだろう?そのままケセドニアでマルクトと連絡を取ると行っていたが」
「むう。だからってラルゴぉー」

苦笑いのラルゴに、フローリアンがしがみついた。反省の色がないのはいつものことだ。だからそれ以上は咎めたりしない。膨れっ面のフローリアンに、シンクが軽くため息をついた。此処での指揮は自分に任されている。それは[以前]の参謀だった自分だから、かもしれない。


「アリエッタ、ダアトからの援助物資の状況は?」
「えっと、ですね。大丈夫。確認して、ケセドニア経由で送るって、トリトハイム詠師が」

先程確認した事項を頭に浮かべながら答えたアリエッタに、シンクが一つ頷いた。ぐるりと視界を変え、フローリアンに視線をやる。


「了解。フローリアン、アッシュは」
「へ?あ、うん。親善大使就任後にアクゼリュス行くって」
「そ、分かった。アッシュと入れ代わりにアリエッタとフローリアンはアクゼリュスから退避だから」

頷いたかどうかは確認しない。了解してもらわないと困るからだ。その証拠に、二人は視線を合わせていた。大丈夫かな、と少し心配になることはあるが。アクゼリュス付近にはリグレットも待機するから、問題はないだろうけど。


「シンク、謡将はどうする?」
「髭ね。囮に海路使うはずだから、こっち派の兵を並べて中央海に派遣する。大詠師派と勘違いするようにね。時間稼ぎさせるさ」

手配は終わってる、とラルゴに告げる。納得したようにラルゴは頷いた。海路に囮、という話はフレイから聞いていたから即座に手配は出来た。


「リグレットはデオ峠で親善大使の足止め。救援がほぼ終わり次第、アリエッタの魔物が知らせるはずだから」

分かっている、と返ってきたのを確認したシンク。慌ただしく動き出している神託の盾兵を見渡してから。ラルゴに引っ付いていたフローリアンはラルゴから離れた。


「僕は先にバチカルに向かうから。アリエッタとフローリアンはアクゼリュスに向かってるマルクト軍に合流してから、現地で神託の盾と合流しな」
「マルクト?」
「そう。よろしく」

平野に落としたマルクト兵を、フレイからの連絡を受けたマルクトのアスラン・フリングスがアクゼリュスへ先行し、住民の避難をしているはずだ。



「えぇっ?!シンクってばバチカルに行くの?!いいなー」
「文句言わないでよ。仕方ないでしょ」

膨れっ面のフローリアンを見て、呆れたような視線をシンクが向ける。本当に呆れたわけではない。

[前]はアニスがフローリアンに名前をつけたらしい。その結果、フローリアンがアニスに懐いたらしい。それが、今回はフレイに代わった、ということらしい。


「あとで会えるだろう、フローリアン」
「頑張るよぉ〜」

笑顔のリグレットに言われ、フローリアンはうなだれるようにして頷いていた。

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