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とりあえず、ということでケセドニアにある礼拝堂の奥にある一室を借りて話をすることになった。当然、人払いということでアニスが外にいる。話を聞かれたくないだけかもしれないけど。そこにあった椅子を差して、イオンに座ってくださいと指を差されて、呆れたようにため息をつく。
「あのなぁ、普通導師が目の前にいるのに勧められて座るわけないだろ」 「何言ってるんですか、[ルーク]」 「それ。今は別に[ルーク]じゃねぇって」
呆れたようにそうイオンに返しながらも、結局言われた場所へと座る。結局座るんじゃん、というあたり、やっぱりリンだなと思いながら。イオンは備え付けのベッドに腰を下ろしていた。当然の如く、その隣にはリンが座っている。シングルサイズの簡易ベッドだ。さすがに三人では座れないという意見なんだろうけど。
普通だったら、椅子に導師が座るだろ。いやもう別になんでもいいけど、公式じゃねぇから。
「それで、どうした?」 「そうでした。バチカル以後タルタロスで入れ替わりますから、リンも一緒に誘拐しちゃってください☆あ、ついでにタルタロスにフローリアンも乗せておいてくださいね!」 「却下。フローリアンはアリエッタと一緒に先行してアクゼリュスだから」 「随分とあっさり却下出たね」 「まさかこうもあっさり却下されるとは…」
リンが笑いながらイオンを見てる。多分、リンから言われて考えたことなんだろうけど。リンが口出ししてない辺り、イオンに任せるってことなんだろうけど。言っとくが、口で俺に勝てるのは後にも先にもリンだけだ。(多分、今ならジェイドには勝てると思います。いや買ってないけど実際にケセドニアで)
「でしたら、ラルゴとフローリアンを入れ替えってことで」 「どうしてフローリアンに拘ってるんだよ」 「リンが“導師”役になる時、リンの役をフローリアンにしてもらおうかと」
そのイオンの発言に、少しだけ頭が痛くなった。言い出すとは思ってたけどな…。イオン曰く、さすがにザオ遺跡とアクゼリュスのダアト式封呪を続けて解呪するのはしんどいらしい。いくらローレライの加護(?)があろうとも、ということみたいだが。
「…フローリアンは呼ばない。代わりにシンクでいいだろ?リンの役をフローリアンにやらせるのは心配だ。シンクならバチカルで合流するから、言っておく」 「それと、もう一つフレイはイオンに言うことがあるんじゃない?」
急に、そこで口を挟んできたリンに頭を抱えた。不思議そうに首を傾げて、リンを見ているのはイオンだ。言うなよ、とは言ってあるものの、そういうわけにもいかないのがこいつだ。そもそも、勝手に押しつけてきたのはリンだろうに。
リンが言いたいのは、ザオ遺跡とアクゼリュスのダアト式封呪のことだろう。アクゼリュスの方は髭がいるから、“導師”に開けてもらわないと困る。けれど、ザオ遺跡はどうせ俺らしかいないんだから、ということなんだろうけど…。
「フレイってさ、ダアト式譜術使えるんだよ?」 「……え、ええぇえぇえぇぇぇ!?」
普通の人間の反応は、イオンの反応をすると思う。そのイオンを見て楽しそうに笑ってるのはリン。使えると言っても、大いに誤解を招くような言い方だったんですけど被験者イオン様ー。
「リン、それ、結構誤解だから。ダアト式封呪の仕組みを理解してて、それを第二超振動で消してるだけだから。使えるって言わねぇし。使えるとしてもカースロットくらいだ」 「……第二超振動って、1人で起こせないでしょう…」 「いやー、それが出来るんだよなー」
俺がまず超振動を発動する。そんで、ローレライの剣と宝玉の間で第七音素の干渉を起こす。するとどうだ。ローレライの鍵で起こった疑似超振動のようなものと、俺の超振動が見事なハーモニーを奏でて、綺麗な第二超振動の出来上がりだ。 …ちなみに、この無茶苦茶な理論を打ち立てて、実験してみた挙句に「あぁ、やっぱり出来るんですね。確証はありませんでしたけど」なんて不穏な発言を放ったのはディストです。
「…も、いっそ…フレイが導師やったらどうですか…」
がく、とイオンが項垂れた。いくらレプリカで第七音素の素養が有り余っているとは言っても、そう簡単にダアト式譜術を理解されたのでは溜まったものではないということらしい。それ以前に、教団の最重要秘密事項をおいそれと他人(つっても神託の盾兵)に話まくるリン(と言う名の被験者イオン)もどうかと思うが。
「いや、俺は大詠師くらいでいいって」 「どうする?温泉旅館でも作ろうか」 「あ、それいいな」
それって教団改革ってかあの辺一帯を既に乗っ取る気満々発言じゃん!リンもフレイも!なんて内心イオンが思っていることには、勿論気付いている上での気付かないふりだ。そういうスキルって大事。
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