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砂の上に足を踏み下ろしたアニスが、大きく背伸びをしたのを少し後ろから見た。俺の後ろにいるリンに早く降りろ、と言われてそれにつられて地面の上に足を下ろした。
「いや〜っと着きましたね、イオン様!」 「そうですね。これからが本番ですが」
笑顔のアニスに、にっこりと答えたイオンが俺の方を見ていたような気がした。けれどすぐにイオンはルークの方へと顔を動かしていた。封印術を掛けられたことをジェイドはルークに教えなかったらしい。旅の疲れ、と思っているのか、少しだるそうなルークが目に入る。 …悪いことしたかなぁ。
「ひとまずはキムラスカ領事館だな。そこで船の手配を頼もう」 「じゃ、俺はお別れだなー」
ルークの言葉に、ひらひらと手を振りながら俺がそう言えば、ばっとルークたちが一斉に振り返る。おいおい、何をそんなに驚いてるんだか。ケセドニアまでって言ったような気がするんだけどなぁ。
「お別れって、何かあるのか?」
どこか鋭い視線のガイに、困ったように髪を掻き上げた。ケセドニアのこの暑い地方で長い髪は死亡フラグだよなぁ…なんてため息。ルークは暑くないんだろうか。いや、聞くまでもないか。(暑いよなぁ…)
「別任務。イオンから頼まれてたやつだ」 「あ、そんなのもありましたね」
ただの口実だが。イオンから、と言えば此処で食い下がるだろうと思っての言葉だし、ある意味間違ってない。前々からの計画通りだ。イオンが頷けば、ガイもさすがに引きさがらざるを得ない。その様子を見て、今度はティアへと視線を映す。
「ティアー、この導師をよろしくな」 「え?!あ、はい!」
急に声を振られてびっくりした様子のティアに少し笑った。拗ねてるようだから、アニスもな、とアニスの頭を撫でる。…当然、その間にジェイドから鋭い視線が刺さっているのは承知の上だ。
にっこりと笑ったジェイドが俺の方へと歩み寄ってくる。ティアの「あ」という声が聞えて、それとほぼ同時に俺はその場から跳躍した。左の壁際に積み上げられていた空箱の数々を見てそっちの方へとわざと飛んだ。嫌そうな顔をしたジェイドを見て、笑ってその箱を倒す。ジェイドとリンの目の前で、バタバタと倒れていった箱を踏み台に、港にある一つの屋根の上に乗る。
「お前に引きずられるのは二度とごめんだ!じゃーなー!イオンをよろしく」
ひらひらと手を振ってジェイドにそう言い残す。迷惑そうな顔をしたジェイドを、リンだけが見ていたらしいけど。そんなジェイドの視線を感じながら、屋根の上から姿を消す。向かうのはマルクト領事館、そしてアスターのところだ。
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「…逃げられましたね」 「フレイですから」 「逃げるようなことがあったのか?」
ジェイドが顔を歪めると同時に、イオンは楽しそうにけらけらと笑った。ルークの首を傾げた質問に、リンとジェイドは同時に振り返る。そして、ため息だ。リンもルークに封印術がかけられたことは知っている。フレイから聞いたからだ。
第七音素だけに働くように作られているせいか、本人に自覚症状がないところが一番怖い。それとも、そういう風に作ったのか。どのみち、フレイもあれを作ったディストも敵に回したくない。そう言った意味でのため息を、リンはついていた。
「とにかく、フレイのことはいいじゃない?いっつもああなんだから」 「…それはそれで、問題だと私は思うのですが…」 「フレイですから」
さっきから同じことを繰り返すイオンに、さすがのダアト軍人たちもため息をついていた。教団のトップと、事実上のナンバーツー(フレイのことであるが)、ツートップがこんなマイペースな感じで、よく保っているなダアト、という感じではあるが。
「…なら、行くか」
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