「…な、何してんの…」

呆れたようなリンの声が聞えたような気がした。おう、遅かったなーと手を振りながら水筒に入っている紅茶を傾ける。隣でイオンが、「あ、ずるいです!」と声を上げているのが聞えた。その俺らの背後で、ルークが音機関に寝ているのだけど、放置放置。


「いやぁ、悪い悪い。思ったよりも任務外行動の連中が多すぎてさぁ…。俺が此処に来た時、ちょうどアリエッタがルークを連れてきたところだったから、お仕置きにタービュランス放ったらディストが代わりに飛んでってさ。いつの間にかアリエッタには逃げられてた」

あっはっはーと軽く笑えば、いや、お仕置きでタービュランスはないでしょ、とアニスからの小さなため息が聞こえてきた。それと同時に、「ルーク!?」なんてガイの驚きの声が聞こえて。心配ないよ、と声をかけるとほっとしていたように見えた。



そんなガイを温かい目(生温かいとも言う)で見ていたら、いつの間にか目の前に現れたジェイド。ばっと顔を移せば、あの胡散臭い笑顔を浮かべて俺を見ていた、と思えば。急にほっぺたを両方へと引っ張られる。

「ひゃにひゅんらぁあぁ!(何すんだぁ!)」
「いやぁ、よくも我々をまんまと出し抜いてくれましたねぇ〜。何が目的なんですか六神将は。考えても全くわからないんですよ」

べしっとそのジェイドの手を叩いて距離をとる。少し赤くなってしまった頬を押さえながら、じっとジェイドを睨みつけるも、相変わらずあの笑顔のままだ。く、なんていうかこの状況、嫌な昔のことしか思い出されない。こんなときに限って。


「知るか!」
「何が、目的なんですかね?六神将烈光のフレイ」
「だぁあぁぁもう!ネチネチうるせぇな!俺は次の任務でケセドニアに行かなきゃいけぬぇーんだよ!イオンも渡したし、もういいだろ!」

外套を翻して、その場をあとにしようとした。けど、がしっと笑顔でジェイドが俺の肩を掴んでいた。嫌な予感しかしなくて、振り返ろうにも怖くて振り返れない。目の前にいるアニスの口が、「ご愁傷様です」と動いていたのが見えた。


おいいい!誰かこの状況をなんとかしてくれ!こいつ、俺が[ルーク]って疑ってるとかいう以前に、六神将として俺のこと疑ってる!髭の仲間だと思って疑ってるよこいつ!冗談じゃねえあの髭の仲間とかマジふざけんなぁあ!


「それはそれは。我々もケセドニアに向かうんですよ。ご同行、願えますよね?」
「それは質問じゃなくて確定っていうんだけど。おいこら聞いてんのか死霊使いー!!」

ジェイドにずるずると引きずられるようにして、歩き始めてしまった。俺らの声が聞えたのか、さすがにルークも起きていた。そのルークからも睨まれていた、と言っておこう。




あれ?これ、ひょっとしてバチカルまで連行される感じ?


|
[戻る]