その先には、確か封印のようなものが施されている扉があったはずで。…それをルークは知らないんだろうけど。[あの時]、此処に[アッシュ]はいなかった。だから、封印のことも知らないだろう。とりあえず進んでみた、というその先には、やっぱりあの例の赤い玉と青い玉を嵌める扉があった。

「…いかにもって感じね」
「あからさますぎ」

呆れるように呟いたティアとリンに苦笑い。俺じゃねぇからな、これやったの。ジェイドがその扉に近付き、興味深そうに見ていた。知ってるのに、白々しいな。あ、俺もか。人のこと言えぬぇー

「何か特殊な術式ですね」
「…ディストか。しかし、よりによってこの術式な…」
「分かるんですか?」
「それなりには、な」

笑いながらジェイドを見れば、何かを考えるように眼鏡を押し上げていた。いや、動揺かもしれないけど。[ルーク]からしたら有り得ないもんなぁ、これって。それにしたって、と、扉を見る。ディストが解析を終えている式系統なのは間違いないだろう。が、少し複雑だ。物質を使って解くものは複雑すぎて、術だけでは解くことは、まず無理だ。

「解けないのか?」

じっと見ていたせいか、後ろからガイに聞かれた。少しだけ視線を動かして、肩を竦めて振り返った。

「無理だな。物質使って解放するタイプのものだから、術だけではどうにもならない」

そう言えば、隣と前の方から視線を感じた。一方はジェイドだろうし、もう一つはルークだ。

「…分かるのか」
「不満そうだなぁ、ルーク?」
「い、いや、別に…」

けらけら笑いながらルークを見た。気まずそうに視線を外した、その理由は[レプリカにそんなことできるのか]ってことだろうな。まぁ伊達に六神将諸々やってなかったってことで。後々使おうとは思ってたし、勉強しておいて損はない、って[前回]学んだからな。

「で、どうすんの」

聞いてない、とばかりに不機嫌そうなリンが俺を見ていた。なんとかしろ、ったってなぁ…と、頭をかきながらため息をついた。

「何とかなるのか?」
「……して、欲しいなら」

ある種の笑みを浮かべながら、ルークを見た。それに気付いたらしいルークは、少しだけ顔を歪めていた。そのやりとりに全員が、首を傾げていた。何かを言いたそうなルークに気付かないふりをしたまま、笑みだけ浮かべていた。相当性格悪くなったと思うけど、半分以上被験者イオンのせいだからな。

「勝手にしろ」
「まぁ言われなくとも」

笑いながら頷いた。そもそもめんどいから、魔物を追い回す、という選択肢は始めから俺の頭にはないわけで。天井、いや、上の階から聞こえる音に、少し笑いながら。これで撒けるかなー、なんて。

「アニス、」

振り返らずに、名前を呼んだ。きょとん、としていたアニスだけど、すぐに気付いたらしい。巨大化したトクナガに乗りながら…

「いっきまぁ〜す!」

と、トクナガで扉ごと吹き飛ばした。ガラガラ、と崩れ落ちる音がして、天井も突き抜けた。上の階から降りられるくらいの穴まで見えたところで、ガイが叫ぶ。

「お、おい!いいのか、これ!」
「だから聞いただろ、ルークに」
「いいんじゃないのか?」

だよなー。とルークと二人でガイに言った。俺に、か分からないがティアがため息をつき、リンとガイは呆れた顔をしていた。なに、この空気。今だ崩れ落ちた瓦礫が、パラパラと音を立てる。トクナガを肩に乗せ、満足そうに笑っているアニスだけが味方です。

「え、俺が悪いのか?」
「一概にそうとは言えませんが」

ジェイドが眼鏡を押し上げながら、誰ともそうなく呟いていた。

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