7年前、此処から始まった。二度目だけどな。あの頃よりも、かなり風化しているコーラル城と、目の前ではしゃぐ連中とため息が出た。なんだってこいつらまで。予定狂いっぱなしじゃねぇかよ、あいつら。

「顔が怖いですよ、フレイ」
「うるせぇよ死霊使い」
「ジェイドで構いませんよ?」

隣にいたジェイドにそんなことを言われて、少し昔を思い出した。あんまり名前呼びたくないんだよな、ボロ出そうで。ため息をまたついて、目の前のはしゃぐ奴ら(主にアニス)を見た。視線は合わせずに。これでも、人との付き合いは上手くなったんだけどな。

「さっさと済まそうぜ、"大佐"さん」

白々しい、と自分でも思いながらそう言って歩き出した。後ろから、「…なかなか手強いですね」おーい、ジェイドー丸聞こえだぞー、お前やっぱり封印術回避するくらいだから[還って]きてんの?まじで?そくさくと連中を通り過ぎて城に向かって歩き出した。記憶とかなり違うのは、それだけ月日が経っているということなのだろう。

「あ、フレイ様〜!待って下さいよぉ!危ないですから!」
「本当だよ。あんたがいなくなったら神託の盾終わりなんだから、一人でふらふらしないで」

ぐいっと、アニスとリンに裾を引っ張られた。え、こいつらアホだろ。俺って一応師団長だし、六神将だし響将だし。それなりに強いんだけど。何こいつら。………あぁ、そっか。俺にはバレないように、此処にくるつもりだったからか。

「あのなぁ…」
「部下に守ってもらわないといけないなんてな。笑わせる」

え、そこで突っ掛かるの被験者。ガイが宥めてるけど、フォローになってないぞガイ。いや、つーかアニスが突っ掛かるからやめてくれ。何でそんなに苛々してるんだか。ナタリア不足か?

「そういう問題じゃないんですよぅルーク様!」
「いいから、さっさと行くぞ」
「うう、やっぱり行くんだ…」

とりあえず左右のリンとアニスを引きはがして歩き出す。何やら不機嫌丸出しなルークをガイが宥めているようで。いやいや、不機嫌過ぎるだろ。今のやりとりのどこにそんな要素があったんだか。
言っちゃ悪いが、オンボロの城に足を踏み入れる。ファブレ家の物なのは分かるが、放置しすぎだ。そこにフォミクリー置くのもどうかと思うがな。ま、今となっては俺の知ったこっちゃないが。

「さて、と。アリエッタの魔物が空にいたってことは屋上かな」
「……ちゃんと見てたんだ」
「いやあのなぁ、俺だってさすがにやる時はやるっつーの」

リンの一言にさすがに傷付いた。気付くよ、そりゃ気付かなきゃまずいでしょ、六神将として。ため息をついたのは、リンの一言とそれから、こいつらをどうやって撒くか、だ。[戻って]る以上、それは難しいかな、と自己完結してからルークを見た。

「分かるか?」
「……いや、実際此処に来たことはないが当たりはつくな」
(やっぱりお前、[アッシュ]だろ)

やけに素直になったルークは奥の扉へと歩き出した。迷いなく歩いているということは、やっぱり道を知っているのだろう。ちくしょう、その態度が腑に落ちないんですけど。


そこで唐突に思い出したことがある。確か、ルークが今横切った石像って魔物じゃなかったっけ、と。おいおい、忘れてたんのか[ジェイド]!そろそろ歳なんじゃねぇの。一瞬、その石像…じゃなくて魔物。が動いた。
すぐに気付いたらしいジェイドやティアが動くが、それよりも近くにいた俺は右手で鞘を握り、居合抜きの速さで剣を抜いた。驚いて振り返ったルークも剣を手にとるが、その前に石像の魔物の土台と体を真っ二つに斬り離し、ルークの首根っこを掴み、後ろに投げる。受け身を取れなかったらしいルークはそのまま尻餅をついていた。石像の魔物…なんだっけ、こいつ。ブロクンチェアだ。そいつがこっちに土台を置き去りにそのまま突っ込んで来た。舌打ちをし、お得意の烈破掌で吹き飛ばす。


「フレイ!」

リンの声が聞こえ、一歩後ろに下がる。それと同時に剣を鞘に収めた。

「なんでもかんでも降り注げ!ロックマウンテン〜!」


いつから詠唱していたのか、アニスの譜術がブロクンチェアに落ちた。アニスが詠唱するその少し前に、ティアがアピアース・グランドを完成させていた。その為、アニスがFOF変化を使った譜術を使えたのだ。さすが神託の盾。頼りになるな。



「危なかったわね、ルーク?」
「……ちっ」

呆れたようにティアが尻餅をついているルークを見た。ただ、その顔は穏やかだったが。かなりあっさり行ったな。

「ほら、立てるかルーク」
「大丈夫だ」
「いやー、見事でしたねぇ」
「黙れよ大佐」

ルークに手を差し延べたガイ。そんな彼らと俺を見ながら、ジェイドがそんなことを言っていた。振り返らずにジェイドを睨む。名前でなんか呼ばねぇっつってんじゃん。
魔物を倒してから。再びルークが歩き出すのを追った。

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