結局、こうなるのかと呟いた。

軍港が見えるというところにきて、最後尾を歩いていた俺の目に留まったのは、アリエッタの魔物に捕まっているイオンの姿だ。さすがに今回はシンクもいることだし、外交問題を気にして軍港には襲ってこないだろうな、ということを思っていたから、まさかこういう形で接触してくるとは思わなかった。はぁー、と深いため息を上空にいるアリエッタとイオンに対してため息をついた。…今のイオンなら、そうそう捕まるようなことはないんだけど。これ、連絡行ってる?

「なーにしてんだアリエッタ」

俺が疲れたように声を上げれば、剣を手にしていたルークがばっと振り返ったのが分かった。まぁ、なんとも呑気っつーかいつもと話す口調が同じだったからだろう。魔物に乗っているアリエッタは俺に今気付いたかのような反応で、…あの様子だとフローリアン、俺がルークたちに同行するって思わなかったみたいだな。いや、シンクかもしれないが。

「ななななんで兄様が此処にいるですかぁあぁぁ!?」
「…にいさま?」
「あー、アリエッタってば、まだフレイ様のことそう呼んでたんだ…」

にいさま、の言葉に怪しいとばかりにルークとジェイドから視線が飛んでくる。はっはっはー、警戒されてるな。なんて俺が乾いた笑いを浮かべているところに、アニスの呆れたような呟きだ。そういえば、アリエッタがあぁ呼んでるのは久しぶりに聞いた。仕事中は滅多に呼ばれることはないから、今はよほど動揺してるんだろう。可哀想に、いや、俺のせいなんだけどさ。

「あのなぁ、お前らが任務外行動してるからだろうが」
「いつものことだもん!」
「いいから、イオンを下ろしてアリエッタも降りてこい」

任務外がいつものこと、って。常習犯もいい加減にしろよ(特に緑っ子!)ため息混じりに俺がそう呟けば、少しだけ狼狽えたアリエッタ。それも本当に少しだけだったが。暫くして、俺のことは諦めたのかそれとも無視に入ったのか、きっとルークの方を睨んでいた。おーいアリエッタさん、俺の話を聞いて下さい。

「ルークがコーラル城に来れば、イオン様は、返します。フレイは来ちゃ駄目!」
「いや、だからアリエッタ…」

俺の話、聞いてましたか?
なんて言う暇もなく、イオンを連れて早々に去っていってしまったアリエッタ。俺の話は全く聞いてないな。うんうん、俺はちゃんと言ったぞ、イオンを置いてアリエッタも降りてこいって。これは久しぶりにお仕置きしなきゃ駄目なパターンだよな。何よりお前、コーラル城って、コーラル城はまずいって。ディストがいるだろうから、恐らく同調フォンスロットを開くつもりじゃないことは確かなんだろうけど…俺、前にコーラル城のフォミクリー機械を軽くぶっ壊してるからな。大丈夫かなー、うーん。

「…フレイ?あの、ちょっと、聞いてる?」

色々と思考に入っていたらしい。気付けば目の前にあったリンの顔に、悪い悪いと適当に返す。ふと顔を上げると、全員が俺の方を見ていることに気付いた。あれ?話し合いが終わってるパターンですかこれ。俺が呆けてる間にいつの間に。

「え?なに?」
「…これが本当に神託の盾の響将か…?」
「お願いですからそう言わないで下さいルーク様」

首を傾げて全員を見渡せば、ルークから呆れたようなため息が聞こえてきた。真顔でアニスに何か言われていたが、よく聞こえずにまた首を傾げた。その様子に、ジェイドが一つ咳払いを入れてきた。

「イオン様を連れ戻すためにコーラル城へ行く、という話です」
「あぁ、そういうことか」
「フレイ様も行かれますか?」

ティアの何処か不安そうな声に、にっこりと笑いながらうん、と頷いた。僅かに引きつった表情を浮かべるティアに、ジェイドとガイは首を傾げていたが、俺の次の言葉でその意味に気付いたのだろう。隣でリンは笑ってるだけだが。

「スプラッシュ程度じゃすまないみたいだな」
「イグニートプリズンくらいいかないとね」

付け足されたリンの言葉で一時的にその場の空気が冷たい物になったような気がしなくもない。

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