「どうした、フレイ」

気のせいだとは思わなかったらしい。優秀だなー、と艦橋に入ってきたリグレットを見て軽く笑った。先ほどの目配せの意味がすぐさまに分かったらしい。神託の盾兵に指示を出して、それからリグレットの方へ振り返る。いつの間にか、隣に並んでいた。

「忙しそうだな」
「そう思うなら手伝ってくれ。…まぁそろそろキムラスカに向かおうと思ってたんだけど、その前に、な。杞憂ならいいんだけどさ」
「杞憂?何がだ」

不思議そうにリグレットが俺に向いた。それに小さく笑ってかわす。あまり大っぴらに言えるようなことではないのは確かだ。さっきのシンクとフローリアンの様子が気のせいだとしたら、それはそれでいいんだけど。むしろ気のせいだと思いたい。どこかの誰かのせいで人間観察が身についてしまったじゃないか。

「シンクとフローリアンの奴、ちょっと見張っててくれ」
「あの二人を?」

首を傾げたリグレットに頷く。怪訝そうな顔をしたリグレットに、誤魔化すように軽くまた笑った。そんなに深刻になるような問題でもない。ただ、ちょっと向こうにちょっかい出さないようにしてくれればいいだけだと思ってるし。

「いや、ただコーラル城使われるとこれからが困るからさ。フローリアンはルークのこと気に入らないみたいだし。ちょっかい出さないようにしてもらえればいいだけだ」
「そういうことか。キムラスカまででいいのか?」
「うん。とりあえずは連中がケセドニアに向かうまでかな」

まぁ無意味だろうけどなぁ、なんて小さく呟いた言葉は、どうやらリグレットには聞えなかったらしく、不思議そうに首を傾げていた。それを誤魔化すように、小さく笑っておいたが。


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