引き際フラストレーション
フレイを除く六神将+フローリアンはセントビナーの前に来ていた。神託の盾による検問だ。それだけでも外交問題に発展しなくもないが、ぶっちゃけピオニー陛下にフレイが連絡済みである。ていうか陛下も知ってるし、まぁ大丈夫だろ☆ということで六神将たちはセントビナー前に来ていた。探しているのは導師イオンとその護衛なのだが、ぶっちゃけ此処にアニスがいないことも、イオンがいることも知っている。今の段階では体裁をとり持っているだけとも言えるが。そのせいか、若干のやる気のなさが見受けられる六神将。
「アニスはまだ見つからないわけ?」 「マルクト軍が情報公開に消極的だからな。見つかりにくいのは確かだろう」
ラルゴがシンクを宥めるようにそう言った。実際、ジェイドにやられかけたラルゴであるが見事フレイの治癒術連発によって完全復活。あの人は限界という文字を知らない、というシンクの名言を残したくらいである。アリエッタの隣に立っているフローリアンが至極つまらなそうに座り込んでいた。
「ねー、疲れた。戻ろうよー。アニスなんかさー、参謀派なんだからすーぐ捕まるってぇ」 「それもそうだが…」
座り込んでしまったフローリアンに対して、リグレットが苦笑いをしているのが見えた。なんともこのやる気のなさ、これはフレイがいないからでしょうか。と思いながら影から六神将たちを見ているイオン。むぅ、とむくれるフローリアンの頭をアリエッタが撫でていた。それを見ながら、そっと溜息をついたリグレット。それを見ていたシンクが何かを思い出したように顔を上げる。
「あ、そういえば髭ってどうしてんの?いい加減にしないと職務怠慢で首席総長の地位までフレイのものになっちゃいそうなんだけど」 「いや、さすがにそれはないだろう」 「大丈夫です。職務怠慢で引きずりおろすのは簡単…」 「わぁおアリエッタ辛辣―」
ラルゴの苦笑いな否定と同時にアリエッタがにやりと笑った。その様子に、もうひとつリグレットがため息をついていた。勿論六神将たちはイオンたちが物陰から見ていることには気付いている。ていうか六神将にもなって見られていることを気付けないのはさすがにマズイ。そんなわけかやたらとフローリアンが不機嫌なのである。
「とにかく、だよ。このまま此処に留まっていたらいくらフレイがいるとは言ってもさすがに外交問題に発展する可能性もある」
まぁそんなことはないのは百も承知でシンクはそう告げた。此処にいる誰もが外交問題に発展するようなことだとは思っていない。それもそうだ。フレイはマルクト皇帝であるピオニー陛下から、マルクト領内で好き勝手やってくれて構わないという通達をもらっているからだ。もっともそれは内密的なものであるから、知られているはずもないのだが。
「ってことは、引き上げんの?」 「ま、そういうことだね」
不満そうなフローリアンに肩を竦めてシンクがそう言った。案の定、えー、なんて不満をフローリアンは特に周りの空気を気にする様子もなく、そう呟いた。そんなフローリアンの様子に呆れたようにため息を零したのはリグレットだけだが。他の六神将たちは呆れと言うよりも仕方ないな、というような感じだった。
「ねぇ、ディストは?」 「お前の定期検診のために準備していたはずだが?」 「げ、忘れてたー」
ラルゴに言われ、嫌そうに顔をしかめた。見られていることを考慮してか、ラルゴの声はとても小さなもので、傍にいた者にしか聞こえなかっただろう。そんなフローリアンの態度に小さくため息をついたシンクが周りにいた神託の盾兵に撤退を告げる。それを見たラルゴも自団の兵に撤退を告げた。神託の盾兵が撤退していくのを見守りながら、リグレットが宥めるようにフローリアンの頭を撫でる。
「戻って作戦会議する、ですか?」 「そうだな。あの人も待っているだろうし」
アリエッタが首を傾げて聞いた質問に、リグレットは笑って返した。
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