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目が覚めたら、さっきまでとは打って変わって外の景色が白銀の世界と化していました。え、なに異常気象?
「馬鹿なこと言ってないでさっさと起きてくれる?」 「いやもうちょっと状況説明をしてくれ」
呆れたように呟きながらも腕を組んでベッドに横たわっている俺を見下ろしてくるシンク。威圧が半端ない。あとこれはマジでキレてるやつだ。大人しく起き上がった俺はベッドの上に正座した。
「何、その態度」 「めちゃくちゃ怒ってるだろお前」 「怒るに決まってるでしょ!!馬鹿なの?!馬鹿なんだよね!!」 「いや馬鹿ではない。……あ、はい、馬鹿です、」
否定してみたが物凄い睨まれたので素直に謝る。いやレネスやリグレットあたりがマジでキレるのはよくあることなんだが、シンクにこうもキレられると…なんというか、物凄く居心地が悪い。
はぁ、と呆れたようなため息に少し怒りが収まったのが見えた。うんうん、いつまでも怒ってたって疲れるだけだぞ。…また睨まれた。
「それで、ここってケテルブルクだよな。つーか宿じゃねぇし、どこだよここ」
どうやらザレッホ火山での出来事から数日が経っているようだ。全く、なんて不便な身体。窓から見える世界はどう見てもケテルブルクで、まさかダアトではあるまい。そして宿とは思えない部屋の内装だ。明らかに一般家庭じゃない。
「ピオニー陛下の屋敷だけど」 「………ちょっと待てよ!!?なぁなんでそんなことになった?!はぁ!?」
ようするに、ピオニー陛下が幼少期に過ごしていた屋敷だって。なんてそんなことあっけらかんと言われても全く経緯が分からない。不法侵入だなんて思いたくない。皇帝陛下の私邸に不法侵入だなんて首を撥ねられる。やべぇ詰んだ。
「リンが脅して借りたんだよ。フレイがザレッホ火山で倒れたあと大変だったんだからね。フローリアンは泣き叫ぶわ、リンは物ぶち壊すわで全く始末に負えない」
どうやらアニスですら使い物にならなくなったらしい。それはなんともご愁傷さま。
「で、いつまでも第五音素の温床にいるわけにもいかないからってとりあえずここに来たってわけ。本当はウンディーネがいるグランコクマがよかったんだけどね。あいつらに気付かれる可能性も高いし。ここなら容易に来れないだろ?」 「はー…うん、まぁ事情は分かったけど…、つーかここ、あと誰来てんの」 「フローリアンとリンとラルゴ。あとダアトからリンがボコ殴りにして連れてきたディストかな」
合掌。ディストは既に息の根が止められている可能性が高い。階下からディストの悲鳴が同時に聞こえるだなんてなんてタイミングだ。そろそろリンのストレスが溜まる頃だろう。触らぬ導師に祟りなし。
「そういやアスランは来てないのか?」 「ああ…ここの使用許可取るのにグランコクマで会ったけど、駄々こねてたね。例のレプリカ問題で仕事が山積みらしくて来るに来れないってさ」 「……ああ、そう…」
なんとなく想像ができる。各地で確認されているレプリカの存在と、どうやらキムラスカ軍に扮して攻撃を仕掛けてきたレプリカたちの対処に追われているようだ。そこまで聞いて、「そういえばレプリカ兵ってこの時期出くる頃だっけ…?」と漠然と思い出している。くそう、全然覚えてない。記憶がすっぽり抜けてる。
「どうしたの?」
急に受け答えが曖昧になったことに違和感を感じたらしい。はっとしてすぐに「なんでもねぇよ」と返したけど、シンクの怪しむ視線は止まない。
どうやら乖離した時期に近ければ近いほど記憶が曖昧らしい。くそう、不便ったらない。
「……ああああああ!!!」 「えっ、何どうしたわけ」
記憶、と思い返して唐突に思い出した。思い出して、とんでもないことに気付いて悲鳴を上げる。思わずベッドの上で頭を抱えていたら、何やらドドドドドと階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
「フレイ?!」
バンッ、と勢いよく開けられた扉の向こうには、息を切らして走ってきたらしいリンの姿が見えた。おお、あいつがあんなに焦ってるの珍しい。
「ルークはどこだ!!」 「…………僕に向かって第一声がそれ?」 「しょうがねぇだろイフリートが接触してきて意識失ってたんだから!つーかせっかく第五音素克服できそうだったのにテメーらなんでダアトから連れ出したんだ…!!」
しまったあああと頭を抱える。なんのこっちゃ全く話の分からないらしいシンクとリンは顔を見合わせて首を傾げていた。
「どういうこと?イフリートって、第五音素の意識集合体だよね。接触できたって、そんな様子なかったけど」 「あー、なんつーの?精神世界っつーか、なんかこう音素の意識集合体と会うときって絶対意識失って倒れんだよな」 「なにそれ危なくない…?」
怪しむリンとシンクの視線を感じるけど、こればかりは嘘じゃない。今回はその場で倒れたらしく、ウンディーネの時みたいに姿が消えたりはしなかったらしいが。どうやらルークは火口に落ちそうになった俺を引っ張り上げた直後に、同じように意識を失って倒れたらしい。
いやその隙に逃げるようにして俺を連れ出したって。そもそも逃げるような事態になったのはリンがあそこでイオンのフリをしないで大爆笑してたからだろうが。
「ルークがイフリートとの契約者なんだよ…。音素の結晶作ってもらわなきゃいけねーのに、あいつダアトに置いてきたとか…またどっかで接触しなきゃいけねぇじゃん…」
物凄く頭が痛い。しばらくどっかで接触する予定もないってのに。ていうか不覚にもリグレットとアリエッタと戦ってる場面を見られているわけだから、これ以上姿を見せるわけにもいかない。あーめんどくせー。
「別に会わなくていいだろ」 「よくねぇよ!第五音素当てられただけで倒れるのそろそろなんとかしてぇんだけど…」
よほど会いたくないらしいリンの嫌そうな顔に即否定する。そろそろ自由な身体を手に入れたいです、俺だって。
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