広がる綻びを縫い合わせる様に


ライガクイーンも無事にキノコロードに移住し(今度フレイも遊びに来て、だって。って言われたときはマジどうしようかと思った。だってキノコ嫌い)、そしてシンクに言われた予定時刻よりも若干速めにセントビナー街道に到着した。アリエッタの魔物は、これからの作戦のために休憩に入っていって。俺らが戻ってきたのが分かったのか、何やら不機嫌というかなんというか、まぁ一言で言えば不機嫌な顔で(いや、凄い形相だ)シンクがこちらに向かって走ってきた。その手には、手紙。

「ちょっと!!これどういうこと!?」

少し離れた位置から、大きく振りかぶって、その手紙を投げる。すでにくしゃくしゃだ。シンクらしからぬ言動に首を傾げながらも、その手紙をキャッチする。差出人は書いていないが、アスランかアニスだろう。「A」のイニシャルの文字だけ書かれているが、二人ともイニシャルは「A」だ。意味ない。手紙を広げてみれば、それはアニスの文字で、内容もイオンと一緒にエンゲーブにいるということだった。セントビナー経由でキムラスカに入る、と和平の内容。



分かり切っていた内容に少し安心して、どうしてシンクはあんなに慌てていたんだろうと首を傾げる。アニスの手紙を読んでいる間に、シンクが俺とアリエッタの側まで近付いていた。顔を上げようと手紙から視線を外したとき、ふと封筒にもう一枚紙が入っているのに気付いた。それに、誰からだ、と首を傾げて広げてみると。畳んである裏の方にはイオン、と書いてある。ということはイオンが書いたものなんだろうけど。


正直、先を知っているイオンからの手紙なんて、嫌な予感しかしない。

「…………んなぁあぁあぁぁぁぁ!?」


俺の叫び声は、どうやら待機中の神託の盾兵と六神将にも聞こえたらしい。神託の盾兵たちは、どうしたんだフレイ様…と心配そうな面持ちで、六神将に至っては持ち場を離れて飛んできたくらいだ。(シンク談)イオンからの手紙には、たった一文しか書いていない。どうした、とリグレットから声が掛かったが、それに返事をすることをしないで、その一文を読み直した。間違いじゃない、俺の嫌な方の予感が当たっていた。顔を俯かせながら、イオンの手紙を広げて、俺の目の前に集まっていた六神将たちに見せる。シンクのため息が聞こえたのと同時に、その嫌すぎる一文を読み上げた。

「俺の嫌な予感通り。…ジェイドも[戻って]きてる」


ディストが叫んでいたような気がした。多分気のせいじゃないと思う。ていうかむしろ俺が叫びたい。俺の計画を悉く邪魔してるのはローレライだと思いたい。俺の叫んだ意味が理解出来たのか、リグレットたちもかなり嫌そうな顔をしているのがわかった。ぶっちゃけ、このメンツで言ったら一番困るのは俺だ。そしてまず最初にフローリアンとリンの存在が疑われると思う。しかもよりによってジェイドですか。すっかり頭を抱えたまま、投げ飛ばしたその紙は第五音譜術の術で綺麗さっぱり屑と化した。

「ぬぁぁあぁ…めんどくせぇ、それも凄く色々なことがめんどくさい…」
「そんなこと言っても仕方ないでしょ。とりあえず、やれることからするんじゃなかったの?」
「ふ…子供に諭されているぞ」
「子供じゃぬぇ。ついでに俺はこいつらの保護者でもぬぇ」

楽しそうに俺とシンクを見て言ってきたラルゴに即座に返す。もう勘弁してくれよ、俺は緑っ子の保護者になったつもりはありませんが。最近よく言われる保護者という単語に、俺は頭を抱えてるんだって。おい、まだ十七なんですけど。


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