ずっとずっと側にいた。


アリエッタは、一人で先にライガクイーンのところへ行った。産卵期で気が立っているだろうから、いくら親しいとはいってもやめた方がいいだろうと思ったから。ていうかそうアリエッタに言われたんだけど。そんなわけで、一人で森の中をぶらぶらしている。あれ、これって俺が来る意味あったんだろうか。まぁ一応ライガクイーンを移動させてますよーっていう報告をチーグルにもしておいた方が良いだろう、と思ってチーグルの巣の方へと向かっているが。あの例の大きな木の下にある穴。懐かしいなー、とか一人ぶつぶつ言いながら足を進める。不審者じゃねぇからな。

大体、此処へ一度来たことがあるアリエッタがミュウが[戻って]きていると確認しているし、それを俺も聞いている。だからこのイベントは本来起こらないはずだったのだが、まさかのリンが森を焼き払ってくれたおかげで見事にイベント発生。余計な手間をかけさせやがって!!


当然チーグルの巣だけあって、足許にチーグルがへばり付くような状態だ。みゅうみゅうみゅうみゅうとうざったい。超うざったい。確かに、可愛いなーとか何とか思っていた時期はあったが、基本的にはうざったい。ていうか邪魔。歩けないし。

「これ、やめんか」

これまた懐かしい声が聞こえた。視線を少しだけ先へ進めれば、チーグルの長(長老?)がソーサラーリングを杖のようにしてこちらを見ていた。チーグルの長の一声で俺の足許にいたチーグルたちは道を空けた、が。それ以上進もうとはしなかった。なんていうか、一言で言ってしまえば嫌な予感。なんだけど…。

「ローレライ教団のものです。導師イオンの依頼にて、ライガクイーンに対して移住の申し入れを。現在、私の部下が移住の為に森の奥に」
「導師の…そうじゃったか。感謝する」
「いえ、事後報告になってしまいま」
「ご主人様ですのぉぉぉぉぉ!!」

俺と長老とが話をしていたはずだ。そこに凄い勢いで長老にタックルした何かが、長老から奪ったソーサラーリングを嵌め、そしてそのまま俺にアタック噛ましてきた。声と言葉と話し方から、何だか知っているモノのような気がしたが。アタックをさりげなく避けると、俺の顔の横を過ぎていったソレは俺の後ろで派手に地面にのめり込んだ。…軽くクレーターが出来ていると言っておこう。俺のせいじゃねぇ。


ソーサラーリングがなくなったせいで、会話の成立しなくなった長老を見て、笑顔を作る。あくまでも作った笑顔だ。早く此処から出なければ。てかもう地核からローレライを引きずり出そうじゃないか。

「それでは失礼しますねー」
「待って下さいですのご主人様!酷いですの、僕を置いていくなですのぉぉおぉ!」

踵を返し、右足を一歩踏み出したところ。目の前からめり、と起き上がったそれは再びアタックを噛まそうとしてきたので、足で止める。右足の裏にきれいに顔がめりこんだそれはもう今更言う必要もないだろうけど…ミュウだ。長老から奪ったソーサラーリングだけど…あのさ、まだザオ遺跡行ってないんだから、アタック出来る方が可笑しいと思うんだけど。ていうか髪の色変えてんのになんで俺が“ご主人様”だと分かるんだこいつ。

「久々のご主人様の愛が痛いですの…」
「きもいこと言うな。お前はあとからルークと来いよ」
「嫌ですの!ご主人様はご主人様だけですの!僕、ローレライさんと約束したですの!」

…あれ?今、こいつローレライって言わなかった?今まで[戻って]きた者の誰一人として接触をしなかったローレライと接触したってことか?…ていうかなんでミュウと接触してんだよあのアホ第七音素!百歩譲ってそこはジェイドとかにしておけよ!


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