Novel
13

人間というのは不思議なもので、自分よりも反応が上行く人物が側にいると、



「ギャーーーッ!!」




冷静になれるのである。






事は数十分前。

「おーい、宮野!」


合宿4日目最終日。帰り支度も終えて、あとは寝て明日を迎えるだけ。そんな時、声を掛けられ返答した。




「志島さん。なんですか?」

「実はな、音駒と梟谷のバレー部部長と俺とで話した結果、折角だから肝試ししよう!ってなってな!」

「………いや、止めましょうよ」

「もう決まったから、10分後合宿所正面玄関な!」

「やること決まってんですか!?」

「部員に言っといてくれなー!」

「あ、ちょ、志島さん!……はぁ、肝試しか…」



部屋に戻り、わいわいしている部員に先ほどの話をする。殆どが楽しみそうにしている。が…




「…東野、顔色悪いぞ」

「宮野…、それ絶対参加?」

「え、いや…別に絶対参加ではないとは思うけど…」

「…じゃあ、俺、棄権しても…」

「まぁ待てよ、東野」

「速水…」

「棄権したら、お前このだだっ広い部屋に一人で居なきゃいけねぇんだぜ?それこそ耐えれる?」

「!!!」

「こーら。あんま弄ってやんな、速水」

「へへっ。さーせん!」

「東野、お前が棄権するなら俺も棄権してやるよ」

「え、でも、宮野の部長だし…」

「だーいじょうぶだって!副部長の行平は行く気満々だから、あいつに任しとけば!」

「ちょいと待った。そーはいかねぇぜ、愁くん」



何故だがここに居るはずのない声が聞こえて振り向く。


「鉄、なんでここにいんだよ」

「いやな?とてもとても良いイベント企画があるっていうのに、それに参加しないなんてことがもしかしたらあり得るかもしれないと踏んでこうしてやって来たら、部員想いの愁くんはやはり予想通りのことをしようとしていたという訳だ」

「テンメェ、黒尾ォ!!先々と歩いて行ってんじゃねぇ!!」

「いったっ!?」


後ろから追いかけて来た夜久からの足蹴りに黒尾は前のめりになる。


「おー、夜久」

「よー、宮野」

「いやぁ、悪いな。鉄のお世話兼お守り」

「俺だけじゃ抱え切れねぇよ。やっぱ宮野の手が必要だわ」

「……とにかく!愁!お前は絶対参加!!」

「じゃあ速水はどうすんだよ」

「部長に言って、速水は超ボジティブシンキングの行平に付いてもらうから大丈夫」

「……なぁ、そこまで手ェ回さなきゃなんねぇなら参加しなくても良くね?」

「諦めろ、宮野。1回言ったら黒尾は聞かねぇ」

「そうだな、そうだった。俺としたことがすっかり忘れてた」

「お前ら俺に冷たくね?」

「「いんや、普通」」






そして、


「ではでは!音駒高校と梟谷学園高校合同肝試し大会ーー!!」


が、始まった。俺以外の部長軍はノリノリである。


「雰囲気あんなー…」

「宮野さん」

「よっ、赤葦くん。赤葦くんは肝試しとかどう?」

「別に苦手ではないですが、暗いので足元が不安定ですね」

「だよなぁ。いくら明かりのもん持ってても暗いもんは暗いしな」

「宮野さんは苦手ですか?」

「そんなだけど、思ってた以上に雰囲気あるからそれにビックリしてる」

「…確かに、雰囲気はありますね」


デーン!と効果音が流れてきそうな森。昼間はロードワークとして使われるが、夜になるとこうも印象が変わる。




「愁」

「お、研磨。お前も参加するのか?」

「クロが、参加しろって…」

「…今度いっぺん締めるか」

「うん」

「弧爪はこういうの苦手?」

「んー…どうだろう。あんまりしたこと無いから分かんないや」

「研磨はそんなじゃねぇかな。ホラーゲームとかするだろ?」

「うん、する…」

「じゃあ耐性とか付いてそうですね」

「な」

「ヘイヘイヘーイ!!愁!ビビってねぇか!?」

「お前がビビってねぇか」

「木兎さんこういうの大の苦手ですもんね」

「へぇ…そうなんだ…」

「ん、んなことねぇよ!!」

「声裏返ってんぞ」


愁に言い返され、赤葦にカミングアウトされ、研磨から別に興味無いといった返しをされた木兎。終いに声は裏返っている。




「じゃあこんだけ人数多いから、四人一組な!クジ用意したから引いてけー!」




「準備良いな、梟谷バレー部部長」

「あの人はこういうの大好きなので」

「あー、ポイな」

「愁、引きに行こう?」

「うーし、行くか。おら、木兎も行くぞ!」

「わ、わかってらい!」

「なんで江戸っ子?」



クジを引くと、そこには「5」の数字が。後3人、5を持つ人を集めなければならない。


「愁、何番だった?」

「5」

「お、一緒じゃん!」

「鉄とか。碌なことなさそうだな」

「オイ」

「ヘイヘーイ…、愁、何番?」

「5ー」

「ヘーイ!!俺の時代!!一緒!!赤葦も!!5!!ヘーイ!!」

「煩いです、木兎さん」

「赤葦くんの言う通りだー。煩いぞ、木兎ー」

「騒いでられんのも今のうちだな木兎。あそこン中入ったらもうヘーイとか言えねぇよ?」

「!!」

「だーからお前は一々おちょくんなって!」

「面倒なんで、しょぼくれモードに入らないでください」