Novel
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「よ、福岡」
「おー黒尾、夜久、海!研磨と山本と福永も!勢揃いだなぁ」
「ヘイヘイヘーイ!梟谷も居るぜ!」
「木兎さん静かにしてください」
「おー、赤葦、ぼっくんのお世話ごくろーさん」
「んー、今は愁と東野と速水か」
「梟谷は山下、留岡、青山だ」
ドリブルをする音が床に響く。キュッキュと鳴るバッシュ。3on3なのでいつものコートを半分にしての練習。
「…黒烏か。上手いこと付けるな」
「本当にな」
半面だからこそ狭まるパス道。往来する人と人の間をどうパスし、ゴールへ導くか。
「空から見ているかのようなパス。何処からか突然やってきてボールをカットする。自由に空を飛んでいるかのようなドリブル。鋭い観察眼とずば抜けた頭脳。まさしく…」
────烏
ポスッ…とゴールに落ちるボール。5分というのは、長いようで案外短い。Tシャツで汗を拭い、自分の番は終わったので休憩に入る。
「あれ、鉄達来てたんだ」
「おー。休憩中でな」
「愁、凄い綺麗。決める時」
「ははっ、ありがとう研磨」
「コート全面使わねぇんだな」
「3on3は半面で、5分間ゲームなんだ」
「変な感じしないのか?半面で」
「慣れたらなんてことねぇよ」
「愁さんかっけぇッス!!」
「サンキュー、山本」
「………」
「福永も見に来てくれてありがとな」
じっと愁を見る福永の頭をポンポンと叩き笑うと、少し嬉しそうに笑った。福永もバレー一本で他の競技に興味なんて無かったが、いつも隣でしている愁のバスケに知らない間に魅せられていた。山本もその一人だ。
「ヘイヘーイ!愁!バレーしようぜ!」
「木兎くん、君俺が何部か知ってる?ご存知?」
「バスケ部!!」
「俺はバレーとは無縁なんだよ。体育の授業か時たま鉄と研磨の練習に付き合わされる程度だし」
「いいじゃん!やろうぜ!」
「日本人?日本人だよな?言葉通じてる?分かる?俺の言ってること」
「やろう!!」
何言っても駄目だな。聞いてない上に分かってない。
「珍しいな。赤葦がストップかけねぇなんて」
隣で見ていた木葉が意外そうにそう言った。赤葦はそこ言葉に少し肩をピクリとさせると、自分がずっと愁から目を離していなかったことに気付いた。
「赤葦くんだってぼーっとする時あるわな。人間だもの」
「まぁそうだな。そんな時もあるか」
すると後ろから猿杙が「そろそろ休憩終了だぞ!」と声を掛けてきたので、バスケ部員はじゃあなーと手を振って隣の体育館へと帰って行った。少ししか話してないし、今日初めて会ったけれど、なんだかちょっと違う感じがして声を掛けた。
「赤葦くん」
「!」
声を掛けられ振り向く赤葦。そこには笑う愁の姿が。
「練習、頑張れ!でもほどほどにな!」
「……はい」
それだけ言うと、じゃあと愁は背を向けて仲間の元へ。赤葦も少しして仲間の元へ歩いて行った。
「いやー、悪いね。作ってもらって」
「そっちはマネ居ねぇし気にすんな!」
「音駒、マネ取んねぇの?」
「んー…」
「大体がこいつ目当てで来るから仕事にならんのよ」
梟谷バスケ部2年の山下・佐久間と話していれば、にょきりと後ろから出てきた行平。
「なるほどなぁ」
「宮野イケてんもんな〜」
「顔イケてて、性格良くて、主将で、頭も良い。国語が異常に出来ない点は神様が与えた美点だ!」
「うるせぇよ!行平!テメェは数学馬鹿悪りィだろうが!」
「数学出来なくても生きて行けんだよ!」
「それなら国語出来なくても生きて行けんのと同じだろうが!」
「ほらほら、お前ら夕飯食いっぱぐれるぞ」
近藤に言われてゾロゾロと席に着く面々。少し離れた机では梟谷と音駒のバレー部が夕飯を食べている。なんと、合宿所まで一緒だ。完璧経費削減だ。
「んー?どうした?赤葦」
「…なんでもないです。木兎さん、ご飯落とさずに食べれるようになって下さい。小学生ですか」
「あれ、本当だ落ちてる」
「気付いてなかったのかよ」
「ぶははははっ!木兎ォ、お前後輩に注意されちゃあおしまいだな!」
「何おー!黒尾ー!」
「おー、やんのか?買うぜ?バレーで」
「止めろ、食事中に!」
「木兎さん、お座り」
「「(オカンだ…。オカンがいる…)」」
「黒尾。今お前失礼なこと考えてなかったか?あ?」
「な、何のことかな夜久さん」
「今日の自主練は禁止です」
「あかーしぃぃぃ!!ごめんーー!!」
「…研磨、黒尾さん助けなくて良いのか?」
「あれくらいされてやっと反省するから良いんじゃない?」
「夜久にヘッドロック掛けられてるぞ…」
「赤葦も謝ってる梟谷のエースガン無視だ…」
「…!」(訳:あれを止めれるのは愁さんだけ)