Novel
10

1年生が入学して、早1ヶ月経った。その間、練習試合もあったりした。そして、やって来ました…



「ゴールデンウィークゥゥゥ!!」

「煩い速水、黙れ速水」


ズーンと沈んだ速水に目などくれず、「えー…」と何も見なかったかのように話し始める。




「毎年恒例、練習試合含む合宿です」

「「ぅえーい!!」」

「煩い」



騒ぐ部員(主に2年)を沈め、話を再開させる。



「合宿所云々のこともあって、全員は連れていけない。だから、レギュラー陣のみってことになったからそのつもりで」

「え…!?じゃあ俺行けないじゃないですか!」

「杉原ァ、お前はまともにドリブル出来るまで連れてけねぇぞ」

「そんなぁぁぁ!」

「はい、合宿場所と練習試合の相手はさっき言った通りだから、そのつもりで。解散!」

「「あざーした!」」



ぞろぞろと体育館を出て部室へ。愁はその場に残って日誌を書く。床に座って、椅子を机に。



「愁ー」

「んー?おぉ、鉄、夜久、海。…研磨は?」

「研磨は終わったらさっさと帰った」

「あ、新作ゲームか。今日届くんだったな」

「バスケ部もGW合宿か?」

「おー。っつっても遠出なんてしないし、同じ都市組なんだけどな」

「へぇ。何処とやるんだ?」

「梟谷」

「「「え?」」」

「え?」

「…梟谷?」

「…梟谷、だけど」

「…俺らも」

「…梟谷?」

「…あぁ」

「「………」」


あ、監督同士面倒くさがったなこれは。と4人の頭にはテロップの如く流れるのであった。









GW当日。


「よう!宮野」

「志島さん、よろしくお願いします」


「志島聡」梟谷学園高校のバスケ部主将だ。



「今年はバレー部も合同なんだなぁ」

「多分監督同士面倒くなったんだと思います、交渉されるのが」

「…あぁ、なるほど」


強豪校ともあれば合宿相手になってくれという高校は少なくない。彼方此方と声が掛かるが、やはりこちらも力を付けるための合宿。良い所としたい。言い訳付けるのも面倒だと思った監督は、いっそ同じ所で、尚且つ強豪校と合宿しようとなったのだ。なんだかんだ、あの監督同士は仲が良いのだ。


「1年は今年いるのか?」

「いえ、合宿所云々の関係でレギュラーだけです」

「そっかそっか。まぁ、合宿楽しもうぜ」

「はい」

「愁ーーーー!!!」

「「………」」


体育館が3つある梟谷。今回は贅沢にも2つと運動部が貸切だ。第二体育館をバスケ部。第三体育館をバレー部。距離はそんなに遠くなく、隣同士なのだ。そう隣同士。



「ヘイヘイヘーイ!!愁!!久しぶりだな!」

「…いやいやいや、久しぶりだけどバレーは?バレーどした?なんでこっち来たわけ?え?」

「黒尾が言ってた!バスケ部も合宿来てるって!だから来た!」

「分かりやすい説明ありがとう」

「木兎、赤葦が探してるんじゃないか?」

「あかーしなら大丈…」

「…夫なわけないでしょう。何してるんですか、アンタは」

「お!あかーし!愁、紹介すんな!セッターの赤葦!1年!」

「……大変だろうよ、赤葦くん。心折れるだろうけど頑張ってくれな」

「この思いを分かってくれる方に出会えて心から嬉しいです。バレー部1年の赤葦京治です」

「バスケ部2年の宮野愁。よろしくな」

「よろしくお願いします」


お互い手を出して握手する。なんか、心通じ合えるものを感じるとお互いに感じたのだった。所謂、苦労の何か。



「ほら、帰りますよ木兎さん。3年の先輩方も2年の先輩方も待ってます」

「えー!もーなんでバスケ部は隣のコートじゃねぇの!」

「折角3つも体育館あって、贅沢にもその内2つ運動部が貸し切れたんだからそれ使わない手ないだろうが。文句言わずにお前は赤葦くんに連れて行かれろ。よろしくな、赤葦くん」

「任せてください。ほら、行きますよ」


首根っこ掴まれてズルズルと引っ張られていく木兎。どっちが先輩だか分からん。



「…じゃ、木兎も赤葦に無事連れて行かれた所でこっちも始めるか」

「ですね」





チーム分けをして試合をする。3 on 3形式でローテーション。普段自分のポジションではないポジションをして苦手を克服していく練習法。愁は基本オールラウンドだが、やっぱり普段のポジションであるポイントガードの役割、ドリブル・カットが得意だ。それでも敵陣に攻め込み味方の得点をアシストするには、時にショットを決めて相手ディフェンスを引き付けなければならない。なので今回はシュート中心のシューティングガード・スモールフォワードを務める。




「宮野!」

「はい!」


3ポイントラインの外側からゴールに向けてボールを放る。決してラインを踏まず、体を後ろに反らせて飛ぶ。指先から離れて空中を舞うボールは、導かれるようにゴールへと吸い込まれた。



ピーーッ!



「ブザービートだ!」

「なんだよ宮野!3ポイントは苦手じゃなかったのか?」

「他よりは苦手ですよ」

「けどちゃっかしブザービート決めてんじゃん!」

「あれは近藤先輩がパスくれて、もう時間もなかったからで…」



今はシューティングガードとしてコートに立っていた愁。次はスモールフォワードとしてコートに立つ。バレー部は休憩に入ったのか、こちらの体育館に顔を出しにきている。




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