Novel
09

「と言うわけで、明日テストでーす」


死刑宣告であった、まる。




「ってちげぇ!!」

「何かな、黒尾くん」

「濱ちゃん待った!テストとか聞いてねぇ!」

「今決めました」

「どこのガキ大将だよ…!!」


ジーザスと言う文字が見えなくもなく、それを後ろから見ていた愁と夜久も顔を見合わせて、手を挙げた。




「あのー…」

「はい、宮野くん」

「なんで急にテスト?」

「…良くぞ聞いてくれましたね」

「あ、なんかこれ長いやつだな」

「あぁ、だな。まずった」

「真意はなんなんだ、濱ちゃん…」

「「(聞くんかい)」」


そこから語られたのはこうだ。ついこの間の数学の時間。数学といえば濱ちゃんこと濱野先生の授業。濱ちゃんは数学を教えていた。愛を込めて。生徒達のために。みんな真剣に授業を聞いてくれているなと嬉しかった。問題を出して、その間に巡回した。たまたま通った所の机の主が何やらノートを真剣に見て、書いていた。あぁ、数学にこんなにも真剣な取り組んでくれるなんて…と思ってノートを見た。すると…




「そこには、なんとも言えない…。そう、僕の似顔絵が描かれていました」

「あ、それ俺じゃん、描いたの」

「「テメェか、元凶はよ!!」」


黒尾を後ろからど突く愁と夜久。殴られた本人は「いだぁ!」と声を上げて震えている。重いのだ、この2人の攻撃は。


「ちょ、待て待て!褒められども殴られる理由が分かんねぇ!」

「ちょっと見せてみろ、今あんだろ。数学の時間なんだから」

「おー。はい」

「どれどれ…」



夜久と共にそれを見る。驚愕した。まさか、ここまで、ここまで…




「どう?自信作だぜ」

「絵心なさ過ぎんだろうが!!」

「謝れ!今すぐ濱ちゃんに謝れ!!」

「は!?おま、お前らこの芸術センスが分かんねぇのかよ!」

「芸術センスはお前の髪型だけで沢山だわ!!」

「「ブッ!」」


愁の切り返しにクラスメイトはもう腹がよじれる。止めてくれと思う反面、面白いから続けてくれという気持ちもあり、葛藤だ。




「先生、心に傷を負いました。深く深く。なので、明日テストでーす」

「………」

「………」

「………」

「「………」」

「…濱ちゃん待っ…!」

「言わせねぇよ!?」

「振り出しに戻して無かったことにしようなんて出来るわけねぇだろうが!」

「謝れ!今!まだ間に合う!」

「そうだ!誠心誠意謝れば濱ちゃんだって…!」

「でもあれ激似だろ?濱ちゃんに」

「「………」」

「……はい、明日テストでーす。実力テストでーす」

「え!?なんで!?実力テスト!?」

「学習しろよ!!馬鹿鉄!!」

「俺らの負担増やしてどーすんだ、ゴラァ!!」

「今日の授業はここまでです。じゃあ、明日の実力テスト頑張ってくださいね〜!」



ガラガラピシャリ。と閉じられた扉。キーンコーンカーンコーン…。と鳴るチャイム。諦めた顔のクラスメイト。黒尾なら仕方ねぇよ。黒尾くんなら仕方ないね。だって、黒尾だもん。そうだそうだ。

つまり、もう処置しようがないというわけだ。おバカちゃんに塗る薬無しである。諦めだ、完璧な。しかし、この2人は諦めなかった。



「おま、おい…!鉄…!明日俺練習試合あって今日色々と考えなきゃいけねぇのに…!!」

「宮野はお前の幼馴染だろ!救ってやれよ!救えんのはお前だけだろ!黒尾!」

「えー…職員室わざわざ行くの?」

「面倒くさがらずに行けよ、行ってくれよ!」

「でももう手遅れだって!」

「どの口が言ってんだ。諦めるなよ!」

「諦めたらな、試合終了なんだぞ!俺らバレー部は、先輩にそんなこと教わったかよ!最後まで諦めずに喰らいつくんだろ!?」

「っ、分かった、俺…行ってくるわ!」

「それでこそ鉄!」

「頑張れよ。喰らいつけよ!」



走って出て行った黒尾を見送るクラスメイトと愁と夜久。



「……まぁ、練習試合はマジだけどさ、俺らがボケに回るとツッコミ不足で収拾つかねぇな」

「なんとか締めに回したけど、やっぱ俺らはボケ側よりツッコミ側だな」



いやいや、お前ら2人も十分、ボケ側行けるぞ。ツッコミ側なら俺らクラスメイト全員がフォローするよ。なんていう生暖かい目を向けられていることなんて知らずに愁と夜久は黒尾が帰ってくるのを待つのだった。




「あ、帰って来た」

「お、本当だ」


教室に帰って来た黒尾は真っ直ぐ愁と夜久の元へ。




「愁、夜久」

「「…………」」

「すまん、やっぱ無理だった」

「「はい、アウトー!」」


バシバシッと2人1発ずつ頭を叩いた。









「はい、じゃあテスト開始」


紙をめくる音がする。シャーペンを走らせる音がする。





「はい、そこまで。後ろから集めてきてくださいね」


回収されたテスト用紙。濱ちゃんが名前が抜けていないか確認する。



「…うん、みんな出せてますね。じゃあ採点したらまた返しますね。次の授業は明後日なので、明後日返します」


じゃあ授業残り時間少し入りますね〜という声にみんなは机から教科書、ノートを取り出す。そこで夜久がコソッと話しかけてくる。



「ボソ) …なぁ」

「ボソ) ん?」

「ボソ) …テストさ、あれ実力?」

「ボソ) いや、あれは…普通じゃね?」

「ボソ) だよな。実力って感じの問題じゃなかったし」

「ボソ) 濱ちゃん…考慮してくれたのかも」

「単に(ひとえに)俺のおかげだな」



ゴンッ!!



「ん?どうしました?」

「全然、気にせず続けてください」

「何にもないので」

「そうですか?分かりました」

「「(ブッ…クククッ…!!)」」


愁、夜久からの横腹チョップによる攻撃で足を机に当て、痛さで体を丸める黒尾。振り返る濱ちゃんに何もなかったかのように返す2人。笑いを必死で耐えるクラスメイト。今日も平和である。

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