Novel
08

まさかだった。



「………」

「………」

「……、もっかい、すっか」

「…は、はいぃぃぃ…!」


ここまで、




「あ、!」

「ぅあ!」

「あぁ!」

「ぁいた!」



ドリブルが下手とは。




「マジか」

「…すみません」


完璧しょぼくれんぼになってしまった杉原。新入部員の1年で、タッパがある。バスケが好きで小さい頃から近くにあったゴールにシュートしては遊んでいたらしい。だから、シュートは得意。でもドリブルが苦手。超苦手。



「んー…」

「ははっ、悩んでんな、宮野」

「夜久ー…。他人事みたいに言ってさ…」



今は昼休み。黒尾は研磨に届け物をと言って1年の方に行き、夜久と愁は体育館近くで昼ご飯を食べていた。そこにたまたまバスケ部新入部員の杉原が通りかかり、愁の異名も知っててか、シュートを見て欲しいと頼まれたのだ。夜久に聞けば構わないと言うので見てやってた。シュートは問題ないから、ドリブルしてみろよと言えば、このザマだったのである。



「もしかしたら、レシーブめっちゃ苦手な新入部員が入ってきて四苦八苦するかもしれねぇぞ」

「今年の1年にはそんな奴居なかったけど?」

「来年だよ、来年。まだ後後輩できるの一回あるんだからあり得ないの事もないだろ」

「どーだかなー」



そう言っている夜久だが、来年、愁の予言(?)は当たるのだった。




「んあ?宮野何してんの?」

「おー、行平」

「お、夜久もいんじゃん。よっ!」

「よー、行平」

「……お前ら似たような返答してくんのな」

「あ?そうか?」

「そうだっけ?」

「超似てるわ。で、どしたん?」

「……」

「ん?」

「……適任者居るじゃん!」


愁は行平の肩を掴む。掴まれた本人はキョトン顏である。




「行平、杉原にドリブル教えてやって」

「……なして?」

「お前、シューティングガードじゃん。ドリブル得意じゃん」

「いやいや、お前もじゃん?」

「俺にはさ、他にすることがあるでしょうよ」

「……んまぁ」

「頼んだ」

「マジかよぉぉ…」

「まぁ、行平オカンみたいな感じだし、向いてんじゃない?」

「夜久に言われたら終わりだな、俺も」

「おいコラどういう意味だ」

「…てことで、杉原安心しろ!2年でレギュラー、おまけにドリブル得意な行平くんが教えてくれる。手取り足取り!」



愁は杉原に笑いかけ、その肩をポンと叩いた。オロオロとしていた杉原に、行平は仕方ないなと言った感じで杉原の元へ来る。


「2年の行平だ。まぁ、なんだ。ドリブル苦手なんだって?」

「はい…」

「主将様である宮野から、お前なら任せられる。お前を信用してるから頼めるんだ。って言われたから、手取り足取り教えてやるよ!」

「テメェなにでたらめ言ってんだ。いつんなこと言ったよ」

「まぁまぁ宮野落ち着いて!」

「今日の放課後一緒に特訓しよーぜ!」

「はい!」



画して、行平・杉原のドリブル特訓が始まったのだった。






次の日。体育館点検で朝練がなかったバレー部とバスケ部。なので、クラスが同じな黒尾、愁、夜久は席も近いことがあってか話していた。が…




「…朝から泣きつくの止めてくんないかな、行平くん」

「もぉ無理だぁぁぁ…無理ぃぃぃぃ!」

「どうしたんだ、行平の奴」

「多分、バスケ部の新入部員とドリブル特訓してあぁなった」

「へぇ…って、なんで夜久知ってんの?」

「昨日の昼休み宮野と居たから。その時に特訓すること決まったんだよ」

「なるほどな」


パック珈琲牛乳を飲みながら愁は対応している横で、夜久はパックのカフェオレを、前では黒尾がパックの牛乳を飲んでいる。



「下手過ぎた!予想超えた!上回った!!」

「そうかそうか」

「普通ドリブルしたボールで転けるか!?ドリブルのボールって飛んでくんの!?」

「お前ならやれるって」

「ポイントガードだろ、主将だろ、宮野!お前が教えてやれよ!」

「だから他にすることあるからそのまで手が回んねぇんだってば」

「お前主将だろー!?」

「普段主将主将言わねぇくせしてこんな時ばかり主将主将言ってんじゃねぇ!」

「主将ぉぉ…!!」


引っ付く行平を引き剥がす。


「ったく、あのな!1年の面倒見んのも先輩の役目だ!お前は周りから見てもトップのシューティングガードなんだから自信持てよ!」

「…宮野…」

「それとも何か。お前は人にもの教えらんないくらいにいっぱいいっぱいで自信のねぇ男か?」

「……」

「違うだろ。お前は人に教えんの上手いし、自信家だし、面倒見馬鹿良いだろ」

「…馬鹿は余計だっつーの。…しゃーねぇな!あいつは俺が受け持ってやる!んでもって、絶対レギュラー取らせてやんよ!」

「………粋がんのは良いけど、それでお前がレギュラー落とされるとかなんなよ。洒落になんないから」

「ならんわ!!」


ドスドスと、でも来た時とは違って自信満々いつも通りに戻った行平は教室を出て行った。



「本当世話やけんな」

「いやいや、世話上手すぎてお母さんですか。お父さんですか?」

「どっちでもないわ」

「上げんの上手いなー。宮野。勉強になるわ」

「近い未来来るであろう似たような後輩の為に?」

「あり得そうだからヤメロ」

「なに、なんの話」

「んー、レシーブめっちゃ苦手な新入部員入ってきたら、リベロの夜久が面倒見なきゃなんないなって話」

「それは夜久の役目だわ」

「んじゃ、ブロックめっちゃ苦手な新入部員入ってきたら黒尾が面倒見なきゃなぁ?」

「いや、俺研磨で手一杯」

「逃げんのかコラ」

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