Novel
03
キュッキュッとバッシュの擦れる音が響く。ドリブルの音。掛け声。走る足音。
「東野!カット!」
「はい!」
「ディフェンス!動きが硬い!」
「はい!」
「ナイシュ、近藤先輩!」
「おう!」
準備運動をし、柔軟体操。走り込みをしてからミニゲーム。
「速水、福岡がフリーだ!」
「はい!」
「行平回り込め!」
「うっス!」
最後の一点を決めたところでミニゲーム終了、休憩を入れる。この後はシュート練習に当てる。
「よっ、新主将」
「夜久」
「なんだかんださ、付いて行ってんじゃん。バスケ部の部員」
「最初はどうなるかと心配だったんだけどな」
「反感者なんかお前の性格知ったら居なくなるって俺言ったろ?」
「言ったけど、自分じゃそんな周りがいうような性格じゃないと思ってるし…」
「馬鹿だな、宮野。お前は良い性格してんだから心配するなよ。なんならずっと幼馴染のあの2人に聞いてみるか?」
「え、鉄と研磨?」
「そうそう。お、噂をすれば。おーい、黒尾、研磨!」
バレー部も休憩中であり、話しながらこちらに向かってきていた黒尾と研磨を夜久が呼ぶ。呼ばれた2人は顔をあげて2人を見る。
「あ?なんだ?」
「どうかしたの」
「お前らから見た宮野ってどんな性格?」
「俺らから見た愁の性格?」
「周りを良く見てる」
研磨が愁を見て言う。研磨の言葉には裏表がないから分かりやすい。
「後は、世話焼きだな」
「優しい」
「頼れる」
「有言実行」
「努力家」
「真面目」
「幼馴染大好き」
「それはテメェだろうが」
「愁も俺ら好きだろ?」
「研磨だけな」
「酷っ!あ、あと仲間想い」
ぽんぽん出てくるそれらに愁はだんだん顔が熱くなる。夜久に至っては、ほらな、という顔をしている。
「後は、「も、もういい!分かった!」えー、まだあるって」
「十分だし!」
「ここまで来たんだ、言わせろ、全部」
「まだあんのかよ!?」
「ある。山のごとくある。まずは…」
「だからもういいっつってんだろ!」
「いって!ネット越しに殴んなよ!」
言い合いを始める愁と黒尾を目の前に研磨と夜久は2人を視界に入れながら話す。
「あんだけ良いもん持ってんだからもっと自信持てよな」
「愁は昔からあぁだから」
「謙遜?」
「うん」
「謙遜しいっていうのも性格だな」
「あと、」
「ん?」
「バスケ馬鹿」
「……」
そのあと互いの監督から休憩終了の声を聞いてまた部活へと戻っていったのだった。
「朝練ここまで!水分補給して、授業中は寝るなよ!」
「「「「うっす!!」」」」
「じゃあ解散!」
「「「「お疲れ様でした!!」」」」
監督の掛け声でみんな解散する。流れてくる汗を拭いながら部室へと向かう部員達。
「宮野ー!」
「んー?」
「昼休みシュート練手伝ってくれよ!」
「シュート練?別に良いけど、熱心だなぁ…」
「へへっ、早く一人前になって、レギュラーになって、シューティングガードになりてぇの!宮野の指示で繋いだボールでシュートしたらぜってぇ気持ち良いぜ!」
「……」
「ん?」
「や、なんでもない」
良いチームメイトに恵まれたな、なんて言うと調子に乗るので心の内に秘めておくことにした。
制服に着替えて体育館を出れば黒尾、研磨、夜久の3人。
「あれ、待ってた?」
「どうせ行くとこ一緒だし」
「休憩の時言ってくれたら早く着替えてたのにさ」
「俺らもさっき話したから。んじゃ、愁も来たし行くか」
クラス発表の場へ行くと人人人。集り過ぎてなんじゃこりゃ状態である。だがその辺の高校生より頭一つ二つ飛び抜けている黒尾と宮野は難なく見れるので、1人見えない夜久の分も見る。研磨は昨日分かってるから先に教室に行った。
「んー…名前、どこだ?」
「あー…あ!あった!…お!…おぉ!」
「なんだよ黒尾。煩い」
「クラス発表ごときで何騒いでんだよ」
「ふっ、聞いて驚け。俺と夜久と愁。同じクラスだ!」
「「……えぇー」」
「え?なに?その反応。黒尾さん一緒じゃ不満?」
「不満ていうか、なぁ?」
「不満より、不安?」
「え、不安?」
「寝るんだろ?」
「ノート取らねぇんだろ?」
「あ、でも夜久いるから大丈夫か」
「いや、宮野の一言の方が効くって」
「「つーことで、寝んな黒尾/鉄」」
「…はい」