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柳宿と付き合っている設置






「……は?」

「だから!睡蓮にお見合い話が来てるの!」





それは朝のことだった。
朝ごはんも食べてお腹も気持ちもるんるんるん!
今日は何して過ごそうかなと廊下を歩く。たまたま星宿の執務室の前に差し掛かる。隙間が空いていたから中を覗いてみるとそこには睡蓮の姿が。

何してるのかな?気になるな。よし聞き耳たてちゃおう!

ということで、扉と扉の隙間に耳をくっ付けて聞く。




「でも…私には…」

「分かっているんだ。お前と柳宿の関係は」



柳宿?なんで柳宿が出てくるんだろ。




「しかし、相手方も一度でいいから会って話をしてみたいと聞かなくてな…。柳宿のことも話したが、なかなか引き下がってはくれぬのだ」

「…困りましたね」

「会って話すだけで構わない。もし言い寄られでもすれば逃げればいい」

「しかし、それでは陛下の御立場が…っ」

「断ったところで国にも私にも特に影響は及ばん。気にすることはない」

「…分かりました。陛下を困らせるわけにはいきませんので、その話お受けいたします」

「助かる。急な事だが今日の昼、相手側がこちらに来てくださる」

「では、お昼に居間に行かせていただきます」


「あぁ。しかし見合い話など持ってくるとは…」




み、み、み、見合い話!!!??

睡蓮には柳宿が居て、柳宿には睡蓮が居るのよ!!?
どこの輩よ!あの2人の愛を引き裂こうとする奴は!
そんなことする奴がいたら、この朱雀の巫女である美朱様が許しゃしないわ!!

兎にも角にも柳宿に知らせなきゃ!!



「柳宿ーー!!大事件大事件大事件ーー!!」

「なぁによ、大きな声出して。宮廷内に響き渡ってんじゃないの」

「大変なの!本当に!地球に火星がぶつかって水星が後を追いかけてくるほどに大変なの!!」

「…なんなの」



とりあえず落ち着けと美朱の肩に手を置く柳宿。荒い息を落ち着かせ、拳を握り、グワッと柳宿を見る。


「睡蓮にお見合い話が来てるの!!」





そして、上に至るのであった。





「…睡蓮に、見合い…話…?」

「本当よ!さっき星宿の執務室の前を通ったの!その部屋に睡蓮が居て、何話してるのか聞き耳立ててたら今日の昼!お見合いをするって話をしてたのよ!!」



見合い、誰が。睡蓮が?誰と、どこのどいつと。

プチーンと柳宿はキレた。




「このあたしを差し置いて…、いい度胸じゃないの…っ。まだこっちは告白すれどもプロポーズはまだしてないってーのに…っ!!」

「柳宿!あたし睡蓮と柳宿が結婚して幸せそうに暮らしてることしか想像出来ない!!だからこの見合い話、何としてでも無き者にしなくっちゃ!!」

「あったり前よ!!この柳宿様がいる限り何処の馬の骨か知らないパッと出の奴にあたしの睡蓮は渡さないわ!!」




2人はグッと手を繋ぎ今ここで今日の昼に行なわれるであろう見合い話を無きものにする同盟が作られたのだった。







そして、お昼になった。



「…なーんで俺らまで草叢に隠れてんだ」

「気になんないの!?鬼宿!睡蓮がお見合い話だよ!?」

「いや、確かに気にはなるけどさ、なにもこの人数で集まらんでもいいだろうよ…」



草叢に隠れているのは同盟発案者である美朱、柳宿。そして鬼宿に翼宿、張宿、星宿だ。
井宿は太一君のところへ、軫宿は隣の村に診察へ行った。


「しっかし、睡蓮に見合い話持ち込んでくるとは相手さんもアホやのー」

「睡蓮さんにはもう柳宿さんがいるのに、今更間に入ったって勝ち目ないですよ」

「いや、本当にすまなかった、柳宿。お前達が愛し合っているのは知っていたのだが、相手側もなかなか引き下がってくれなくてな…」

「星宿様が悪いのではありませんわ!悪いのは全てあの男…っ!わざわざ星宿様があたしの名前を出したにも関わらず睡蓮に会いたいなんて戯言を吐かすあの男が…っ」


目がマジな柳宿を鬼宿、翼宿は自分に向けららている言葉じゃないのに背筋に冷や汗を掻く。
なんて命知らずな男。睡蓮に手を出したが運の尽き。



「あ!睡蓮が来たよ!」


みんなの視線は廊下から姿を現した睡蓮へ。





「ぅわ〜…、睡蓮すっごく綺麗…」



色とりどりの淡い花の絵が散りばめられた服。長くウェーブがかかった髪は緩く纏められ、襟足に流れる少量の髪の毛が艶かしい。


柳宿の目には少し俯き加減で歩く睡蓮しか目に入らなかった。それと同時にあんなに綺麗な睡蓮を自分以外の男に晒さなければならないことに苛立ちを感じた。


居間にはすでに相手側の男が座って待っている。
緊張しているのか、どこか落ち着きがない。



「なんや、特別イケてる訳でもあらへんやん」

「こんな言い方はいけませんが、普通ですね…」

「柳宿の方がよっぽどいい男だぜ」

「醜くはないが、睡蓮には相応しくない」

「あたし、あの人の目にあんな綺麗な睡蓮が映るのやだ」

「全く同意見よ、美朱」




部屋に着き、足を踏み入れる睡蓮。睡蓮の姿に気付いた相手側もバッと顔を上げる。途端に顔を真っ赤に染め、まるで茹でタコのようだ。



「お初にお目にかかります。光の守護・一等星の睡蓮と申します。この度はご足労頂きまして誠にありがとうございます。どうぞ、睡蓮とお呼びください」

「あ、わ、私は洪磊(こうらい)と言います!こちらこそ、この話をお受けいただき感謝いたします!!私のことも洪磊と呼んでください!」








「ガッチガチやな」

「そりゃあんな美人目の前にして緊張しない男いるか?」

「たまちゃん…」

「鬼宿…」

「ひっ!い、いや!俺には美朱が居るから関係ないけどな!!」











「あの…、睡蓮さんは普段何をされているんですか…?」

「朱雀の巫女である美朱様のお世話をしたり、幼き頃より連れ添った幼馴染とお話ししたり、陛下のお仕事のお手伝いをしております」

「そうなんですか。忙しいんですね。僕なんか、毎日同じような繰り返しで特に変わったことなんてなくて!」

「何をなさっているんですか?」

「品物の輸出や輸入関係を」

「そうでしたか。しかし、そのお仕事もとても大切なものです。そのようなお仕事をされている方がいらっしゃるからこそ都は栄え、物に溢れているのですから」

「いっいえ!そんな…っ!」









「あの男照れてんぞ」

「自分だけ特別やーとか思ってんちゃうか」

「睡蓮は誰にでも優しいのよ!勘違いしないでほしいわ!」







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