Short | ナノ

生存設定
みんな仲良く紅南国で暮らしている



睡蓮は庭の花に水をやっていた。花は上を向き、綺麗に咲いている。
空を見れば青く透き通っている。



「今日もいい天気ね」



「睡蓮」


振り向けば手に何かを持った柳宿。





「おかえりなさい。帰ってきてたのね」

「朝だったから空いてて」

「何を買ってきたの?」

「これよ」



見れば有名どころのお茶菓子とお茶っ葉だった。



「鳳綺のところに子供産まれたでしょ?お祝いまだだったから持って行ってあげようと思って」

「それはいいわね。なら、私も何か用意しないと」

「鳳綺は確か睡蓮の手作りお菓子が好きよ」

「なら早速作って、昼から鳳綺の元に尋ねましょう」








出来上がった老婆餅を包み、宮殿へ行くためにそれなりの格好をする。
玄関に行けば柳宿が待っていた。



「おまたせ」

「じゃあ行きましょうか。それ持つわ」

「いいのに」

「いいから」








「それ、前にあたしが見繕った服?」

「そうよ。着て行く機会がこういう時しかあまりないし、せっかくだし着ていこうと思って」

「似合ってるわよ」

「ふふ、ありがとう。柳宿もその服よく似合ってるわ」

「そりゃ睡蓮が選んでくれたからね」

「なぁに、それ、ふふ」




話をしている間に宮殿に着いた。




「さぁて、とりあえず門番に尋ねましょうか」

「そうね」



門の近くに立っていた門番に話しかける。



「すみません」

「はい」

「皇帝陛下のお妃様、鳳綺様にお逢いしたいのですが」

「失礼ですが、どちら様でしょうか」

「元朱雀七星士の1人柳宿と、元光の守護・一等星の睡蓮よ」

「柳宿様と睡蓮様でいらっしゃいましたか!どうぞ、ご案内いたします」




中に通され案内される。中も変わっておらず、昔のままだ。





「変わらないわね」

「本当に。1年も経つのにね」


装飾も色合いもあの頃のまま。懐かしい。





「こちらにございます」

「ありがとうございます」

「では失礼いたします」


鳳綺の部屋の前に着き、コンコンとノックする。中から声がする。





「久しぶり、鳳綺」

「まぁ!康琳に睡蓮!会いたかったわ」

「私もよ、鳳綺。随分会っていなかったものね。元気だった?」

「えぇ、お陰さまで」

「皇太子様も元気にしてる?」

「すくすく育ってくれているわ。最近は立つようになって、陛下が喜んでいたのよ」

「陛下らしいわね」

「本当。あ、そうだった鳳綺、これ遅くなったけどお祝い。出産祝いまだだったから」



柳宿が持っていた袋を鳳綺に渡す。



「まぁ、そんな気を使わなくたって良いのに」

「気にしないで、したかっただけなの。こっちは私が作った老婆餅よ」

「睡蓮の作ったお菓子は絶品だから大好きよ、ありがとう。そうだわ。折角だからお茶でもしましょう」

「なら私が準備するわ。柳宿と鳳綺は座っていて」

「そんな、私がやるわよ?」

「いいのいいの。座ってて」



睡蓮は後宮に仕えていた頃、よくお茶を用意したりしていた為、こういうことには慣れていた。
手慣れたようにお茶を用意し始めた。




「睡蓮はいつもこうなの?」


柳宿と鳳綺は椅子に座りながら睡蓮の後ろ姿を見ていた。せっせと動くその姿に鳳綺は柳宿に尋ねるのだった。




「まぁね。あたしが手伝うって言ってもいいから座ってて、疲れてるでしょって」

「睡蓮らしいわね。もう一緒に暮らし始めてどのくらい経つの?」

「1年くらいかしらねー。戦いが終わって、紅南国が平和になってからだから」

「そう」




「お茶入ったわよ」

「ありがとう」



それぞれの前にお茶を置き、お茶菓子も真ん中に置く。
やっと睡蓮が椅子に座り、早速3人は話し始めた。




「でも、この紅南国が平和になったのも貴方達のおかげだわ。命をかけて戦ってくれた、貴方達の」

「私達は私達のすべきことをしただけよ」

「そうよ。こうして平和になってくれただけであたし達のやってきたことは無駄じゃなかったんだって分かったし」

「それでもよ。護る人がいなければ護るものも護れないもの。みんな貴方達に感謝しているわ。無事に、芒辰を生むことが出来たのも…」



後ろでぐっすりて寝ている芒辰。星宿と鳳綺の子供である。未来の皇帝陛下。






「芒辰様はお幾つになられたの?」

「一歳よ」

「もう一歳になるのね〜」

「子供の成長は早いわ。そうだ、貴方達はどうなの?」

「え?あたし達?」



鳳綺はお茶を一口飲んでそういう。睡蓮と柳宿もお茶に口を付ける。




「睡蓮と康琳の子供の予定は?」

「「ぶっ」」

「あら…」



飲んでいた途中に言われた為二人してお茶を吹き出す。同時に咳き込み、そんな2人を鳳綺は口に手を当てて見ていた。



「ゴホッゴホッ…っいきなり何言い出すの、鳳綺!」

「ゴホッ…そ、そうよ!」



2人は顔を赤くして言葉を放つ。



「でも、そろそろ二人の間に子供が出来ても不思議じゃないわ。一緒に暮らしているんでしょう?」

「そ、そうだけど…っ、でも、あたしと睡蓮まだ結婚だって…っ!」

「あら、まだしていなかったの?2人は仲が良いからもう結婚しているものだと思ってたわ」

「も、もう!鳳綺!」

「ふふ、でも康琳も大変ね。こんなに可愛い睡蓮が恋人だといろいろ手が伸びてくるんじゃなくて?」

「そうなのよね〜。この間なんてちょっと睡蓮を一人にしたらすぐに男が寄ってきて!」

「あれは道聞かれたから答えてただけよ?」

「睡蓮は気付いてないかもしれないけど、あの目よ!目!人の恋人舐めるように見てたのよ?一発ど突いて正解だったわ」

「ふふ、睡蓮は昔から人気があるものね。後宮内でもみんな貴方をとても慕っていたのよ」

「そうなの?」

「駄目よ鳳綺、この子自分のことにはすっごく鈍いから」

「そうみたいね」



きょとんと首を傾げる睡蓮に柳宿と鳳綺は顔を見合わせて笑った。こうしてお茶をして話して笑うと、まるで昔に戻ったようだった。
あの頃は毎日のようにお茶をし、話すことが日課のようだった。
戦いが始まり、そうもしていられなくなり、柳宿と睡蓮は後宮を出て朱雀の巫女と他の朱雀七星士と旅に出た。
鳳綺はただ無事を祈ることしかできず、悔しい思いをした。
全てが終わり、この紅南国へ戻ってきた2人を見たとき、涙を流して抱き着いたのを覚えている。
生きている。戻ってきてくれた。無事に、この紅南国へ。嬉しかった。
そんな鳳綺を睡蓮と柳宿は優しく抱き返し背中と頭を撫でた。
ただいま、と言うと、鳳綺も泣き笑いながらおかえりと返したのだ。





「またこうして2人と話すことができて良かったわ」

「私もよ。とても懐かしかった。後宮に居た頃は毎日のようにしていたから」

「鳳綺の部屋に集まったりあたしの部屋に集まったりしてね」

「またいつでも遊びに来てちょうだい。歓迎するわ」

「ありがとう。ぜひ伺わせてもらうわ」

「今度は5人で話せたらいいわね」

「5人?」

「芒辰と私と睡蓮と康琳と2人の子供とよ」

「えぇ!?///」

「ちょ、鳳綺!」

「ふふ。ねぇ、康琳、睡蓮。私達、ずっと親友でいましょうね」



右手で柳宿の手を、左手で睡蓮の手を握り言う。
そんな鳳綺に2人は握り返した。



「もちろんよ、鳳綺。私達はいつまでも親友よ」

「あたし達の絆は永遠に切れないわ」

「2人に出会えてよかった」

「私も、鳳綺に出会えてよかった」

「あたしも」



ふふ、と笑い合い3人は幸せな時間を過ごした。
その姿は昔の三人の姿に酷似していた。


END




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -