美「「ペリー」「黒船来航」1853年!「日米和親条約」1854年に!「日米修好通商条約」「鎖国の終わり」1858年!「尊王攘夷運動」「井伊直弼…」
パコーンッ
柳「こんな朝っぱらから大声で騒がないでよっ!あんたの静かなのって食べてる時だけね!」
美「しょーがないもん、勉強ってのは声に出したほーが覚えるんだよ!こー見えても受験生なんだから!」
柳「なーんかよくわなんないけど、疲れてんのよォあたし達は!張宏で軫宿を見付けてから七星士の残り1人探してここんとこ4、5日歩き回ったけどその玉はちっとも光らないしねェ。壊れてんじゃないの?」
美「ダメよそんな弱気じゃ!!あと一人じゃない!NEVER GIVE UP!!」
柳「ネバーじゃなくて寝てーのよ。それに睡蓮が起きちゃうでしょーが」
柳宿の隣ではぐっすりと寝入っている睡蓮。穏やかに寝息を立てているその姿は深い眠りに入っているようだ。
そこに笛の音が聞こえる。しかし聞こえるのは美朱だけのようだ。
美「…笛?ねぇねぇあれ笛の音じゃない!?なんでこんなとこに…」
柳翼「うるさいっ!!」
「ん〜…」
美「はい…;;」
美「…ねー、本当だってば。笛の音がしたんだよ」
翼「おい軫宿、睡蓮、気ィついたか?」
首を振る軫宿。
「いいえ、分からなかったわ」
柳「虫の声と間違えたんじゃないの?」
誰も信じてくれずむぅとしてしまう美朱。ただ一人、星宿だけは美朱が聞いたのなら本当に笛だったんだろと信じた。
しばらく歩くと一つの村が見えてきた。その村には見覚えかあった。
翼「おっ、なんや村が見えてきよったで」
美「あれ?…鬼宿の村だ!」
「本当だわ」
柳「あらぁ!本当久しぶりねェ!」
星「鬼宿の?」
美「ここで井宿を見つけたんだよ!鬼宿の家族にも会ったんだよ!妹や弟や病気のお父さん…」
そこで美朱は何か閃いたのか、近くにいた軫宿の腕を引っ張り走り出した。
美「そーだ!軫宿ちょっときて!」
軫「?」
二人が走って去っていくのを見る他の四人。
翼「どないしたんや?」
星「さぁ…分からぬ」
「もしかして…」
柳「睡蓮分かるの?」
「鬼宿のお父さんはご病気だったでしょう?だから美朱様は治癒能力のある軫宿を連れて鬼宿のお父さんのところに向かったんじゃないかしら」
柳「あぁ!なるほどね〜。じゃああたし達も鬼宿のお父さんのところに向かいましょう」
四人も再び足を進め、鬼宿のお父さんの元へ歩き出した。
着けば軫宿が鬼宿のお父さんの病気を治し終えたところだった。
家に入るのと同時に中から忠栄が出てきた。
忠「あ!守護様!」
「こんにちは。お邪魔してもいいかしら?」
忠「はい!どうぞ!今から魚を取ってきますので、中で待っていてください」
「ありがとう」
中に入り、見ると鬼宿のお父さんはすっかり病が治り顔色も良い。妹、弟たちも元気に暮らしているようだ。
そんな中、星宿はあまりの家の質素さに愕然としていた。
そして心にもう一度こんなどん底の生活の庶民を救うために皇帝として良い政治をしようと決心したのだった。
そんな中、玉蘭がじーっと星宿を見る。
星「どうした、子供」
玉「姉ちゃん兄ちゃんのお嫁さん?」
星「…私は男だ」
玉「だってあんまりキレーだから」
星「(くっ…。貧しくてもとても正直で良い子だ!)」
その姿を翼宿は呆れて見ていたとか見ていなかったとか。
そこに忠栄が外から帰ってきた。
忠「お医者様!魚を取ってきました!すぐ料理しますから…」
池の水で髪が下りたその姿は鬼宿にそっくりだった。まさしく兄弟。
美「た…鬼宿!?」
美朱はそのまま忠栄に抱き着いてしまう。しかし、忠栄は腕をバタバタとさせ違うと言う。
忠「違います!忠栄です!」
星「…流石に兄弟だな。髪をそうすると似ている」
「えぇ、本当に。瓜二つだわ」
柳「河から取ってきたの!鬼宿の稼いだお金は?」
忠「ダメですよ無闇に使っちゃ!残高を計算しつつ、よーく考えないと!」
柳「お金に細かいとこまで似てるわ。ミニたま」
「しっかりしてるのね。偉いわ。それ料理するんでしょう?手伝うわ」
忠「そんないいですよ!」
「一人より二人の方が早いわよ。さ、台所に行きましょう!」
睡蓮は忠栄の背中を押すと台所の方へ消えていった。
忠「すみません、手伝ってもらっちゃって…」
「気にすることないわ。私料理が好きなの。最近はしてなかったから楽しいわ」
忠栄の隣で包丁を持ち魚を調理する。肝を取り、水で洗う。
「忠栄くんもこうして家のお手伝いをしてるのはとても偉いわね」
忠「そんな…。家族のために役に立ちたいだけで…」
「そう思う心が大切よ。そしてそれを行動に移すことがもっと大切。貴方はそれが出来ているんですもの。胸を張っていいのよ」
頭を優しく撫でてやると忠栄は顔を赤くし、俯いた。それにどうしたのかと尋ねる。
忠「その…あまり頭を撫でられたことがなかったので…なんだか照れくさくって…」
「ふふ、そうなの。私もね、鬼宿のように貴方くらいの弟がいるのよ」
忠「そうなんですか?」
「えぇ。今は家で一人でいるから、寂しい思いをさせているんだけれど、帰ったら一番に会いに行ってあげようと思っているの」
忠「きっと守護様の帰りを待っていると思います!帰ったら名一杯甘やかしてあげてください」
「そうするわ。さて、魚が焼けてきたわね。みんなを呼びましょうか」
忠「はい」
忠栄にみんなを呼んでもらって、睡蓮は魚をお皿に盛っていく。
わらわらとみんなが集まってきて食事をするのだった。
その姿を木の陰から誰かが見ていた。
「…見つけたぞ、朱雀の巫女」
夜も更けてきた。
柳「美朱、早く寝なさいよ。明日っからまた七星士捜し頑張んなきゃいけないんだなら」
「あまり窓の近くにいてはお体に触ります」
美「あれ…コウモリだ」
バタンっっ!!
柳宿は思いっきり窓を閉めた。
柳「万が一入ってきたらどーすんのよ、気味ワルイ!」
美「ホウモリっれひろおろうろ?※コウモリって人襲うの?」
「普通のコウモリは寄っては来ませんよ」
柳「そうそう。あれは人間に聞こえない超音波を出してそれが物に当たって跳ね返ってくるのを聞き分けて飛んでるの。それが狂わない限り大丈夫よ」
そういい柳宿は布団の中に入る。睡蓮も美朱に寝るように促して自分の布団の中に入った。
夜、みんなが寝静まった時。美朱は一人何かを聞きつけて目を開ける。それは朝にも聞いたあの笛の音だった。
美「笛…またあの笛だ!柳宿!睡蓮!起きて、ほら!この曲…」
柳「…んー、何よぉ、何にも聞こえないわよぉ」
「笛…ですか?」
美「そうなの!あたしだけ…?」
しばらく聞いていた笛の音がピタリと止む。美朱はゆっくりと部屋の扉を開ける。開けた途端コウモリが一斉に襲ってくる。
美朱はこのままここにいては眠っている柳宿と睡蓮にまで被害が及ぶと感じ部屋から走った。
睡蓮は美朱の声に目を覚まし扉に目を向ける。閉まっていたはずの扉が開いており、美朱の姿が見当たらない。
「美朱様…一体どこに…」
外に出て辺りを見渡す。ちょうど隣からも星宿と翼宿が出てきた。
星「どうしたのだ!」
「それが、美朱様が外に出たようで…っ」
翼「なんやて!?」
星「すぐに後を追うぞ!」
「はい!」
林の中を走っていけばコウモリに襲われている美朱の姿が。
「美朱様!!」
星「美朱!!翼宿!頼む!!」
翼「殴るのは得意やーっ!!」
そう言って鉄扇でコウモリを叩きつける。が、そうではない。元に星宿もそうではないと叫んでいる。
翼「まちごぉたぁ!!コウモリを焼き払え!!「烈火神焔」!!」
炎で焼き払おうとするも向かい風で自分の方に炎が返ってくる。
「もう!何やってるのよ!!」
翼「風が急に吹いてきたんじゃー!!」
「私がするわ!」
睡蓮は糸を出し、器用にも1匹1匹捕らえていく。しかし数が多い。
「ダメだわっ、全てを捕らえきれない!」
その時、コウモリがピタリと動きを止める。そして自らが木にぶつかって行き、落ちていく。
「!?」
翼「な、なんや、一体…」
星「コウモリが、自分から…」
美「…ぶつかっていってる!」
笛の音が聞こえる。緩やかな曲。一人の男が林の木々の間から出てくる。横笛を吹きながら。
コウモリを操っていた術師はその音に耳と頭をやられ、木から落ち、死んでしまった。
美「あなた…だったの?あの笛の音…」
「この笛の音で…「気」を送り込んで狂乱させました。もう…大丈夫…」
その男はふらりとその場に倒れる。
「大丈夫!?」
星「しっかりしろ!」
たまたま破れていた服の隙間から一つの文字が見えた。
そこには「張」の文字が。
美「これは…」
朱雀七星士!!
張「俺は…張宿と言います。歳は15…。この間までこの近くの村に住んでいたけど、倶東の軍に襲われて…」
星「焼き出されて一人生き残ったのか!」
「それでこんな怪我を…っ」
翼「もう大丈夫や!とりあえず鬼宿んちに戻って…」
これで、やっと最後の七星士の一人、張宿が見つかった。
美朱は思った。これで鬼宿を迎えに行ける。親友である唯とも元通りになると。
「美朱様、良かったですね。これで全てが揃いました」
美「睡蓮…っ!うんっ!うん!やっと…やっとみんな揃った!」
朝になり、みんなは紅南国へ帰るために鬼宿の家を出ることになった。
美「じゃあ皆さん元気でね!」
親「巫女様、七星士様方、守護様…、どうもありがとうございました」
柳「なんだか朱雀七星士が全員揃ったなんて信じられませんわね」
星「うむ。でも良かった…」
そこに美朱のスカートをぎゅっと握る結蓮がいた。
結「姉ちゃん行っちゃやだ!!」
美「結蓮ちゃん…」
忠「こら結蓮!巫女様に失礼じゃないか!」
結「だって姉ちゃん兄ちゃんのお嫁さんだもん!だからずーっと一緒にいるんだもん!」
忠「結蓮!離れるんだ!」
結「やだやだやだ!」
その様子を見かねた張宿が笛を取り出し、音を奏でる。その音を聞いた結蓮は瞼が落ち、眠ってしまった。
美「ぎゃーっ!結蓮ちゃんが!!」
翼「わーーっ!!アホかーーっ!!脳乱させてどないすんやーーっ!!過激なやっちゃな!!」
睡蓮結蓮の顔を覗き込む。
「…結蓮ちゃん、寝てるわ」
美「あれ、本当だ」
睡蓮と美朱の言葉にがくりと倒れる翼宿。
張「今のは催眠効果のあるきょくです。きっと今いい夢を見ていると思います」
柳「へぇ…そんなことも出来るのね〜」
張「はい」
そこに睡蓮の側へ誰かが寄ってくる。
忠「あの…守護様…」
「? あら、忠栄くん、どうしたの?」
忠「これ…貰ってくれませんか?」
渡されたのは綺麗な石で作られた腕輪。これは中国古来から伝わる腕輪念珠だ。
忠「守護様が…、お怪我やご病気などしないよう願いを込めて作りました。この先、何があるか分かりません。こんな物ですが…御守りにと思って…」
照れるように、少し顔を赤らめて睡蓮に向けて手渡すその腕輪。
睡蓮は驚くが、嬉しそうに笑う。
「ありがとう、忠栄くん。この御守りがあれば、私はきっと救われるわ。…とても綺麗な石ね…、大切にするわ」
忠「どうか、お元気で」
貰い受け、腕に早速つけて忠栄に見せる。忠栄も嬉しそうに笑った。そんな二人の後ろ姿を他のみんながじーっと見ていた。
翼「…なーんや、ええ雰囲気やん?」
軫「腕輪をプレゼントしているな」
星「あの鬼宿の弟、睡蓮が好きなのだろうか…」
美「どーするぅ?柳宿〜。ライバル現れちゃったね!」
柳宿をみんなで囲み、口々に言う。言われている本人はその端正な顔を歪める。
柳「…あんな小さな子に妬いてどうすんのよ」
翼「とか言いつつ?拳を握っておられますが?」
ドカッバキッ!!
柳「ふん!」
美「…余計なこと言わなきゃいいのに…」
星「学習しないな…」
軫「あとで治してやろう」
翼「なにも…図星やからって…こない殴らんでも…」
柳「なんか言った!?」
翼「いや…なんでも…」
美「じゃあまたね!みんな!」
結「姉ちゃん!またねー!」
「お世話になりました」
忠「いつでもまた来てください」
一行は紅南国へと足を進めたのだった。
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