透明で優しい君の嘘


俺には親友が三人いる。普通親友は一人なんじゃないかって?そんなちっさいこと間に受ける俺ではない。大事だって思う奴が三人いて、そいつらがみんなして一番だったらそれはもう俺にとっての親友だ。今更普通の友達だとかは言えない。俺達は親友なんだ。恐らく約二人を除いてそれには大きく賛同してくれることだろう。あいつはそういう奴だ。しかし残る二人は…多分内心では頷いて表面でははいはいと遇らう感じだろうな。俺には分かる。あいつらは分かりにくいとか言われているようだが案外分かりやすい。

そんなあの二人は今日も変わらず機嫌が良い。だからと言って普段は悪くて仏頂面で、愛想の欠片も無いんだとか。別にそういうことじゃない。まぁ片方はたまにそういうこともあるけども。

話が逸れた。つまり此処最近、と言っても細かく言えば此処一、二週間くらい。二人からは何故か幸せなオーラが目に見えてはっきりと分かる。他がどうかは分からない。俺は二人との付き合いが長いせいでなんとなく察せられてしまうのかもしれない。

だから多分花岡の奴も気付いているんだろうなとも思うが、あいつは俺より能天気な奴だから少し危うい。言われて気付くか、薄々気付いてたかのどちらかだ。でもなんだかんだあいつは柴崎ラブなので柴崎が笑ってればなんでもええねん!みたいなところがある。じゃあ烏間はラブじゃねぇのかよと過去に尋ねたことがあるが、その時はえ?お前何言ってんの?という顔をされた後に烏間も好きに決まってんじゃーん!と思いっきり遠慮もなく背中をゴツく叩かれた。正直あの時のあの痛みは忘れられないので出会う奴には花岡の拳は結構なもんだと忠告をしている。これは意地悪じゃない。優しさだ。



「(ま、別に俺はあいつらが仲良いならなんでも良いけどな)」


花岡とおんなじ理由だ。俺も烏間と柴崎のことが大好きだ。あの二人が笑ってんならそれは俺らの幸せであるし、あいつらも俺らが笑っていることが幸せだと思っている。思ってくれていると思う。思ってくれているはずだ。やばい。段々自信が無くなってきたから今度柴崎に聞いてみよう。



「百面相してるね」

「してねぇよーだ」

「そう?可笑しな顔してたけど」

「可笑しな顔ォ?どんな顔だよ」

「烏間が訝しげにするくらいの顔」

「通常運転やないかーーい!」


俺がもう温くなった缶コーヒーを様になるよう飲んでいれば柴崎がひょっこり顔を覗かせてくる。俺が知る限り29歳の成人男性にひょっこりなんていう効果音が似合うのはこの男くらい。そんなこいつは今日も今日とて色白で、過去そこを女のようだと話した日には顔に似合わず重い拳を鳩尾に入れられた。あれは本当に痛かった。

柴崎の手にも何かが持たれている。しかし珍しくそれは缶コーヒーではなくスポーツドリンク。そういえばここ最近気温が上がってきて、それに伴い烏間の過保護具合も例年通り上がってきたんだったか。だからきっとこのスポーツドリンクも烏間がこいつに持たしたに違いない。



「それ烏間か?」

「え、なんで分かるの」

「むしろ何で分からないと思った???」


言っておくが此処防衛省で烏間が自ら世話を焼きたがる相手なんて何処を探しても柴崎しか居ない。隣によいしょと腰掛ける柴崎の横顔は相変わらず整っている。おんなじ男か?などと疑いをかけてしまいそうになるもそんなことを口に出した日には…言いたくない。やめよう。



「だって志貴ちゃん自分でそんなの買わねぇじゃん」

「んー…まぁね」


こいつは顔に似合わず、…いや、うん、そうだな。顔と見た目の雰囲気に似合わず、柴崎は色々と頓着がない。まず自分の容姿に興味がないし、綺麗だ整ってるだなんだ言われても返しは軽い。例えば目上とか、相手が敬語で話す相手ならそうですか、とか。あまり興味がないんです、とか。結構ざっくり切っている。あとは食事関係とか、こういう少し暑くなってきたくらいなら別に水でも良いや〜みたいなところとか。別に全てに於いて無頓着だってわけではないけども、一割二割はものによって無頓着なところがこいつにはある。

俺はそういう完璧でない柴崎が好きだし、抜けてるこいつは男の俺から見てもかわいいと思うからこいつはこれで良いと思っている。一応念の為に言うがかわいいって決して変な意味じゃないからな。普通に、親友として、こいつはかわいい面もあるんだぞって。それだけだ。



「烏間がさ、飲め飲めって口煩くて。あいつ昔っからこういうところお母さんみたいだよね」


それからく、と。一口スポーツドリンクを喉へ通す柴崎を見ながら俺は思った。あいつがお母さんになるのはお前にだけだっちゅーのって。あいつのオトンちっくな姿は何度も見たことあるけどおかんちっくな姿は正直柴崎に対してでしか見たことがない。なのにこいつは参るよね〜とか言って笑っている。ぶっちゃけ笑いたいのはこっちだわ。



「そりゃあ烏間にとっちゃあ柴崎は一番だから仕方ねぇよ」


って、そんなことも今更かと思う。別に俺らに対して冷たぁいとか、酷ぉいとか。そういうんじゃない。烏間はあぁ見えて優しいし面倒見も良いし、だから俺も花岡も良く面倒を見てもらった。いやぁその節はって感じ。でもやっぱりそれでもあいつの中の一番って口に出さなくても見え見えで、烏間の視線の先には必ず柴崎が居る。



「だからちっせぇことにも気が行くんだよ。昔から今もな」


いつからかなんて忘れたが、烏間は俺らの中で一番に柴崎の変化に気付ける目を持っていた。正直それを羨ましいと思ったし、俺も烏間とは違った方法でこいつの何かになれたら良いなとかも思っていた。恥ずかしいから絶対言ってやんねぇけどな。それで、そう。俺も花岡も悶々考え込むとかすんげぇ苦手で、頭ん中がすぐにこんがらがってくる。良く考えるとか、多分そうだな…十分持って良いところ。それ以上は考えてるフリして放棄して寝てる。

あ、また話がずれた。だからその、そうなんだよ。一回だけ俺は烏間に相談、みたいな愚痴、みたいな相談をしたことがある。勿論そのことを柴崎は知らない。なにせこいつのいないところを狙って俺は烏間の腕を引っ張ったんだから。



「…赤井って烏間のことよく見てるんだね」


そんなびっくりしたーみたい顔するのやめてって思うけど思うだけで止まらないのが俺なので口に出して言ってしまった。正直者は辛いぜ。


「てかなになに?志貴ちゃん嫉妬?俺が烏間のことよく見てるからって嫉妬か?」


話は戻して、過去に一度。俺は烏間にあることを話した。お前が柴崎の変化に気付けて、それであいつの背中を押してやれるように、俺も何かしてやりたい。烏間のようにすぐには気付けねぇし、烏間みたいに良いことも言えねぇ。だから俺が出来ることで何かしてやりたいけど何が良いか分かんねぇ。って。そうしたらあいつ、めっちゃクソ笑ってた。あんなに笑ってる烏間は正直柴崎にも見せてやりたいくらいで、座って話してたからっていうわけでもないけどあの時のあいつは腹を抱えていた。大きく声を出すわけでも、俺や花岡みたいにあっちこっちバンバン叩くこともしないで、声を殺すようにして笑う。

それでその時、あいつはこう話していた。



───「お前にはお前の役得があるだろう」

───「役得?」

───「俺はお前のように馬鹿騒ぎは出来ない」

───「おいコラ」

───「良いから聞け」



「っふふふ、どうしてそんなことで嫉妬するの?嬉しいんだよ。そうやって烏間のことを見てくれている人がいることに」



───「あいつはお前のその笑ってしまうくらいの能天気さに救われているはずだ。底抜けだからな。お前も、花岡も。俺には無い良さだ。…そうだな。赤井が俺を羨むように、俺もそこだけは羨ましく感じているのかもしれない」



あんな風に言えるあいつを俺は格好良いと思ってしまった。いや、まぁ、烏間はかっけぇけどな。実際。顔も中身も。言わねぇけど。一生言ってやんねぇけど!



「でもそんなに烏間って俺のこと気に掛けてる?」

「はぁぁぁぁ〜〜???ちょ、え、はぁ?なん、えー…もう今更だわ…今更過ぎて…」


脱力感が一気に襲ってくる。なんだこれは。なんだこの子は。いやこの子って俺。29歳にこの子って……もうええわ!この子でいいわ!!



「お前気付いてねぇの?」

「いや…、気付いてないわけじゃ、ないけど…」

「ないけど?」


その先を促すよう言えば、少しの口籠もりを見せてから柴崎はやっと言葉の続きを話し始める。



「…自意識過剰なのかと思ってたから、あんまり自信なかった」


俺は今ほど此処に花岡を呼びたいと思ったことはなかったかもしれない。いや寧ろ烏間でも良い。そしてこいつに教えてやって欲しい。お前のそれは自意識過剰なんかじゃないぞと。本人から言われたら流石の柴崎だって認めざるを得ないだろうし。



「でも、そっか。そうじゃなかったんだ」


…や。やっぱり烏間を呼ぶのはやめよう。なんか悔しい。あいつは結構常々頻繁に柴崎のこんな顔見れてるんだろ。それなのに今敢えて、親切心から(?)呼ぶのはものすごーーく癪!!花岡だけを呼んで花岡と俺でこれを堪能しよう。そうしよう。それが良い。



「…お前さ、」

「うん?」


柴崎は鈍い。それはそれは鈍い。鋭いところはめっちゃ鋭い癖してこと色恋になるとそのアンテナはへにゃ、とへたる。そう。色恋になると。



「……烏間とおんなじ目すんだなぁ」

「え?」


俺と花岡と烏間と柴崎。此処はもう彼此13.14年の付き合いになる。始まりは防衛大入学が一応のコンタクトの始まり。それから連んで、まさか此処まで長く友情が続くとは思わなかった。俺と花岡は似ていても、烏間と柴崎が俺と似ているとは思えなかったからだ。でもいつだったかこいつはこう言っていた。

───「きっと何処かが似ていて、だから一緒に居るんじゃないかな」

その何処かが未だに分からないが、それでもこいつがそう言うんならそうなんだろうと俺はずっと長く思っている。贔屓目とかじゃない。柴崎だから、多分俺は信じられる。これが烏間でも、俺は信じられる。




「何処にいるかと思えば此処に居たか」


だってこいつらの言葉はいつだって柔らかくて、心にストンと落ちてくるものばかりだから。

顔を上げて声の方を向くと烏間が居た。どうやら俺か柴崎を探していたみたいだ。まぁ後者だろうけど。



「どうしたの?」

「渡したい書類があってな。それで探していた」

「書類?」


それは柴崎も、そして烏間も分かっていたことで、相手が誰を探していて誰に向けて言った言葉かなんて事くらいは確認なんてしなくても疎通し合える。現に柴崎は烏間からの書類を受け取っているし、烏間も柴崎へ書類を渡している。



「…ああ、これ。うん、ありがとう」

「いや。…なんだ?」


ずっと見ていたのが気になったのか。それとも端から気付いていたが用事に一段落付いたから気を向けてくれたのか。今のはどっちだろうなぁ。



「烏間さ」

「?」


俺とこいつらの付き合いは長い。もうこれは幾度となく、再三自慢し続けていることだ。だからさ、まぁなんとなく分かるわけ。でもそれを俺はどうとも思わねぇし、きっと花岡も思わねぇ。

本当はさっき俺が柴崎に向けて言いたかったこと。烏間とおんなじ目してるんだな、とは違うもの。あれは一度飲み込んでから出た言葉で、これを聞くならそれはあいつも─烏間も─いる時にしようと思ったから言うのをやめた。でも目がおんなじだったって言うのは本当だぞ。



「烏間だけじゃねぇけど、烏間と柴崎って、最近めっちゃ幸せオーラ出てるよな」


付き合いが長いのと、あともう一つ。自慢出来るところがある。きっとこれは羨ましがられる。本当に長く共に居ないと分からないことだろうから。


「そうかな?」

「普通だろ」

「ん〜〜そうかぁ?」


人の目ってのはさ、分かりやすいんだよな。口程にものを言うっつーの?あれは本当そう。マジで昔の人は良い言葉っていうか、的を射た言葉作ったなぁってすんげぇ感心する。感心?尊敬する、か。

烏間の顔と、柴崎の顔と、交互に見る。これで動揺を誘ってるとか、そういうわけじゃない。こいつらはそんなもんでヘマするような奴らでもねぇし。でもま、とりあえず交互に見るっていう動作をやめて、俺は座りながら壁に背中を預けた。



「まぁさ。俺は前にも言ったけど、お前らがどうであっても気にしねぇぜ」


流石だなと思う。反応のはの字も見せやしねぇ。でもそうだなぁ。それは俺と花岡以外の話だってことは、烏間と柴崎だって知ってるはずだ。だから反応のはの字だって、俺らには見付けることが出来る。



「目は口ほどにものを言うっつーだろ?俺の目や花岡の目は誤魔化せねぇぜ!」


まぁあいつは薄々派で、きっかりかっちり分かってますとかそういうのじゃないと思う。マジもんの確信持ってたらあいつなら真っ先に俺のところに来て痛いからやめろってなくらいの勢いで腕が背中をバシバシ叩いてくるに違いない。

とかなんとか思っていた矢先に俺は烏間に腕を掴まれる。それに間抜けた反応を見せていればなんでか隅にやられた。



「あれ、なんで此処?」

「流石だなとは言いたいが今のでマイナス10点だ」

「えっ!?なして!?ってかその言い様じゃやっぱ俺合ってんじゃん!」


ほーら!やっぱそうなんじゃん!俺の目も鈍ってねぇな!自信になる!



「…だがお前に勘付かれるとは露ほども思わなかった」

「俺お前らと何年の付き合いだとお思いで??もう結構長いよ???十年は軽く超えたけどな???」

「褒めているんだ。貶していない」


あれそれ褒めなの?貶しじゃないの?もう烏間くんの褒め具合の加減だけは掴めない!とか思っていたら此処へやった理由を教えてくれた。



「責めるか責めないか、どっちだと思う」

「…あー、…まぁ性格から行くと前?」

「だろうな。俺もそう思っている。それに実際そうだ」

「えっ!嘘マ…っいで!」


後ろを振り向こうとしたら首を思いっきり元に戻された。こいつマジで柴崎のことになるとやること強引な。



「っつっても、俺は別に気にしてねぇぜ?花岡もな。そりゃあホイホイ言えることでもねぇだろうし、あいつは人の気持ちばっか考える方だからその選択しても間違いじゃねぇだろ。だから全然気にしてねぇよ」

「それを俺から言っても恐らくあまり納得はしないだろう。だからお前から言ってやってくれ」

「マジ?お前より俺が良いの?それで良いの?」

「構わん。…それに今回ばかりは、俺もお前のその心の広さには救われたからな」

「へ?え?ちょ、今なんて」

「早く行け」

「はぁー!?お前あとで柴崎から離してやるからな!」


絶対だぞ!離れろって言ったって離れてやんねぇからな!とぶつくさ小声で言ってから俺の足は柴崎の方へ向かう。助走を付けて、遠慮なんて生まれた瞬間に置いてきたくらいの勢いで抱き付いてやった。そしたらびっくりしたのか顔をこっちに向けてくれるもんだから、心底の気持ちと笑顔を俺はこいつに向けて送った。




「お前俺と花岡に言わなかったことに負い目感じてんだろ?んなちっせーこと気にしねぇの!俺もあいつもお前の性格は烏間の次くらいには知ってんだから!」

「…でも、内緒にしてたのって、気悪くしない?」

「しないしない。薄々気付き始めた頃はいつか言ってくれんのかなぁとか思ってたけどお前らの性格を思い出せばいやそれはねぇなって。烏間も柴崎に似て相手のことを考える質だし、何よりまずは真っ先にお前の気持ち汲んで選択するやつでもあるから、俺らから気付いて聞かねぇ限りは絶対ねぇ!って」


だから内緒にされていたことも、一応世間的にもペラペラ言えないことでもあるからってことで話さなかったんだろうし、言われた側の俺らのことも考えて告げなかったんだなって思えば、なんにも。信じられていなかったとか、信用されていなかったとか、そんなものも全く思わない。それが柴崎だし、それが烏間だし、そこがこいつらの良いところでもある。




「人にはさ、言えることと言えないことと、言い難いことと言い易いこととってあるじゃん?それだよ。今回のは後ろの方で、俺は言われなかったことを引っ張ってきてお前らのこと怒ったりとか嫌いになったりとか、絶対にしねぇ。親友だからなんでも言えるなんて、んなわけねぇだろ?でも親友だからこそ気付けることもあんの!そんで、今回はそろそろいっかなぁって。認めてくれた暁にはお祝いパーチーくらいしてやりたいなぁとか。本当そんなもんなんだって!」


んでまぁ認めてくれたもんだからこれはもうお祝いパーチー真っしぐら!計画を練らなければ!という気持ちな訳だから本当ぶっちゃけなくても烏間や柴崎を責める気持ちとか正直掘っても掘っても見当たらね。秘密の一つ二つ持たれているからってなんだ。持ってて普通だろ。俺だってある。そこを一々取ってあげてあーどこーだとか、んな面倒臭せぇことはしねぇ!ついでに話されねぇから友情も愛情もないんだとか言ってたらそっちの方がめちゃめちゃに面倒臭せぇわ!



「柴崎は人のこと考え過ぎるところあっからなぁ。まぁそんなところもお前の良いところだから俺は好きだけど」


柴崎を見ればぽかんとしていて、目をパチパチさせている。えぇ〜そんな動作も似合うの〜??流石永遠の20代。俺お前が来年の1月で30になるとか俺が30になるより信じてねぇからな。なんならもうすぐこの休憩時間に終わりが来ることよりも信じてねぇ。


「烏間がお前を見る目ってすげぇ優しいし、お前の表情も柔らかいから幸せにしてもらってんだろうなって予想してるけどちゃんと幸せにしてもらってんのか?」


これでううん、とか言われたら俺はまず先に烏間をボコりに行く。コラそこ。一瞬で負けるとか言わないの。



「…うん、幸せだよ。すごく幸せ」


でもこうやって本当にそうなんだって伝わるように言われたらさ、信じちゃうよな。だから烏間をボコりに行く計画はなし!柴崎が幸せなんだっていうなら、それで全ては解決じゃ!俺は烏間の方を振り返って笑ってやる。そうしたらあいつもちょっと安堵したような表情浮かべてさ。なんだよ〜なんか良いことした気分じゃん。



「ええーーー!!探しに来たらなんか赤井柴崎に抱き付いてるし何してんのーー!?俺も呼べよ馬鹿野郎がーー!!」


俺思うんだよ。こいつほど空気壊せるの得意な奴って居ねぇんじゃねぇかなって。そんで言葉通りこいつもまた俺と同じで生まれた時に遠慮を置いて来た勢いで突進して来るし。めっちゃ振動も来るし、柴崎は潰れかけてるし。なんだこの状況。



「お前なぁ、俺と柴崎の友情確かめ合いタイムを邪魔すんなよなぁ」

「何その羨まタイム。俺も混ぜろっつーの」

「今自主的に混ざって来てんじゃん」



左に俺に右に花岡。細身な柴崎には重いかもしんねぇけどまぁちょっと耐えてもらおう。



「あ、そうだ。花岡、こいつらのお祝いパーチーしようぜ」

「んあ?お祝いパー…お祝いパーチー!?お!じゃあマジなん!?」

「おーマジマジ。さっき聞いた」


ちょっと今の地震じゃない?って思うくらい部屋が揺れた気がした。っていうのもそれは花岡が柴崎を揺らしに揺らしているからで、だから正確には一箇所に人為的な地震が起きている。



「おめでー!!柴崎ーー!!烏間もーー!!んだよじゃ次の休みにパーチーな!食いモンは買って来てー、酒も買って来てー、つまみも買って来てー、場所はー…場所はどこでも良いか!」

「いや場所が一番重要だろうがよ!」

「んじゃどこにすんだよ〜俺の部屋汚ねぇぞ?」

「俺もだなぁ」


何処にするか、どうしようか。そんな話をしていたら俺らの間に挟まれている柴崎から零れ落ちた笑い声が聞こえて来た。



「柴崎?」

「どした?」

「ふふ、ううん。ただ良い親友を持てたなぁって」


良い親友。それを聞いた瞬間俺と花岡の嬉しメーターはマックス。お祭り騒ぎだ。そこに花岡が腕を引っ張って連れて来た烏間も入れたら余計にお祭り騒ぎ。はいはいと遇らうこいつを花岡はもっと騒げよ烏間ー!って。いやそれ無理だと思うから。烏間が騒ぐとか多分本当柴崎が来年30になるなんて信じられないくらいには信じられないから。



「烏間!これは花岡くんからの命令です!柴崎を必ず幸せにするよーに!!」


いいかね!?とお前は何処の議員だよってツッコミたいくらいの言い方をする花岡は通常運転中。別になんら可笑しくもない。こいつはいつもこうだ。でもそれに対する烏間のさ、この余裕というか、当たり前だろ的なこの感じがな。はぁ〜〜〜なんでお前そんなに似合ってカッケーの?って言いたいくらいでマジムカつく。



「言われるまでもない。元からそのつもりだ」

「だってさ、柴崎。烏間お前のこと幸せにしてくれるってよ」

「ふ、復唱にしなくて良いよ」

「あ〜〜!柴崎照れてる!可愛いなお前〜〜!!」


この!このぉ!って。本当花岡は柴崎大好き人間だよなぁ。まぁこいつは俺より先に柴崎のことを空手の大会で知ってた奴だし。すんげぇ綺麗に技決める奴が居るんだよ!って帰って来て早々に興奮して話して来るもんだからちょっと落ち着けよ花ちゃんって言ったのが懐かしい。



「積もる話はパーチでな!」

「あれもこれも聞かせてな!」

「何聞く気なの?」

「え、知りたい?」

「知りたい?」

「やめておけ柴崎。聞けば次の休みまでお前が悩むのがオチだ」

「えっ…じゃあやめておく」

「志貴ちゃん烏間くんの意見には従順ね」

「そんな志貴ちゃんも好きよ。あっ、烏間くん嫉妬しちゃいやよ?」

「お前相手にするか」

「ひどい!」


そんなこと言ってたらお前から柴崎奪っちゃうもんなぁ。とかなんとか。言いながらも幸せそうに笑う花岡は本当に喜んでいるんだなぁとしみじみ。柴崎も空気も表情も柔らかいし、烏間も同様だし、これは次の休みのパーチが楽しみだわ。



「キスはしたろ?」

「えっ、」

「赤井」

「いやん怒らないで烏間!って俺らから柴崎取らないで〜〜!!」

「柴崎〜〜!!カムバック〜〜!!」

「こいつは初心の塊なんだから動揺させるな」

「初心の塊て」

「それどない」


報告。烏間の後ろにやられた柴崎が少し照れていたのが可愛かったのと、やっぱりこいつが来年30になるのが(以下略)

あ、パーチーの日にはこいつらの馴れ初めを聞いてやろう。






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