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relation2  




冷たい風が吹く。それが頬を撫でて、何もがなかった様に去っていく。



「だーれだ」


閉じていた目に降りかかる日の光を更に遮る様当てられる手。



「…深夜」

「当たりー。よく分かったね」

「分かるよ。こんな事するの深夜くらいだから」

「あれ、グレンはしないの?」

「グレンはもっと強引だよ」

「あははっ、確かにそうかもねぇ」


手を離して隣に来る。瞼を開けば、相変わらず殺風景な世界だ。



「何見てたの?何か興味惹かれるものでもあった?」

「何にもないよ。ただ風に当たってただけさ」

「ふーん…」


前を見つめる志苑を見て、深夜も習う様前を見た。壊廃とした光景。興味を引くものは何もない。崩れた瓦礫に生えた緑。申し訳程度に生きるその草は風に煽られ揺れていた。




「…ふふ、」

「んー?」

「…深夜ってばどこ見てるの?」

「えぇ?どこって…」


あぁ、何処だろう…。今、自分は何を見ていたんだろうか。



「……僕が見てるのは志苑だよ」

「それは今だろ。…さっきまでの話」

「…うーん…。……じゃあ、志苑は今何見てる?」

「俺?」

「うん」


柵に背中を預けて深夜は志苑を見る。互いに視線が合う。



「…深夜を見てるよ」

「そうじゃなくて…」

「違わない。…俺は『深夜』を見てる」

「………」

「『柊深夜』じゃなくて、『深夜』をね」

「っ、」

「…馬鹿だなぁ、」


距離が近付いて、そっと、首元に埋まる。視界に入った綺麗な銀色が風に靡いて揺れた。



「…深夜は深夜だよ。今も、初めて会った時もね。…誰に何言われたか知らないけど、笑うことが辛いなら無理して笑わないで」

「…っ本当、志苑ってなーんでも分かっちゃうんだね…」

「なんでもは分からない。…でも君があんな目で何かを聞いてくるときは分かるよ」

「怖いなぁ。志苑の前じゃ演技出来ないよ」

「演技したいの?したいならして良いけど」

「嫌だね。…君の前ではありのままで居たい」

「ふふ、そう。…それは光栄だ」


気持ちが落ち着いたのか、深夜は顔を上げて離れる。



「志苑も嫌いだっけ」

「あまり好きではないよ。特に目がね」

「あぁ、あの目ね。……ねぇ」

「何?」

「志苑も志苑だよ」

「ん?」


何が?と首を傾げる志苑に小さく笑う。




「血なんて関係ない。その体に流れるものが何であっても、志苑は志苑だ」

「………」

「…だから吸血鬼からも、人間からも、…柊からも、僕が守ってあげるよ」


だから急に居なくなって、僕やグレンを悲しませないで。そう言う彼に志苑は少し沈黙し、そして可笑しそうにくすくす、と笑う。



「随分と贅沢だね。それじゃバチが当たりそうだよ」

「当たらないよ」

「そうかな。……でも大丈夫だよ」


一度景色に目を移してから逸らした。



「それとも、そこまで弱く見える?」

「見えないから心配なんだけどなぁ、僕は」

「あははっ、弱ったな。ならどうしたら良いんだろ」

「だから守られてよ」

「嫌だよ。…こんな世界でお荷物にはなりたくないんでね」


気持ちだけ貰うよ、と言うと彼は足を動かし始めた。



「あれ、志苑何処行くの?」

「執務室。…どう?お茶でも飲む?」

「…それこそ贅沢だねぇ。何淹れてくれるの?あ、2人?」

「他に誰か呼びたいなら呼べばいいさ」

「いやだよ。折角の二人きりなら尚更ね」

「ふふ。…んー、茶葉何があったかなぁ」

「ダージリンが良いなぁ…」

「ならあればそれにしようか」

「賛成〜」


笑顔を見せる深夜。その表情はとても自然で、チラリとそれを見た志苑は少し安心した様に小さく笑った。


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