神様さえも知らないこと


人には憧れてしまったり、こんな風になりたいっていう目標の何かだったり人だったりが心の中に存在する時がある。



「まずあの2人の関係を整理しようぜ」

「だな」


騒つく教室の中、前原は磯貝の机の前にしゃがんで彼の机の上に置かれる白紙に目をやった。何をするにも相手を知る事が大切。情報を整理し、頭に入れる事が最優先である事をこの2人は烏間と柴崎から学んだ。



「んー、と。まずは高校からの付き合い」

「その頃から2TOPで…」

「その頃から仲が良い…」


カリカリ…とシャーペンで書いていく。とりあえずは箇条書きに。



「その頃から烏間先生の柴崎先生に対する心配性な面とかはあったのかな…」

「昔から少食らしいからあったんじゃね?」

「先生、本当食細いもんな…。元から食に関して興味ない感じだけどさ」

「でもそれであれだけ強いんだもんな…。マジですげぇよ」

「な。烏間先生も食に関しては柴崎先生の体を心配して妥協しないし」

「この間要らないっていう柴崎先生捕まえてたからな」



柴崎の食の細さは周知済み。本人も別に隠す気もないらしく、「え、ご飯?…別に食べなくてもねぇ…」と普通に零す。それを聞いた烏間が許さないのも周知済み。「食べずに人間生きられるか。あとせめて二口食べろ」「…その二口が…」「食べろ」なんて会話を耳にする。




「じゃあ逆に、柴崎先生の烏間先生に対する些細な気付きだったり凭れさせてあげられる抱擁さは、昔からか?」

「昔からだろ。だから烏間先生、柴崎先生の側では空気柔らかいんじゃないか?」

「寝不足気味の烏間先生見たら、柴崎先生さり気なく体休ませてるもんな」

「してるしてる。見抜くのも早いし、無理し過ぎたら柴崎先生軽く怒ってるからな」

「この間烏間先生が書類に目を落としながら歩いてたら、その書類奪ってたからな」

「サッと、取り上げてた感じだよな。しかも無言で。流石の烏間先生も動き止まってたな」



烏間が無理をし過ぎた時、柴崎が怒るのも周知済み。「…………寝てるには寝てる」と言う烏間に「寝るっていうのは体を横にする事を指すんだよ。横になったのはいつ」「……一昨日、」「これは俺がやるから少し横になりなさい」なんて会話を耳にする。




「甲斐甲斐しさには差がないな」

「ない。これは断言出来る」



そこまで話した時、チャイムが鳴る。



「授業始めるよ。席着いて」


柴崎が中に入ってき、前原と磯貝はまたあとで話そうとそこで一旦切り上げた。













「…まぁさ、作戦会議だなんだって言ったけど俺らが知ってる事にも限りがあるよな」

「クラスメイト並みに一緒にいるかって言われれば居ないもんな。先生達は仕事してるし」


放課後、教室の椅子に座って2人は話していた。この2人の《作戦会議》の《議題》とはもう分かる人には分かる通り、《どうすれば自分達は烏間先生と柴崎先生の様な阿吽コンビになれるのか》である。



「言葉なしで意思を伝え合えるって…凄いなぁ…」

「分かるもんなんだな、考えてる事って。しかもそれっていうのが当たってるし」

「俺たちには見えない絆が2人にはあってさ、それは深い部分で繋がってる感じがするんだ」



1年、2年じゃ築き上げられないもの。きっと辛い事も悲しい事もあっただろう。勿論楽しい事も嬉しい事も。山もあれば谷もある、そんな日々を過ごして、助け合って手を取り合って…あの2人は今あぁして立っている。




「磯貝は柴崎先生みたいになれそうなんだよな」

「え、そうか?」

「おうよ。お前優しいイケメンだろ?柴崎先生も優しいイケメンだ。や、イケメンっつーより美形寄りかもしんねぇけど、とにかく磯貝と柴崎先生はなんか似てる!」

「そう、かな…。…でも、なんか嬉しいな。あの人は俺の憧れだから」


磯貝は嬉しそうに笑った。前々から彼は言っていた。「柴崎先生は自分の憧れだ」と。



「前原は烏間先生目指してるんだろ?」

「おう!あの大人な男前さを俺はこれから身に付けんのよ」

「じゃあまずは女癖直さないとな」

「ぅぐぅ…っ。やはりそこが一番の相違点か……っ!」


拳を握り、それを机に置いた。前原と烏間の大きな相違点。それは女癖である。烏間は誑さないが前原は誑す。烏間は興味ないが前原は興味ある。大きい相違がここに存在するのだ。




「ははっ。あとは、そうだなぁ。2人とも真面目だな。仕事に対する姿勢なんて特に。いつも俺たちの為に動いてくれてるだろ?」

「安全面とか常に考えてくれてるよな。それが仕事だって言われたらそうだけど、休みの日まで仕事してくれてんだもんな」

「あの真面目さは…性格かな」

「だろうなぁ。じゃないと毎日毎日あんな真面目に仕事熟せねぇよ」


掘り下げれば掘り下げるほど出てくる。だが掘り下げにも限界があり、そろそろ底が見え、煮詰まりつつある。



「…知る為には情報は必須」

「ならその情報を得る為には…」


前原と磯貝は顔を見合わせ笑う。


「「本人達に聞くのみ!」」


明日早速聞こうぜ!

あぁ!


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