神さまありがとう 2
「殺せんせー買ってきてくれてありがとう!」
「いえいえ良いんですよ。それにしてもとても良いことを思い付きましたねぇ、渚くん」
倉橋が殺せんせーからあるものを受け取る。買い出しを頼まれた彼は笑って、そして渚に話しかけた。
「たまたま2人が仕事をしてるの見かけて…、その時に頭に浮かんだんです」
「きっと喜ばれますよ。先生も何か用意しましょうかね」
ヌルフフフフ、と笑いながら触手を遊ばせた。そんな殺せんせーを見てから周りを見る。もう大分準備は整っていて後はあの2人を呼ぶだけだ。
「こんなもんかな?」
「良いんじゃね?あんまこう…どーんとするよりこれくらいの方が似合うっていうか…、大人だかんなぁ、2人共」
「落ち着いてるからド派手よりこれくらいの方が良いよね」
「それに十分これでも喜んでくれますよ、きっとね」
派手派手しくはしない。落ち着いた、でもちゃんと気持ちを込めた準備と整えはした。喜んでくれると良いな。笑ってくれると良いな。そんな事を生徒達は皆心の中で思った。
「じゃあ私と磯貝くんとで先生達呼んでくるから、皆準備しててねっ」
「ノック一回で到着の合図だから」
「「「「OKー!」」」」
片岡と磯貝が代表で呼びに行く。他の皆は少しの緊張と、少しのわくわくをその胸に抱いた。
「……よし、」
「……喜んでくれるかな」
磯貝は教員室の前でそんな事をポツリと零した。
「大丈夫よ。烏間先生も柴崎先生もきっと喜んでくれる」
「…だなっ。俺らの気持ち、ちゃんと届けよう」
「うんっ」
そして教員室の扉をノックした。 すると中から声がしてそれを合図に扉を開けた。そこにはいつも通り書類やらパソコンやらと仕事に勤しむ2人の姿があった。
「 片岡さんに磯貝くん。どうした?」
「あの、今から少しお時間ありますか?」
その言葉に烏間も柴崎も互いに顔を見合わせる。そんな2人の様子を片岡と磯貝は少し緊張気味に見る。ここで忙しくて少し無理そうだと言われたら…とも思ってしまったのだ。
「ね、早めにしておいて良かったろ?」
「…みたいだな。お前の勘は本当に良く当たる」
2人の会話に、え?と片岡と磯貝は反応する。それに気付いた柴崎が2人に笑いかける。
「理由は知らないけどなんだか落ち着かない様子だったし、視線は感じるし…。…何かあるのかなと思ってね」
「そ、そんなに分かりやすかったですか?」
「ん?…ふふっ、俺はそういうのに敏感だからかな。視線は烏間も気付いてたよ」
ね。と聞けば、烏間は一つ頷いた。
「…視線は気付いた。理由は分からなかったがな」
「もし何かあるなら、少し仕事を早めに片付けておこうかって話してたんだ」
当たってたね。と小さく笑いかけられる2人は、やっぱり敵わないなぁと軽く肩を竦めた。
「…じゃあ、今から……」
「大丈夫だよ」
「仕事は殆ど片付けた」
烏間と柴崎の言葉に2人は顔を綻ばせる。それを見て、烏間も柴崎も互いに小さく笑う。そして立ち上がり、教員室を出た。
「(良かったね。来てもらえて)」
「(あぁ。ここも少し不安だったから本当良かったよ)」
「(仕事があるならそっち優先だもんね)」
「(…そう考えると、柴崎先生の勘って凄いなぁ…)」
コソコソ、と話す2人の後ろを大人2人は歩く。だが、
「「(…敢えて聞こえていないフリをしておこうか)」」
耳の良い2人には前2人の会話は筒抜けなのであった。
見えた来た教室。そして辿り着く。磯貝は扉を一つノックした。
「「?」」
何故ノックなんてものするのだろう。普通にそのまま入れば良いのではないだろうか。そんな小さな疑問がふと浮かぶ。
「「(せーのっ)」」
ガラッ!
ふわぁっ…!
「「っ、」」
「「「「烏間先生、柴崎先生いつもありがとうーーーっ!」」」」
飛んで来る紙吹雪…ではなく花吹雪。そして生徒達の声。
突然の事であり、この展開を予想していなかった為、2人は珍しく立ち止まったままだ。