僕らは共犯者 5


突然両腕を掴まれ背中に固定されたと思えば膝裏を蹴られ地面に膝を突き倒れる花岡。無理に動けば関節を傷付けるだろう。

そして、しゃがんだその体勢のまま首に腕を回され頭と体を固定される赤井。動けば首が締まるだろう。




「…今何起きた?」

「立場…変わった、よね…?」

「烏間先生の相手って、花岡さんだったよな…?」

「柴崎先生の相手って…赤井さんじゃなかったっけ…」



目の前で起きた突然の変化に目も頭も追い付かない。




「なんと…。…ヌルフフフ、そうしますか。実に面白いですねぇ…」


柴崎は両手で花岡の両手首を束ね、片手で背中に固定する。そして俯けに倒せば跨る様に彼の横に片膝を付き、上を見ないで軽く腕を上げ手を開く。すると宙から導かれるように彼の手の中に拳銃が収まる。それを片手で持ち直し後頭部へと当てる。

烏間は向かってきたナイフを手の中に収め、手首の柔らかさで刃の向きを変えれば握りを持つ。そして背後から腕を回す事で頭と首を固定し、動けば締まる様にする。更に背中に片膝を充がう事で体を動かす事を困難にし、心臓部分に矛先を当てる。



「(勝負ありですね)…そこまでっ!」



殺せんせーの声で2人は銃とナイフを離し、互いに捕らえていた花岡と赤井を解放する。



「…柴崎さんいつからそこにいらっしゃったんですか」

「ふふ、知りたい?」

「おせーて…」

「さっき」

「嘘を吐きなさるな…」



「…俺の首を折りたいのですか、烏間さん」

「後処理はごめんだ」

「…しかしながら首回したら折れそうであったよ」

「回さなければ良い話だ」

「あぁ言う時は無性に回したくなるのです…」

「なら勝手に回せ。締まるがな」


土とご対面な花岡のそばにしゃがみ笑って話す柴崎。仰向けに倒れ込みじとっと見て来る赤井を見下げる烏間。




「んん〜〜っ!あ〜〜〜〜っ、負けた〜〜っ!!ぐやじい〜〜っ!!」

「烏間のバーカ!柴崎のバーカ!!」

「子供か」

「砂埃立てないの」


止めなさい、と花岡の頭を軽く叩く柴崎。その手を掴み体を起こせば悔しい〜〜っと花岡は柴崎の手をブンブンと振る。宛ら負けた事が悔しい小さな子供のよう。



「柴崎〜〜!」

「はいはい落ち着いて。花岡も相変わらずナイフの扱い上手いよ。軌道読みづらいから避けるの難しいんだからな」

「なんでお前俺の相手してないのに分かんだよ〜〜っ!」

「赤井ばっかり見てたと思ってた?花岡の事もちゃんと見てたよ」

「〜〜っ柴崎好きだぁぁぁ」

「動いた後で暑いんだから抱きつかないで」


首に腕を回してぎゅーーっと抱き付いて来る。それに体が前に行くため、地面に片手を突いて自身の体を支える。その様子を少し離れた場所で体を起こし地面に座る赤井と立つ烏間が見ていた。



「あいつ変わんねぇだろ」

「全くな」

「すーぐ柴崎に引っ付くかんな。んでなかなか離れねぇ」

「柴崎も強く言わない方だからな」

「甘えたちゃんなんですわ、花岡くんは」

「お前も似たり寄ったりだろうが」


話す馴染み4人組を殺せんせーは眺める。そして思う。

ほんの一瞬。本当に些細な目配せ。たまたま目が合った、そんな程度。だがその一瞬で意思を疎通させた。烏間が銃を投げた瞬間、柴崎もナイフを投げた。とんちんかんな事をする。そう思うが、それは彼らの計略。投げたのではない。渡したのだ。烏間は柴崎に、柴崎は烏間に。



「…しかし、策略は最初からかもしれませんねぇ」



互いに長けているナイフと銃を反対に持つ。そこに小さな疑問を抱かせる。更に邀撃側な立場が多かった柴崎が出撃側へと移る事で動揺を来す。意外性を見せる事で打開策を考えさせる意識を与えるが、押して引いての攻撃をする事でその思考に集中させない。

元より一対一で戦わなければならないルールはないが、そこに花岡が下手に手を貸せば己の味方が不利になる可能性がある。だから考えなしで容易に手を貸すことが出来ない。故に花岡は自然と烏間との一対一戦になった。…いや、自然と、とは少し語弊がある。作為的にそう仕向けた、の方が当てはまるであろう。

つまり最初から踊らされていたのだ。2人の策略に。必ず一対一になるように仕組まれ、攻防をしながらも望ましい状況へと誘導させられる。そして時が来て、分かりもしない視線を交わされ畳み掛けられたのだ。



「全く、怖いですねぇ。人を手のひらで転がすとは」


しかし、だからこそ味方であると頼もしい。その冷静さと頭脳。そして事を起こせるだけの信頼関係。だから烏間と柴崎のペアがこの任務に当てられた。

そんじょそこらの人間には真似できない。決めた合図も言葉も動きもない、ただ一瞬の目配せ。それだけで実行する。そしてそれが実行出来るだけの技量と相手も考えている事は同じだという絶対的な確信。



「お疲れ様、烏間」

「お前もな。…やはり銃の方がしっくり来る。見慣れているからか」

「それを言うならお前だってナイフの方がしっくり来るよ」

「ふ、そうか」

「柴崎が超攻撃的でビビったんだけど」

「まさかお前が行くとは思わなかったしさ。いつも仕掛けられてから動くのが多いのに」

「1パターンじゃ命取りだよ」

「じゃなにか?まだパターンあるのか?」

「そう簡単に手の内晒してもねぇ」

「勿体振んなよ!」

「面白みに欠けるから」

「面白さ求めんな!!」

「横で大声出すな。煩い」

「涼しい顔しやがって烏間〜〜っ!」

「お前は暑苦しい」

「まぁさ。景気付けに一杯、どうっすか?」

「1人寂しく飲んで酔い潰れてれば」

「塩対応!!」


絡み絡まれる4人。何も知らない人が見ればこの光景はどこでも見るような光景。だがこの4人は周りと少し違う。戦闘力やその他諸々に長けた、逸材達である。



「烏間ー、柴崎が塩対応してくるー。冷たくて俺悲しいー」

「だからって俺に絡むな」

「お前も冷たい!」

「柴崎ー、烏間が俺を暑苦しいって言う〜。俺暑苦しい?」

「それが花岡の良さだよ」

「柴崎だいっすきだ!」


end.

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