常識人の混乱


え…え…えぇ…!?

そんな事あるわけない。その前に相手があり得ない!!あの人のその相手は女性かもしくはあの人だと俺は思ってたのに!!!

前原陽斗は廊下を走った。



ガラッ!!


「!…どうしたんだよ、前原。息切らして」

「き、木村…俺、俺…っ」

「どした?」

「あー、磯貝。なんか前原が可笑しくてさ」


強めに教室のドアを横に引いた前原。そこに近い位置で座っていた木村は肩を上げる。様子を見た磯貝は近付く。



「前原どうした?」

「何かあったのか?」

「み、見ちまった…」

「なにを?」

「なんか変なもんでも見たのか?」

「いやでも俺は認めねぇ!!」

「なになにー。どうしたの?」

「あ、倉橋。それが俺たちにもよく分かんなくて…」


騒ぎを聞きつけた倉橋含む女子が近付いて来る。岡野がチラリと前原を見るとギョッとする。


「ちょっ、前原!顔色悪いよ!どしたのさ!」

「え?…ぅわぁ!前原大丈夫か!?」


磯貝もそれで気付いたのか顔色の悪い前原を心配する。


「お、俺は…俺は認めねぇ…!」

「何を?何を認めないの?」

「柴崎先生と…」

「「「「柴崎先生と…?」」」」

「殺せんせーが…」

「「「「殺せんせーが?」」」」

「キスしてたなんて認めねぇ!!!」

「「「「………………」」」」




一同唖然。そして響く声。




「「「「えええええええ!!?」」」」

「待って!待って待って待って!!」

「柴崎先生と殺せんせーが…っ」

「きききききききす…!?」

「そこは烏間先生の立ち位置じゃないの!?」

「俺らは柴崎先生の相手は綺麗もしくはかわいい女の人か烏間先生だと信じて疑わなかった…」

「「「「うん!!」」」」


前原の言葉に甚く大層に頷く彼等。



「今一番柴崎先生の隣にいるのは烏間先生。理解してるのも烏間先生。…なのにだ。…なのに…っ、あのタコは…っ!!」

「略奪愛をしたのね!!」

「そんな可愛いもんじゃねぇ!柴崎先生が烏間先生の側を離れるとお前ら思ってるのかよ!」

「「「「いや、思わない」」」」

「だろ!?…つまり、無理矢理だ」

「「「「!!!?」」」」

「無理矢理柴崎先生から奪ったんだ!あの、あの…っ、唇を…っ!!」

「やだぁ!」

「烏間先生じゃないと認めないぃぃぃぃ!」

「もはやあの2人でワンセットなのに!!」

「どうするんだよ!!地球の終わりだ!!」

「殺せんせーによって今地球が破壊された!!」

「フライングだ!!」

「壊すならもうちょい待てよ!!」

「ハウスっ!!」



ぎゃーぎゃーと騒ぐ生徒達。勢いは止まらない。熱は冷めない。動揺の熱が。



「はい皆さん、授業ですよ〜。席に着きましょう」

「「「「!!!」」」」

「にゅや?」


授業の為やって来た殺せんせー。扉から入ってきた殺せんせーを見る生徒達。なんかいつもと違うその視線に傾げる殺せんせー。あれ、なんです、その視線は。


「どうしました?」

「殺せんせー…」

「そりゃないよ…」

「略奪愛なんて…」

「あの2人を、引き裂くなんて…」

「うぅ…っ、俺は、認めねぇよ…っ」

「にゅ、にゅや!?り、略奪愛!?引き裂く!?何のことですか?」

「「「「とぼけんなーー!!」」」」

「にゅやぁぁぁぁ!?」


生徒からの一斉攻撃。避ける避ける避ける。そこに鶴の一声。いや、二声。


「ほら、忘れ物」

「教科書も持たずに何するつもりだ」

「柴崎先生!烏間先生!助けて下さい!!」

「「は?」」

「烏間先生!柴崎先生!騙されないで!!」

「てかその前に!柴崎先生消毒しましたか!?」

「え?消毒?怪我してないけど…」

「殺せんせーに無理矢理キスされたんでしょ!?」

「…………え?」

「…………」

「(ひぃぃぃぃ!烏間先生の目が怖い!怖い!射殺しそう!!私なにもしてないのに!)」


何のことでしょうかという柴崎。殺せんせーを睨む烏間。その睨みに今にも死にそうな殺せんせー。


「前原が見たんです!」

「殺せんせーにキスされる柴崎先生を!」

「私そんな命知らずな事できません!」

「……いつ?」

「さっき廊下で、殺せんせー柴崎先生に顔近づけてて…」

「「…………あぁ」」


そう言えばそんな事あったなと当事者2人は思いだす。


「ほらやっぱり自覚あるんじゃないですか!!」

「殺せんせー烏間先生から柴崎先生を奪うなんて!!」

「男の風上にも置けないわ!」

「ごごご誤解です!あれは、柴崎先生が目にゴミが入ったと痛がっていましたので、それを取ってあげていただけですよ!」

「「「「……ゴミ?」」」」



え…ゴミ…?



「風に交じったゴミが目に入ってね。あんまり痛いから目抑えてたらたまたまこいつが通りかかって」

「で、見て取って差し上げたんですよ」

「キス…じゃない?」

「ないない。しない。それしないと死ぬなら俺死ぬから」

「柴崎先生酷い!!」


その時柴崎の手首が掴まれる。そして歩き始める。



「え…」

「……」

「え、ちょ、烏間?」


それを教室から顔を出して体を出して見送る生徒と殺せんせー。


「柴崎先生がんば」

「ファイト!」

「健闘を祈る!」

「烏間先生を頼みました柴崎先生」

「は!?ってちょっと待って!…ほらこれ!教科書!」

「あ、ありがとうございます」


持っていた教科書を殺せんせーに放る柴崎。烏間によって連れて行かれる柴崎を生温かい目でそれを見るのだった。


「…前原あとで柴崎先生に怒られるかもね」

「ぅえ!?」

「前原の誤解が誤解を生んだから」

「お前らだって一緒になってたくせに!!」

「一番重いのは、前原。お前だ」

「なんだよそれ!!」







「……っん…っま、って…!」

「待たない」

「〜っ、…っも、…されて、ないってば…!」

「(分かってるけどムカつく)」


常識人の混乱
連れてかれたね。
な、連れてかれたな。先生がんば!


title:空をとぶ5つの方法様

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