幸せの温度 2


烏間は柴崎の頬に手を当てる。


「…顔色も良くない。横になるべきだ。…まだ動けそうにはないか?」

「…段々、マシになってきたから…大丈夫」


そう言うが、やはり顔色は悪い。痛みを堪えているのが丸分かりである。それを見て烏間は顔を殺せんせー、渚、カルマ、イリーナに向けた。




「後は俺がなんとかしよう。もうすぐ授業も始まる」

「でも…」

「カラスマ…」

「渚くん、ビッチ先生」

「カルマくん…」

「なによ…」


何かを言いかけた渚とイリーナを止めたのはカルマだった。


「大丈夫だよ。なんたって烏間先生がもう来てくれた。この人がいたら、柴崎先生も安心出来るしさ。そうだよね、殺せんせー」



カルマは殺せんせーを見る。




「カルマくんの言う通りです。ここは烏間先生に任せましょう。烏間先生、柴崎先生を任せても大丈夫ですね?」

「あぁ。…柴崎がこうなったのに気付いたのは誰だ?」

「俺だよ」


目線をカルマに向ける。


「…君か」

「たまたま廊下歩いてたら柴崎先生が頭抑えてたからさ。ちょっと心配になって話しかけたんだ。そしたら酷い偏頭痛持ちだったってわけ。あんまり痛そうだから支えたんだ」

「そうか。…世話を掛けたな。だが、助かった。ありがとう」

「んーん。全然良いよ」


カルマは柴崎の側に近付くとしゃがんだ。


「…柴崎先生、烏間先生来たからもう大丈夫だね。俺も安心した。早く良くなってね」

「ありがとう、赤羽くん…。世話かけたね…」

「いいよ。気にしないで。いつものお返し」

「…お返し?」

「柴崎先生には色々とお世話になってるからさ」

「…なるほどね…。そんなの、気にしなくて…っ、…いいのに」

「いいの。…じゃあ俺たち行くよ。烏間先生後よろしくね」

「あぁ」


心配げな渚とイリーナを連れてカルマはその場を去った。


「…カルマくんは以前柴崎先生にお礼がしたいと言っていましたねぇ」

「お礼?なんのだ」

「なんでも以前足を捻った時、隠していたのに気付かれ手当されたとか。その時かけてもらった言葉が嬉しかったそうですよ。柴崎先生らしいですね」

「そんな事があったのか…」

「えぇ。…ささっ、烏間先生。私も授業に行きます。後は頼みました」



そう言うと殺せんせーはその場を去った。2人きりなった廊下。烏間は顔を柴崎に向けた。



「こんな時、すぐ側についてやれず、すまなかった」

「烏間が謝る必要なんてないよ…。…こんなの、突然来るんだから…っ、対処出来ないでしょ…?」

「だとしてもだ。…お前が苦しむ姿を見るのは辛い」

「烏間…」

「医務室まで運ぶ」

「え…あ、ちょ…っ」


烏間は柴崎の背中と膝裏に腕を回すと持ち上げた。横抱きだ。柴崎は咄嗟に烏間の胸元の服を掴んだ。



「ひ、人に見られたら…っ」

「大丈夫だ。もう授業は始まった。人は居ない」

「でも…っつ」

「…ほら、痛むんだろ?安静にしてろ。なるべく揺らさない」

「…ごめん、ありがとう」

「良い」



腕から伝わる温度。とても安心する。気遣って歩いてくれててあまり揺れず、お陰で頭にも響かない。


「…烏間」

「ん?」

「…ありがとう」

「…なんだ、急に」


烏間が来てくれ、近くで声が聞こえた時…酷く安心した。それでこの偏頭痛から解放されるかと言われれば、そうじゃないけれど。それでもとても安心した。頬に手を当てられた時、きっとその場に誰も居なかったら、そこが学校じゃなかったら、倒れ込んでいた。



「安心する…」

「?」

「烏間の側は、1番、安心する…」

「…柴崎」

「ふふ、…ありがとう、烏間」

「…お前のためなら、いくらでも側にいてやる」

「なら、ずっと…居てもらわないとね」

「それが望みなら叶えてやる」

「頼もしいなぁ…」


幸せの温度
あなたの側が
何よりも落ち着き幸せです


title:背中合わせの君と僕(!)様


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