※空手の試合知識は皆無ですのでご理解の程宜しくお願いいたします。
空手部は今日ピリピリしていた。
「いいか。準決勝も勝ち、決勝だ。テンション低めなあいつを上げさせるぞ!」
「「「「うすっ!!」」」」
その時柴崎が帰って来る。
「柴崎、アップ済ませたか」
「はい」
私物であろうタオルを首にかけて帰って来たのは柴崎だ。
「いいか、柴崎。リラックスしろ。お前ならいける」
「…それ朝からずっと聞いてますよ」
「あれ、そうか?はははっ!まぁなんだ!柴崎に心配は要らんだろうがな!」
「なんせ、準決勝の相手を膝蹴りでノックアウトだもんな」
「前振りなしからのアレだろ」
「なんの防御も出来ず終わった」
そんな話をしていればそろそろ時間になり試合が始まろうとしていた。帯をもう一度締めていれば声がかかる。
「柴崎ー!」
「?」
振り向けば見覚えある顔振れが。
「勝てよ!決勝!」
「準決勝だって凄かったしな!」
「花岡、赤井」
「怪我、するなよ」
「烏間…」
なんだ、来てたんだ。なんて思う。
「勝って来い」
「…うん、勝って来る」
そう言い笑うと柴崎は試合へと集中した。
「勝負始めっ!」
相手が先に間合いを詰める。繰り出された上段回し蹴りを避ければ足払いを。体が大きく傾いた所で中段突き。相手が蹲るも3秒後立ち上がる。
体勢を整えれば正拳突き上段が真正面から来る。首をそらすことでそれを避け、距離を取って素早く足刀蹴りを頸部へ。
それを見た主審は柴崎の方へと側を真横に振る。「技有り」だ。
もうすぐ10秒経つという所でしぶとくも起き上がる。
「はぁ、相手側しぶてぇな」
「柴崎のアレ喰らって起き上がるとか何モンだよ」
「決勝まで上がってくる相手だ。そうそう倒れる相手でもないだろ」
そんな話をしていた時だ。
「一本!やめっ!」
相手にノーモーションからの鋭い膝と上段回し蹴りを叩き込み、戦意喪失させた。
柴崎の勝利だ。
「…痛そ…」
「あいつノーモーションから技した…」
赤井と花岡はうげ…という顔をして背凭れに背を預ける。烏間の視線の先には退場した柴崎が佐伯から盛大なハグを頂いていた。
戻って来た柴崎に気付いて背凭れに凭れていた赤井と花岡はバッと背中を離し口を開く。
「柴崎ーーっ、おめでとー!」
「ちょー痛そうだな!あれ!!」
「そんな前のめりになって落ちたらどうするの」
「「大丈夫!!」」
「烏間、馬鹿2人後ろに引っ張ってあげて」
「ったく。ほら、落ちるぞ」
「ぅおっ」
「おわっ」
両サイドの立ち上がった赤井、花岡を座らせる。
「もー、マジ柴崎オカン」
「んで、マジ烏間オトン」
「俺も柴崎もこんな騒がしい子の親になった覚えはない」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ2人を無視する烏間。それを下から見ていた柴崎は小さく笑う。
「柴崎、どうしたの」
「いや、なんでもない」
やって来た結川にそう返し背を向けようとした時、背中に声がかかる。
「柴崎」
「?」
「優勝おめでとう」
「…ありがとう」
烏間からの言葉に柴崎は優しく笑い返した。それに烏間もまた口元に笑みを浮かべた。
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