訓練だ実技だなんて言ってるが…勉強だって防衛生にもある。
「…で、この時にここの値が…」
「ふんふん…」
「その時の式はこれを使って…」
「ほー…」
談話室の一つの机に集まり勉強をしていた。科目は様々。
「この時の憲法は第9条ね」
「えー、武力の威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する…か」
「そう。これは大切だから覚えておくべきだよ」
「テスト出ると思う?」
「思う」
「柴崎先生がそう言うなら従いまーす」
「げぇ…っ、これ全部覚えんの?」
「防衛学は基本中の基本科目だ」
「そーだけどさぁ…。幾ら何でも多くありやせんか?」
「叩き込め」
「烏間先生こわーいよー!赤井変われー!」
「え、やだやだ。俺は柴崎先生に教えてもらってんの。だからいやいや」
「ケチ!」
烏間、柴崎、赤井、花岡以外にも防衛1学年生がここで勉強している。
「烏間、ちょっといいか?」
「?」
「柴崎、ここなんだけどさ…」
「どれ?」
座学の成績も優秀な2人は他の生徒からも引っ張りだこだ。
「あぁ、そこはこうした方がいい」
「…なるほどな」
「この問題だと、引っ掛けが来そうだから、こっちも覚えておくと良いと思うな」
「やっぱ引っ掛けでくるよなぁ。この問題だと」
「あ、じゃあこれは?」
「これは…。…柴崎」
「ん?」
「これどう思う」
見せられたのは作戦思案書の問題だ。本番になればこれが大きな物となる。今から基礎を身につけ、柔軟性を付ける。
「んー…。…これだと、後方支援に回った作戦を使うべきじゃない?前衛に人員を回して敵側の戦力を先に落とすって言うのもありだと思うけど、後々攻撃を受けた時後ろの支援がないと成り立たないし。配分人数は4:6位が無難かな」
「…だそうだ」
「あー、そっか。そう言う考え方か。柴崎柔軟性あるなぁ」
「坂木も数独したら?」
「数独?」
「知らない?」
数独とは1から9にマス目分けされたボックスが9個ある。縦、横、ボックスの中で1から9を当てはめていく。だが、ただ単純当てはめるのではない。予め疎らに数字が書かれており、それを元に頭を回して数字を入れていく。柔軟性や閃きが必要となる。
一度間違えればどこで間違えた分からず解けない、という物だ。パソコンですれば答えあわせの際間違いを指示してくれるから分かるが、本ですれば間違いが分からずそこでアウトだ。
「最初の方は簡単だけど、段々難しくなって訳分かんなくなるやつだけど」
「…それ俺にも出来るかな?」
「出来ると思うよ。今度貸そうか?」
「本当か?ありがとう」
「いいえ」
そう言うと坂木は本を持って自分の居た席へと戻って行った。
「柴崎いつ数独なんてしてんの?」
「夜とかかな」
「え、夜にしてんの?烏間、柴崎そんなのしてる?」
「あぁ。よく見る」
「朝6時に起きて、勉強、訓練、部活動して、夜また頭回すのかよ!?いつ休憩してんの?」
「だから、数独が休憩」
「「………」」
なんだこいつ。数独が休憩?マジで言ってんの?みたいな顔をする赤井、花岡。
「…えーっと、柴崎さん?」
「ん?」
「休憩って漢字、知ってますよね?」
「…馬鹿にしてる?」
「いやいや!滅相も無い!…で、ご存知で?」
「知ってるよ。休むに憩いだろ?」
「休むって意味知ってる?」
「…動作を中断して楽にする、じゃないの?」
「じゃあ、憩いは?」
「…寛ぐこと」
花岡はバンっと机を叩く。赤井は柴崎の隣に座っていたので両肩を掴み揺らす。
「中断もされてなければ寛がれてもないんだよ!!」
「お前の休憩はアレか!?寝てる時だけか!?人間か!?」
「…っ、あか、い…っ酔う…っ」
「やめろ、赤井!柴崎の顔色が悪くなってる!」
烏間によって赤井から解放される。グルグルとする。
「大丈夫か?」
「うっ…赤井嫌い…」
「き、嫌われた…っ!!」
「死ぬな!赤井!!」
「ダメだ…っ、花岡…、後は…任せ…た…」
「赤井ーーっ!!」
「なんの茶番だ」
「演劇部行けば?買われるよ」
床に倒れ込む赤井。その側で嘆く花岡。それを少し顔色が戻った柴崎が頬杖付いて見て、烏間は冷めた目で見ている。そんな光景を見ていた他の防衛1学年生達。
「「「「(あれ。なんであの4人仲良いんだろう…)」」」」
後々、これが一生の疑問になる。
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