朝、5時。外は真っ暗。
「……おはよーございます」
「……起きてくだーさい」
「…………」
なのになんだこいつらは。
「あ…!烏間…!無視するな…!」
「超小声で話すのムズイんだぞ…!」
「朝から煩い鬱陶しい。…まだ5時だぞ、何してる…」
起床は6時。なのに何故この2人がいてここで話しているのか。ギリギリまで寝ている奴らが。
「本日は25日ですっ」
「柴崎さん生誕日ですっ」
「……知ってる。朝一で言いに来たのか?…どの道本人はまだ寝てるぞ」
そう。柴崎は大体45分に起きる。だから彼はまだ起きていないのだ。
「起こすんじゃん」
「…は?」
「起こしておはよーおめでとうー!って言うんだよ」
「……(…なんて迷惑な奴等だ)」
言われれば本人も嬉しいだろうが時間を考えろ。まだ5時過ぎだぞ。
「それにー、寝起きの柴崎を見てみたいしなー」
「なー」
「(…柴崎の誕生日にこいつらの命日か。…悲惨だな)」
そんな事を考えている烏間から目を離して眠る柴崎の方へ。背中をこちらに向けて寝ているため顔は見えない。そんな彼の肩に手を伸ばす。
「(後もうちょっと…)」
花岡の指先が触れた、
ガッ
「え、」
グイッ、
「ぐえっ!」
ググッ
「し、しま、締まってる…!柴崎…!締まってる…!」
「(花岡の後ろに居て良かったー…)」
「(……早朝からバックチョークか)」
「………、…ん?」
見事なバックチョーク、基裸絞を花岡に(まだ覚醒しない頭で)した柴崎。
「……?……誰」
「……花岡さんです。とりあえず放してやって下さいませんか死にそうです」
「…………」
放せと言われたから放す。まるでそんな感じで花岡を解放した。
「……花畑見えた…」
「……よく帰って来た」
体を起こした花岡が結構マジな顔で言う。そんな彼に赤井はぽん、と肩を叩いた。
「……はぁ、」
その光景を見ていた烏間は1度ベッドから出て時計を見る。まだ5:15。自分は目が冴えたが柴崎はまだ眠いだろうし冴えてもいないだろう。この馬鹿2人は知らないが。まぁ昨日の晩早く寝たんだろう。だからいつもギリギリの2人がこうも起きている。
「…まだ寝れる。あと少し寝たら良い」
「……ん…」
元々起き上がっていなかった彼はそのまま目を瞑る。さっき花岡を絞めたせいで少し乱れた布団を掛け直してやる。
「………」
「………」
「………」
離れ掛けた手を取られる。緩く取ったまま、後数十分の眠りについてしまった。
「〜〜〜〜〜っ!!」
「〜〜〜っ!!〜〜〜〜っ!?」
「…っ、」
早朝の、まだ5時台。声にならない悶えなのかなんなのか分からない、とりあえず声であろうものを耐えて耐えて耐える赤井と花岡。烏間は取ったまま眠る柴崎のその行動に額に手を当てた。
それから30分後。
「……なんでいるの?」
「「おはようございます」」
「?…あ、おはよう」
「……とりあえず柴崎さん」
「ん?」
「…烏間さんの手、放してあげてくださいな」
「え?………」
「……」
見れば確かに。初めて気付きパッと放した。
「ごめん烏間…っ、って、え、いつ握ってた?」
「……一度起きた時だ」
「(…起きた?いつ?)」
記憶にないため思い出せない。そんな彼を見て、きっと覚えていないのだろうと思い小さく笑う。
「柴崎」
「なに?」
「誕生日おめでとう」
「………。…あ」
「…また忘れてたな」
「あー…はは…。…ありがとう、烏間。1番だよ」
「俺の時もそうだったからな」
朝からのんびりというか、ほんのりというか、この季節の寒さにそぐわない春っぽい空気に赤井と花岡は朝から灰になりかけてた。ここは立派に冬だ。
「……俺1番狙ってた」
「……俺も。しかも俺なんてバックチョークまで食らって…」
「烏間に取られた…」
「取られた〜〜…」
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