birthday to you 2



「なんもプレゼントとか用意出来なくてごめんな?」

「そんな、良いよ。俺自身忘れてたんだし、言葉だけで十分。ありがとう」


木下が申し訳なさそうに言うのを柴崎は笑って良いんだと言う。それを横で見ていた烏間は、柴崎らしい、と小さく笑う。



「あぁもう!!柴崎!!」

「ん?」


花岡が柴崎に声をかける。その隣には赤井もいる。溝淵は…なんだか目を回している。


「誕生日おめでとうっ!」

「おめでとさん、柴崎っ」

「……、…ありがとう」


けれどやはり言われれば嬉しいものだ。柴崎は赤井と花岡からの言葉に小さく笑った。



「もー…なんだよー…目が回るぅぅ…」

「俺らより先にフライングした溝淵がー悪い!」

「悪い!」

「さっさと言っとかないからだろー!」

「なにおー!こっちだってな、心の準備というものが!」

「告白じゃないんだから!!」

「告白みたいなもんだろうが!!」

「どこが!?」





「…ふふっ、」


言い合い(?)を始める赤井、花岡、溝淵を見て柴崎は可笑しそうに笑う。なんでそこまでになるのやら、と。



「柴崎」

「ん?」

「…おめでとう」

「…ありがとう、烏間」


ギャーギャー!という声の中、隣からの烏間の言葉に柴崎は笑って礼を言うのだった。

















「来年は俺が1番な!」


その日の夜、4人は自室へと帰る道すがら話している。


「いや、もうここは共同戦線張らねぇで行こう。来年は俺な」

「赤井くん!?裏切り!?」

「てことで、烏間」

「?」

「負けねぇかんな!お前同室だから1番フライングなんだよ!」

「確かに!烏間!フライング禁止な!」

「……どうだろうな」

「おいコラー!」

「そこはそうだなって言えよ!!」

「赤井、花岡煩いよ」

「お前のこと話してんだよ!」

「当の本人無関心か!!」


赤井 花岡 柴崎 烏間

の順で歩いているため、頭上で会話が飛び交うのだ。


「無関心って訳じゃないけど…そろそろ耳痛いなって…」

「声が大きいからな、この2人は」

「後テンション高いし」

「お前ら2人が低いんだよ」

「氷河期かっ」



そんな話をしていれば赤井、花岡の部屋に先に着く。



「…赤井、花岡」

「ん?」

「なんだ?」

「ありがとう。嬉しかった」

「「……………デレた?」」

「…言わなきゃ良かった。帰る」

「待って待て待て!ごめんなさいっ」

「ごめんなすって!柴崎さん!」

「知らない。烏間、行こう」

「…っクク。あぁ、そうだな」

「烏間てめぇ蚊帳の外か!」

「まぁそうだな」

「畜生!!」


騒ぐ2人の声を無視して2人は歩き出す。チラリと烏間は柴崎を見て、そして一つ小さく笑いを零す。



「素直じゃないな、お前も」

「…別に、そんなんじゃない」



顔を少しそらしてそう言うも、その表情はどこか僅かな照れが見える。



「言われ慣れてないのか?」

「そんなことは…ないけど。…あんな風に言うの競われたの初めて…」

「あの2人は今日ずっとあぁだったな」

「…馬鹿だな、本当」


そう言うも、その表情は言葉とは裏腹だ。口元に緩く笑みを浮かべている。



「良い16の迎え方かもね」

「良かったな」

「あ、」

「?」


柴崎が足を止めると烏間も足を止める。そして一歩だけ前に立つ烏間の顔を見る。



「烏間の誕生日は言えなかったけど、今年はちゃんと言うから。でも烏間も8月15日誕生日おめでとう。遅くなってごめんね」


それだけ言うと柴崎は烏間の横を通り過ぎる。早く寝ないと明日に差し支えるな、何て言いながら。



「烏間?帰らないの?」

「……帰る」

「じゃあ帰ろう」


大凡半年振りの思わぬおめでとうに、烏間は心の中で頭を抱えた。何気ない、普通の言葉なのにどうしてこんなに響くのだろうかと。



「…柴崎」

「んー?」

「…誕生日、おめでとう」

「……」

「来年もまた言おう」

「……うん、ありがとう」


誕生日なら言われるであろう「おめでとう」の言葉。どれも嬉しいのは確か。だけど、なんでだろう。比べる訳じゃないけど、1番嬉しいなと思ったのは。


「…んー…」

「ん?」

「…ううん。なんでもない」

「?」


考えても、まだ分かりそうにない。

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