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防衛省からのプレゼントを貰ったその日、校舎を出て生徒達は話していた。


「すげぇプレゼント貰ったな。あぁ言うのはテンション上がるな男子としては!!」

「女子のはね、私がデザイン案を出したのよ」

「ビッチ先生」

「シバサキは熱でぶっ倒れてて選ぶような余裕はなかったし、カラスマに掛かれば男女同じの服にしようとしてたから、「女子はもっと体のラインを出しなさい」って」


そこで浮かぶ3パターン。中に黒の長袖に半袖上着。下は長スボンが案1。次に中に黒の長袖に肩出し上着。下はショートパンツに黒の耐性抜群タイツが案2。問題なのは案3である。上はまるで水着。下は超ミニスカートに素足。怪我させてくれと言わんばかりである。



「まぁ、シバサキも私が選んだおかげで助かったって喜んでくれたから別に良いんだけど…」

「けど?」

「幾ら熱で倒れてたとはいえ、もう下がって体調も治ってたのに私にはプレゼントもくれなかったし…」

「え?」


プレゼント?何故であろう?と生徒達は首を傾げる。



「あのタコでさえ分かってたのに!カラスマは元々期待してないから良いけど、シバサキはくれると思ってたのに!もー!それに最近なんか…距離が遠いような気がするし…。はぁ、もう!」


プンプンと怒ってイリーナは足を進めた。



「柴崎先生なビッチ先生にプレゼントする理由あるか?;;」

「さぁ…;;」


そこで倉橋が何かを思い出したように声を上げた。彼女曰く、4日前の10/10はイリーナの誕生日だったらしい。



「俺らが課外授業やってる間に過ぎてたのか」

「柴崎先生がくれるのを期待したけど、その物は無く。プライドの高いビッチ先生からは言い出せず…か」

「相変わらず無器用な人だな」

「でも…私達が騒ぎ起こしたのにも一因あるかも」

「…よーし。また俺らが背中押してやろうかね」


沖縄での計画に続き、第2弾!不器用なあの人を喜ばせてやろうと生徒達は再び力を合わせ始めたのだった。

次の日、生徒達はまず柴崎とイリーナを別の場所へと引き離す事にした。腕を引っ張られ、いつも以上に強引に連れて行かれるイリーナを見て、烏間も柴崎もなんか何時もと違う、と思ったのだった。


その時、ブーっブーっと鳴る携帯。

画面を見れば「ミランダ・ハリベルト」の文字が。



…長官から?


「ごめん、少し席を外す」

「あぁ」


教員室を出て、少し離れた窓際まで行き電話に出る。

「はい、アドニスです」

『やぁ、久しぶりだね。元気にしてるか?』

「おかげさまで、こちらは大丈夫です。何かありましたか?」




電話をしている様子を、通り掛かった渚が見付ける。

「(柴崎先生だ…。電話かな?)」


邪魔をしては悪いし、ここだとずっといれば会話が聞こえる。早めに立ち去ろうとする。だが、その足は柴崎の言葉で止まってしまう。



「(え…)」


思わず振り向く。立ち止まり、無意識に聞き耳を立ててしまう。だが、慌ててまた前を向き、小走りで去っていく。



『…君がそういうなら、私は構わない。この件に関して、私がとやかくと口を挟むようなことではないと思っているからね』

「お心遣い、感謝します。ご心配には及びません」

『いや、いいんだ。余計な気を回したね。仕事中だっただろう。すまない』

「いえ、大丈夫です」

『そうか。では、また連絡する。体に気を付けて』

「はい。長官もお気をつけ下さい。では、失礼します」


切れた携帯を耳から離す。無意識に肩に力が入っていたのか、力を抜くとキシリ…と痛んだ。


「……4年か」


小さく呟き、携帯を直して柴崎は歩いた。


渚は走っていた。小走りから、いつの間にか変わっていた。





────行くつもりはありません。行ったとしても、掛ける言葉もありませんし、合わせる顔もありません。


────…彼女も嫌だと思います。自分の人生を狂わした男の顔を見るなんて。ましてや、




「(花を、手向けるなんて…。それって…どういう意味なんだろう…)」


手向けるってことは、亡くなった誰かに餞別を贈ったりすること。



「(彼女…って言ってた。…柴崎先生、恋人、居たのかな…)」


だとしたら、恋人は自分のせいで死んで、その恋人に会わせる顔なんてないから花も手向けない。ということになる。




「(この事、烏間先生は知ってるんだろうか…)」


そこまで考えて、でも長官と相手を呼んでいたから



「(…FBIの、人だ)」


なら、烏間先生はこの事を知らないかもしれない。それに…




────シェリーは敵で、私はスパイ。相対せない者同士はどちらかがこうなります。




「(シェリー…さん、)」



走っていた足が止まる。纏まらない考えはグルグルと頭の中を回った。

イリーナを喜ばせてあげようと奮起していたが、渚の頭にはどこかそれは上手くいかない気がしてならなかったのだった。

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