「なんで?…あ!そっか!」
「?…あぁ!なるほどー!」
岡野と倉橋も分かったのか、はいはい!といった感じで頷いている。
「なんで問題ないんだよ?」
「柴崎先生モテるから問題ありありじゃね?」
「そーそー。ないことないよな?」
「うん」
「で、なんで?」
「俺って生徒からそう見られてるの?」
「そうなんだろうな」
「よく考えても見なさいよ。柴崎先生を一番理解して、一番隣にいて、一番信頼してるのは誰?」
「で、柴崎先生もその人を一番理解してて、一番隣にいて、一番信頼してるの!」
「そんなの一人しかいないじゃない。だから、世の中の女の子がころっと行ってもその人がいるから勝てないのよ」
「……ああ!!」
「はいはい!」
「なるほどなぁ」
「そりゃ勝てないわ」
「勝ち目ないもんなぁ」
「「「でしょ?」」」
「「?」」
話題の本人は分からない。その隣に立つ烏間も分からない。分かっているのは生徒達だけだ。
「本人達は分かってないけどねぇ」
「鈍いのかな?」
「いや、どうだろうな」
「居過ぎて気付かないとか?」
「あぁ。慣れ過ぎてもう当たり前みたいな?」
「それが普通みたいな?」
「それだけ絆深いってことだよなぁ」
「あー、だな。当たり前になると、案外気付かないもんだもんな」
コソコソと話して、彼らは烏間と柴崎を見た。
「「「「E組名物だしね/な」」」」
「「は?」」
ニヤリと笑って言われる。あぁ、段々それがあいつに似てきたなと烏間と柴崎は複雑な心境になった。
「「「「(あ…)」」」」
生徒達は2人の後ろに忍び寄る何かに気付く。それに気付いた生徒達に「しー!」とジェスチャーをしている。多分、今世紀最大の気配消しを行っている。何故なら柴崎が気付かない。何故ならそれが超汗をかいている。なんならちょっと触手も震えている。それは何の震えか。これから何かしようとする不安と緊張の震えか。それとも気配を消してることへの震えか。
どちらにせよ、何かが目の前の2人にこれから降りかかることは目に見えている。生徒達はOKと苦笑いを浮かべた。それに気付いた烏間と柴崎。その苦笑いはどうにも目線が自分達より上である。後ろに何あるのかと振り向こうとした時、烏間が何かに思い切り横から押されて体が柴崎の方へと傾いた。しかも、傾いたのにまだ押され続けるので体勢を立て直せない。そして、柴崎も支えようと構えたが何かに引っ張られて後ろに倒れる。
「「「「あ…」」」」
「っ!?」
「っえ…っ!?」
ドサリッ
「「〜っ」」
「やりましたー!!!これぞ、床ドン!!」
押した犯人は殺せんせーだ。
「いや、床ドンっていうより…」
「床バタというか地バタというか…」
「てか、押し続けるに留まらず引っ張るとは…」
「どんだけしたかったんだよ、殺せんせー…」
「あれじゃない。自分ができないから」
「あぁ…。E組名物にさせるってわけね」
「いやでも、これは…」
「あぁ…。これは多分…」
「「「「(殺せんせー死んだな)」」」」
あ、死んでいいのか。だって俺ら私ら暗殺してんだもんね。と思い直す生徒達。そして、押された者達はというと、完全に倒れている。紅葉の絨毯の上に。引っ張られて倒れた柴崎の上に押されてさらに押され続けた烏間が。
「…っ、頭打った…っ」
「…っ悪い、柴崎。大丈夫か?」
「なんとか…」
体を起こして2人とも服に付いた汚れを落とす。
「いやぁ、見事な床ドン。私見れて最高の気持ちです」
「…へぇ、最高の気持ちね」
「…なら今すぐ最悪の気持ちに変えてやろう」
「にゅや?…え、あれ?床ドンしてされて嬉しくないんですか!?」
「あんなののどこかだ!」
「大体したのもさせたのもお前だろうが!」
「あれ、あれれ!?私の計画ではですね。倒れて起き上がって目があって…きゃー!…ていう感じだったのに!!」
妄想を膨らます殺せんせーに生徒は呆れる。
「殺せんせー漫画読み過ぎだわ」
「いや、恋愛もののドラマの見過ぎだ」
「それか小説ね」
「どれにしたって恋愛物だ」
「違いない」
「で、した相手のチョイスミスね」
「E組名物だけどさ」
「相手が悪かったわ」
「あ、ちょっ!待って待って!烏間先生!柴崎先生!」
「柴崎、」
「了解」
柴崎は殺せんせーが烏間のナイフを避けている間に後ろに回る。そして、後ろから腕を回し、服を掴む。膝を折ると足に力を入れる。あぁ、これは以前に見たことがある。だが、前より動きを移すのが大分早い。
「っオラァ!」
「にゃやぁぁぁぁ!!」
バックドロップだ。殺せんせーは見た目より軽い。なので、柴崎にかかれば、まぁ、朝飯前である。後ろさえ取れれば。殺せんせーの弱点・テンパるのが意外と早い。テッパッてる内にしてやったのだ。柴崎の手によってバックドロップをされた殺せんせーの下から出てきた柴崎は手を叩いている。
「「「「さ、流石のコンビネーションだ…」」」」
殺せんせーによって、リフレッシュを目的としたこの紅葉は、烏間と柴崎によって血祭りにあげられ幕を閉じた。自業自得である。この2人はそう甘くないのだ。
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